43. 悪魔の想い
◇◇◇◇
――確かに。
ステラを見た時、レイラと同じ顔に驚いた。ただその中の魂は別物だと、気がついていた。そして、特殊な魂を持っていることも。
永い年月、生き続けていると過去に出会ったことのある顔には、度々出会う。
シアンに会い、さらに嫌な予感はした。しかし、面白いと思ったことも事実だ。彼からレイラの呪いを感じ、願いはないかと聞いてみた。レイラの呪いによって、心が凍り、その感情が読めずにいたが。それもまた面白いと思った。
ただ――ステラの中にルーカスを感じなかった。確かに存在していなかったのだ。アリサに会った時もレイラを感じなかったように。
――何故だ?
時を司る神であるクロノスが関わっていることがわかった時、嫌な予感が的中したと気がついた。
アリサには闇を感じていた。気がつけば、ステラのしたことをアリサに伝えてしまっていた。無意識だった。迂闊だった。
――闇を纏っていたのがレイラの魂だったとは。
レイラが過去の話をする度に吐きそうなる。悪魔にも関わらず、レイラの魂に共鳴して、知らぬ間に呼び寄せられてしまうなど。あってはならない。
挙句の果てには『悪魔として落ちこぼれた』と、レイラに同情され、限界が近かった。
しかし、レイラには同情し、共鳴したがステラに対しては違ったように感じていた。
――正しくはステラの姿をしたセイラの魂に。
二人の男に睨まれた悪魔は大きくため息を吐く。その様子に『ふふっ』とアリサの姿をしたレイラが笑う。
『とにかく今はステラちゃんとルーカスの所へ行かないとね。日が落ちてしまう前に』
シアンとアリサは学園に早退届を出すと、神らと共に東の方角へと向かった。
◇◇◇◇
『ザニア』
ザニアの守護神、大地の女神レアが姿を現す。
『クロノスを見つけたわ』
「それが、どうかしたのか?」
『貴方が探しているステラも一緒にいるわ』
「え? ――どういうことだ?」
『私の夫婦神、大地の神クロノスの契約者がステラと一緒にいるのよ』
「何だって? それで……何処にいる?」
『東よ。そこにある丘にいるわ』
一刻も早く、ヴェガードに伝えなければ。
そう思い、足早にヴェガードの私室前まで来るとノックする。
しかし、誰も出てこない。
寝ているのだろうか?『開けるよ』と声をかけ、扉を開くとそこにヴェガードの姿はなかった。
「《土魔法》『痕跡』」
痕跡魔法を掛けると慌てて支度をして出ていく、ヴェガードの姿が映し出された。
『エオスも見つけたのね。アストライオスを』
レアが囁いた。
「なるほど。そういうことか」
ザニアも呟き、後を追う。
――『星花の伝説』か。
トゥレイス家にもまた残っていたのだ。あの痕跡が。プレアデス家のように書物としてではないが。
大地の神クロノスと大地の女神レア。その神々を守護神とした二人の悲恋の物語。
『悪魔女レイラ』。神の呪いによって、結ばれることのなかった二人。
王立魔法学園の最終学年の始まり。召喚の儀式。
そこで、僕に現れた守護神。『大地の女神レア』。
当時、宮廷中の話題になった。その時はまだ知らなかった。
まさかあの御伽噺の『悪魔女レイラ』が実在していて、彼女が悪魔と契約する前に彼女を守護していたのが『大地の女神レア』だったことなど。
さらには王家と四大公爵家のみに伝わる『伝説』に出てくる神の一人であることなど。
僕はまだ何も知らなかったのだ。
『これで、すべてが揃ったわ』
レアがそう言って、大きく深呼吸した。
『長かった。とても。やっと終われるわ』
ザニアはゆっくりと目を伏せた。




