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悪役令息の秘密の嗜み~今日も密かに悪役令嬢を愛でています~  作者: 夕綾 るか
第2章

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49. 呪いの発動

 


「大丈夫か? ステラ」


 王女を見送った後のステラの顔が真っ青だった。


 ステラがエラトス殿下にエリス王女殿下のことを頼まれているのを見ていた。ステラがクラスを出ていってから暫くすると胸がざわめいた。


 ステラにかけられた()()()()()を感じた。


 感覚のままに駆け付けると、そこには案の定、胸を抑え苦しそうに顔を歪めるステラがいた。


 俺は何も考えずにステラに近づくと、自然と自分にかけられた呪いの浄化方法と同じ形をとった。

 後ろからステラを抱き締める。ステラの中の黒い血液が浄化されていくのを感じた。


(やはり相互性があるではないか)


 こんなに繋がりを感じるのだ。これで関係がないと言えるわけがない。


(ステラは何を考えている? 何故、自分でなくても良いと考えたのか?)


 ――こんなにも互いに必要としているのに。


 王女の後ろ姿を見送ると、ステラは顔をしかめ、小さく震えていた。


「ステラ」


 名前を呼ぶがそれはまったく聞こえていないようだった。ただまっすぐ前を向き、何か考えていた。


 そんなステラの顔を覗き込むと、ハッと、意識を取り戻した彼女が距離をとる。


「もうすぐ授業ね。戻りましょう」


 少し急ぎ気味にクラスまで戻った。ステラがとる距離に違和感を覚えた。


 ――どうしてそこまでして離れようとするのか?

 俺には彼女が自分から離れようとしているとしか思えなかった。



 ◇◇◇◇



 ――『悪役令嬢』ならぬ『悪役王女』。


 何てことだ。

 処刑フラグは消え去ったと思っていた。ここが、乙女ゲームの世界だということも。うっかり忘れかけていた。

 主人公(ヒロイン)の脅威から無事に逃れ、処刑の原因となる悪魔も去った。


 だから、安心していたのだ。例え未だに『呪い』が解けていなくても。それは急ぐ必要がなかったから。


 まさか、ここに来て王女エリスという新たな脅威が出てくるなんて。


 そして、初めての『呪い』の発動に動揺した。あの苦しみをシアンはいつも感じていたのか。

 これは早急に『呪い』を解いていかなければならないかもしれない。


 シアンは『呪い』について勘違いしている。

 レイラがかけた『呪い』は、レイラの呪い。ルーカスがかけた『呪い』は、ルーカスの呪いなのだ。

 そこに相互性なんて、ない。


 あの時、ルーカスが自分のかけた『呪い』について、私に言ったこと。


 彼がかけた『呪い』は()()()()()()()()()()()に、なのだ。だから、確かに(ステラ)の身体にはシアンにかけられた『呪い』の浄化機能があるのだろう。

 しかし、私の魂はステラの魂ではない。セイラの魂なのだ。身体と魂が揃っていない私ではシアンにかけられた『呪い』を解くことは出来ない。


 ルーカスとレイラ。

 二人とは互いに家柄の関係があり、さらに二人は私たちにそっくりだった。

 そこから、私たちの関係もあると考えられたのかもしれないが、実際には別々の人間だ。


 シアンはルーカスじゃないし、私はレイラじゃない。さらに言えば、ステラでもない。

 そもそも、何の関係もないのだ。


 ルーカスから聞いた、『呪い』の解除方法。

 それは――私がルーカスの子孫として()()()()()解除方法にシアンを導いていくこと。

 そして、私自身にかけられた『呪い』についても自分で解除しなければならない。


 ――本当に迷惑な御先祖様だ。


 星の花の声を聴いた時、気が付いた。

 『星花』の力を遣えるのは、どうにもならない時。

 どうにかなるものについては、どうにかするまで遣えない。要するには、(もが)き、足掻(あが)いて、それでもダメな時の、最後の手段なのだ。


 私たちにはそれをする必要がある。自分で考え、想い、感じ、時に苦しむ。

 すべて必要なことなのだ。


 だから、シアンについても同じだ。

 『伝説』とか『呪い』とかそういう感覚だけで私に固執することなく、自分自身で選んでいかなければならない。そして、その必要がある。


 何故なら、彼は――

 彼には、『愛する者の魂』が必要なのだから。






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