42. 呪いの言葉
◇◇◇◇
私の目の前にはニコニコ笑うシアンの顔がある。――正確にはシアンの顔に似たルーカスの顔、だ。
そして、何とも不穏なことを口にしたのだがそうとは思えないほどの笑顔だ。
彼は確かに言った。
『呪いをかけた』――と。
(……何ですと?)
聞き間違いかと思い、そちらに顔を向けても彼は微笑んだまま。そして、言った。
『呪いの内容はね――』
(え? 何ですか? それ。それは許されるの? ……っていうか、その前にそれは呪いなの? 神様もそうだけど、御先祖様も……ちょっとさ、子孫に負担かけすぎじゃない? ――おい。なんか、腹が立ってきたよ?)
『ええー。セイラ、凄く怒っていない?』
「ええ、怒っていますとも。何故、子孫にそんなに負担を強いるのです?」
『だって……思いを伝え合ったら、すぐにレイラは病気になってしまったし……』
ルーカスは悲しげに俯いて、上目遣いでセイラを見た。それをしているのがシアンに似た顔なので、違和感ありまくりだ。
「だからって、何ですか! その呪いの言葉は!」
『だって! レイラは僕よりも先に悪魔にしたんだよ! ……許せない!!』
『はぁ』とセイラは大きなため息を吐いた。まさか先祖に対してこんなことを思う日が来るとは。
まさかシアンの顔をした人物がこんなことを言うとは。
(あれ? ちょっと、待って。――おかしい)
確かゲームの物語では『神話』は過去の出来事であり、『永遠に咲く星花』はすでにその木に存在していたはず。
その木の管理者として、時を司る神クロノスが、『星花』を護っていたはずだ。
だって、その『星花』を使って攻略対象を救うのだから。
(その『星花』が、まだ咲いていない? そもそも呪いって、何? ……レイラって、誰?)
そんなの、ゲームの物語には一切出てこない。
シアンの先祖がレイラで、私の先祖がルーカスで……彼らは恋人同士だった。でも神の呪いで結ばれずに死んでしまった。そして、お互いにお互いを呪い合って、魂になってでも来世で結ばれたかったってこと?
違うな……それが神の呪いだったのかな? その呪いを解くには異世界の魂が必要だったから、時を司る神クロノスが私と契約して、この世界に連れてきたってこと?
それでシアンと私に神の呪いの魂が入り込んで、さらにシアンにはレイラの呪いがかかっていて……って、シアン、あまりにも不憫じゃない?
異世界の私の魂とルーカスの魂、そして、レイラの魂が揃えば呪いが解けて、星の花も咲くってことなのかな?
それでハッピーエンド? 私の処刑フラグはどうなったのかな? この前、悪魔ベリアルにお願いしちゃったしなぁ……あれって、契約になるの? 結局、悪魔の言ってた『ご主人様』って、誰だったんだろう?
『……何か、たくさん考えているね』
呟かれた言葉に、ハッと意識を取り戻す。
木に寄り掛かり、腕を組んで、こちらを見ているルーカスと視線を合わせる。
『君がしなければならないことは一つだけだよ』
ルーカスは私を見つめたまま言った。
『シアンの呪いを解くことだけさ』
私は口を結び、眉間に皺を寄せた。
◇◇◇◇
『ヴェガード、起きて』
「んっ……んん……」
『見つけたわ。アストライオスを』
「何だって!?」
ヴェガードはガバッと勢いよく起き上がる。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
暁の神エオスは困ったように笑った。
「ステラは? 無事なのか?」
『ええ。大丈夫よ』
その言葉にヴェガードはホッと胸を撫で下ろす。
「どこにいる?」
『東にある丘よ』
「案内出来るか?」
『出来るわよ』
「すぐに出発する」
ヴェガードは身支度を整えると私室を出た。少し眠ったので身体が軽くなっている。
馬車では遅い。日が暮れる前には着きたい。
(ステラ。すぐに行くから)
逸る気持ちを抑えて、馬を走らせた。
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