50. 婚約者宣言
◇◇◇◇
アステリア家にて。
王立魔法学園が休日の今日。
屋敷にはグラフィアス家の次男メラクが正装してやって来ていた。
(色々と……おかしい)
王女エリスが目覚め、彼は王女に求婚すべきであるのだが……今、目の前に座り、微笑んでいる。
「ステラ。約束通り、正式に求婚しに来たよ」
ステラは『はぁ』と大きく息を吐いた。その様子にメラクは怪訝な顔をした。
「何? ステラは僕からの求婚に不服なの?」
「そうですわね」
「……何で? そんなに即答しなくても」
「貴方ね……はぁ。貴方はエリス王女殿下に求婚すべきなのでは?」
メラクは『何だ、そんなこと?』と肩を竦めた。その様子に今度はステラが怪訝な顔をした。
「それなら、ちゃんと話を付けてきたよ?」
「はぁ?」
「やだなぁ。そんな顔しないでよ。ちゃんと、兄上に振ってきたって」
「ラサラスに?」
「うん。……まぁ、どちらにしてもグラフィアス家から婚約者が出ることはないよ」
「選ばれないって、わかっているの?」
「まぁね」
メラクは肩を上げ、飄々と言った。
「だから、求婚したとしても形だけさ」
「誰が選ばれるか、わかっているみたいね?」
ステラの質問に、メラクは面白くなさそうな顔をして、目を逸らした。
「わかってるけど。ステラには言わないよ?」
「何よ? それ?」
(エリス王女の婚約者と私に何の関係があるの?)
ステラは首を傾げる。メラクは気にもとめずその美麗な顔に満面の笑みを浮かべた。
「それよりも! 僕らのこと。ステラ、僕の婚約者になってよ」
「お断り致しますわ」
「なんで、そんなにハッキリ言うの?」
「メラクと婚約したくないからですわ」
そう答えると、メラクは一つ息を吐く。
「違うでしょ?」
「……え?」
「他に理由があるでしょ?」
「何を……言っているの?」
メラクはジッとステラの瞳を見つめた。ステラは視線を泳がせる。
――マズイ。
メラクは人の心を読むのが得意だ。このまま隠しきれるとは思えない。
だからといって、彼にすべてを打ち明けるわけにもいかない。どうするべきか。
迷う心を見透かしたように、メラクが話し出す。
「わかってるよ? ステラがステラじゃないことが関係しているんでしょ?」
(やっぱりか……そこに行き着くよね)
観念したように、目を閉じた。
(一度目は何とか誤魔化せたけど……って、あれは絶対、誤魔化せていなかったわ……)
あの時ははぐらかしたり、逃げられる状況だったけれど、今は違う。
何といっても、屋敷にいらしたお客様だ。彼を放り出して私室に逃げ戻るなど、出来るわけがない。
彼もそれをわかっていて、ここに来たのだから。本当に失敗した。
「詳しくは話しませんわよ。メラクの事、信用しておりませんもの」
メラクは目を伏せた。
「まぁ、そうだろうね。そう簡単に教えてもらえるとも思っていないよ。でも――」
メラクは真っ直ぐにステラの目を見つめた。
「ステラの信用を得るように動いていくから」
そう言い、にっこり微笑んだ。そして、『そういえば』と話を変える。
「例の御令嬢は、どうなったの?」
ドキリと胸が鳴る。
時を司る神クロノスがその存在を消した御令嬢。
この乙女ゲームの主人公アリサのことだ。
その存在を知っているのは王家と四大公爵家のみとなっている。
故に四大公爵家の一つ、グラフィアス家のメラクはその存在を知っている。しかも、彼に至っては、彼女の魅了魔法から身を護るためにアクイラと入れ替わっていたのだから、なおさら気になっているはずだ。
その後、神の力によってその存在を消されたのだから、余計何があったのか探りを入れたいというのもよくわかる。
「その件でしたら、当主様方が御存知なのでは?」
「教えてもらったけど。でもステラの口から直接、聞きたいんだよね」
(どこまで知っているのだろう?)
『呪い』の件は多分、アステリア家とプレアデス家のみの秘匿だろう。ヴェガ兄さまとザニア様が巧くやってくれたので、アリサの件と『伝説』の件のみ伝えられているはず。メラクは、その場にいた者の話を直接、聞きたいのだろう。そして、都合良く、今日、私に会えたから聞いてみたというところか。
「例の御令嬢は、神と共に在るべき場所に戻られたのですわ。どちらにしても、ラサラスやアクイラ、そして、貴方に影響を与える事はなくてよ」
「ふーん。そう。聞きたいのは、それだけじゃないんだけど」
不満げに視線を合わせてくる。
「ステラとシアンは、どういう関係なの?」
「……は?」
(何でここでシアンが出てくるの?)
「君たちの関係性だよ」
「……ただのクラスメイトで、幼馴染みよ」
「へぇ。幼馴染みねぇ」
「何よ?」
「幼馴染みってほど、仲良くなかったよね?」
(あぁ。確かに)
学園の三年になるまでは、全く話さなかったし。メラクの中で、私とシアンは無関係な間柄だ。
学園に一年生として入学したら、私たちが話をしているなんて、不自然に思ったのだろう。
「……昔はね」
「今は違うってことでしょ?」
「そうよ? だから、今は幼馴染みですわ」
「いいよ……そういうことにしといてあげるよ」
不服そうに言ったメラクに眉をしかめた。
「とにかく! 僕がステラの婚約者になるから」
メラクはその端正な顔の口角を上げた。
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