40. 隠密と捜索
◇◇◇◇
ステラの消息が不明になったことでアステリア家では秘密裏に捜索が行われていた。
四大公爵家の内のトゥレイス家は公になってはいないが王家の隠密を担っており、アステリア家にも調査として、嫡男であるザニアが来ていた。
トゥレイス家の表の顔は、代々続く宮廷魔術師の家柄となっている。
「あまり公には出来なくて……悪いな、ザニア」
「構わないよ。幼馴染みじゃないか。……僕だってステラが心配なんだよ?」
「ありがとう。ザニア」
「それよりも、ヴェガ。しっかり食べて、しっかり寝た方がいい。お前、顔色が悪いぞ。それじゃあ、ステラが心配する」
「……そうだな。少し休むよ。調査を頼む」
「ああ」
ザニアはヴェガードの肩にポンと手を置くと部屋へと誘導した。
私室へと戻ったヴェガードは、そのままゴロリとベッドに横になる。天井に描かれた規則的な模様を眺めながら、考えを巡らせていた。
王家の隠密であるトゥレイス家はどこまで知っているのだろう。
『悪魔女レイラ』について。『神話』について。
プレアデス家は自分達の先祖『レイラ』の存在を抹消していた。
アステリア家もその恋人『レイラ』を殺した先祖『ルーカス』の存在を隠していた。
まるで二人とも存在しなかったかのように。
ただ『悪魔女レイラ』の存在は語られていたし、王城にだけだが『星花』についての文献も隠すことなく存在した。
(このまま、王家に頼って良いものか……)
考えを巡らせていたヴェガードは、いつの間にか深い眠りに落ちていた。
◇◇◇◇
数刻前。王城にて。
「何だって!? ステラが行方不明だと?」
朝、学園に行く前に突然、入った報告にエラトスは驚愕した。ステラとは先日、中庭で話をしたばかりだというのに。
(一体……何があったのだ?)
アステリア家から、“秘密裏に捜索隊を派遣して欲しい”と要請があった。王家としても四大公爵家とは深い繋がりがあり、特にアステリア家に至っては、先日の一方的な婚約解消の件もあり、無下に出来るはずもない。
それどころか、エラトスにとって今のステラは、婚約者だった頃よりも大切な存在となっていた。
隠密であり、四大公爵家の一つでもあり、更にはステラの兄ヴェガードの幼馴染みでもあるザニアに指揮を任せることにした。
素早く指示を出すと、一人になったタイミングでテミスを呼び出す。
「ステラの居場所がわかるか?」
テミスは残念そうに首を振った。
『ごめんなさい。また、あの力が働いているみたいだわ。守護神、皆、アストライオスを見つけられないのよ……まるで、消えちゃったみたいに』
テミスが目を伏せた。
「ステラ……」
昨日、学園に来ていなかった。心配はしていたが今は、シアンがいる。そう思い、特に気にしていなかった。
まさか、こんな状況になっていようとは。
(何が、起きている?)
ステラの無事を祈ることしか出来ない今の自分が何とも悔しい。
エラトスは、ぐっと拳を握り締めた。
◇◇◇◇
ザニアはヴェガードを私室まで送ると、捜索隊と共に調査に出た。
「《土魔法》『痕跡』」
痕跡魔法を掛けるが何も見つからない。人がいるからには必ず何らかの痕跡は見つかるはずなのだが今回は何もないのだ。
ザニアは首を捻る。
(何か――おかしい)
こんなこと、あり得ない。存在自体が失くなったかのようだ。
ヴェガードには言えなかった。
――『任せておけ』『安心しろ』『必ず見つかる』
あまりにも無責任だと思ったからだ。今回、確証が全くない。だから、言えなかった。
これがいつもの状況なら言えたのに。今だから、言ってあげたかったのに。
親友の力になれないことに、肩を落とした。




