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4. ゲーム開始

 


 私が『私』に気付いたのは13歳になった頃、王城で開かれたお茶会でのことだった。


 ――この場面、見たことある。


 初めて来た場所なのに、何故かそう思った。


 ()()()見た事があったのだ。()()()()()で。


 《星の花の神話を聴かせて》


 そのゲームの名前。いわゆる王道の乙女ゲームで攻略対象と主人公(ヒロイン)が恋に落ちる。


 メインの攻略対象は第二王子エラトス殿下。その婚約者である悪役令嬢ステラ・アステリア……そして、もう一人。公爵令嬢メリッサ・トゥレイス。――三つ巴になる。


 ややこしいのは勘弁してほしいので違う人を攻略したいと思っている。どちらにしても、学園に編入するまでまだ時間がある。攻略する相手を決めるのは出会いのイベントが起こってからにしたい。


 私は主人公(ヒロイン)なのだから。どのルートを辿っても、結局はハッピーエンドだ。たとえ、バッドエンドになったとしても攻略対象と結ばれないだけで、私に何か災いが降りかかることはない。――あの悲惨な悪役令嬢でなくて良かった。心からそう思う。




 あの茶会で第二王子の婚約者が発表された。

 あの悪役令嬢ステラ・アステリアであると。


 ツンとした態度とエラトス殿下に対しても変わらない表情で……どちらかというと無表情でその発表を受け止めていた。


 周囲が悲鳴に近い落胆の声を上げるなか、一人、歓喜するわけでも、苦笑いするわけでもなく。凛と背筋を伸ばし、まるでそれが当たり前だとでもいうように静かに前へと歩みを進め、優雅に礼をすると第二王子の隣に立つ。


 まさに――あれこそ“悪役令嬢”そのもの。




 あれから、五年。

 ついに学園へ編入の機会がやってきた。


 平民だった私はいつもの様に教会で祈りを捧げていた。すると突然、光の精霊が現れた。そして、私はその精霊に加護を受け、光魔法を手に入れた。


 それを聞きつけたベルクルックス男爵が私を養女にしたいと申し出たのだ。


 それからは、あっという間だった。


 王城で給仕の仕事に就いていた父の手伝いをしていたため、ベルクルックス男爵のお顔は知っていたし、ある程度なら礼儀作法もわかる。


 あの茶会の時も、そうだった。


 私はあの時、初めて父の手伝いに来ていた。給仕の格好をし、銀色の髪を後ろに一つで束ね、()()()()()()をして。


 私には縁の無い世界だと思っていた矢先、突然、フラッシュバックのように前世の記憶が甦った。


 私は、アリサ。『アリサ・ベルクルックス』。


 このゲームの、主人公(名称変更可能)だ!


 学園に編入した今、物語が動き出す。私が対峙するのはあの完璧なる悪役令嬢。

 

 もう後には戻れない。




 さぁ!ゲーム開始といきましょう。




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