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悪役令息の秘密の嗜み~今日も密かに悪役令嬢を愛でています~  作者: 夕綾 るか
第1章

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39. 悪魔と魔女

 


『……っ、……ルーカス……』


 泣きながら何度も何度も、同じ名前を繰り返す。


 そして、アリサが地面につけていた頭をゆっくりと上げた。涙を拭い、ベリアルに視線を向ける。


『久しぶりね、ベリアル』

『……お前……まさか。レイラ、なのか?』

『「は?」』


 ベリアルのあり得ない一言に、シアンとクロノスは同時に声を上げた。


『ふふ。貴方が魂を浄化してくれたのね?』

『……ふん。何故、私がお前の魂を浄化せねばならんのだ。いい加減なことを言うな』

『相変わらず、素直じゃないわね』


 そのやり取りを残された二人は呆然と見ていた。『レイラ』と呼ばれたアリサはシアンを見つめた。


『貴方は……ルーカスにそっくりだわ。だから(アリサ)は貴方に拘ってしまったのね。それに(レイラ)のせいで……子孫である貴方に呪いがかけられてしまっているのよね。本当にごめんなさい』


 彼女は一度、目を伏せると今度はクロノスに視線を合わせた。


『私もルーカスの所へ連れていってくれるかしら』

『もちろんだよ。――でも何故、呪いと魂が分かれているの? ボクは、てっきり……彼にキミの魂があると思っていたよ?』

『そうね……話すと長いのだけれど』


 彼女はゆっくりと話し始めた。


『ベリアルはね、孤独だった。私もある意味、孤独だった。病気になってから、気が付いた。戦うのはいつも一人。死期が近付いて、わかったの。死ぬ時も一人なのだと。だから……私は、孤独だった』


 彼女は俯くと、ベリアルを見つめた。


『死期が近付いて来たのがわかったのは、私の側にベリアルが来たからよ』

「召喚したんじゃなかったのか?」

『ええ。多分、私の魂に共鳴した』


 悪魔ベリアルは黙って、彼女を見ていた。


『そんな時、ルーカスが私と同じ病を患った。私は彼に私のようになって欲しくなかった。彼は、彼のまま、そのままの心をずっと持っていて欲しかったの。ただの……私の我儘ね』


 彼女は苦しげに笑うと、胸元を握り締めた。


『だからベリアルにお願いした。彼を――ルーカスを助けて欲しいと』


 悪魔ベリアルは静かに目を伏せた。


『私にはベリアルの孤独な心がよくわかっていた。だから、契約の代償として、私の心を貴方に捧げると言ったの。私の心を取り込んだベリアルは苦しんだわ。悪魔としては落ちこぼれてしまった』


 悪魔ベリアルは眉をピクリと動かす。そんなベリアルを見た彼女は申し訳なさそうな顔をして、肩を竦めた。


『私の身体には、悪魔の心が入り込んだ。そして、契約によって、私の身体は魔女になった。それからは……きっと知っているわね? 「稀代の悪魔女」と、そう呼ばれるようになった。愛するルーカスに私を殺させてしまうほどに』


 レイラの身体が死んだ後、レイラの魂もベリアルに捧げた。そして、レイラの呪いだけがプレアデス家に残ってしまった。


 レイラの心と魂がベリアルの中で、年月をかけ、完全に融合した時、レイラの魂がベリアルから弾き出された。そして、異世界から転生するアリサの魂に入り込んでしまった。それを追いかけるように、ルーカスの魂がアステリア家に戻った。レイラの魂が転生され、ルーカスの魂も戻ったことでシアンがレイラの呪いにかかってしまったのだ。


 アリサの魂に入り込んだレイラの魂は浄化される前の『悪魔女レイラ』だった。そして、ルーカスの顔をしたシアンに心惹かれてしまった。

 ルーカスの魂が入り込んだステラを貶めるほど。


『ベリアル。貴方が私の魂を浄化してくれていなければ、また同じ過ちを繰り返すところだった。本当にありがとう』

『お前のためではない』

『あら? 今の貴方のお気に入りは、ステラちゃんなの?』

『『「は?」』』


 三人の男は一斉に、頬に手を当て、困ったように微笑むアリサの姿をしたレイラに視線を向けた。

 彼女は首を傾けながら、呟いた。


『それとも、セイラちゃんかしら?』


 三人の男は目を大きく見開く。そして、二人の男は悪魔に視線を集中させた。

 美しい悪魔の顔は驚きに満ちていく。


『……何を、言っている』

『違ったの? 貴方の話し方から彼女のことをお気に入りなのが伝わってきたのだけれど』


 彼女は『ふふっ』と笑った。それを聞いたシアンは眉間に皺を寄せた。


『ベリアル。ボクの契約者にこれ以上、近づかないでよね!』

『クロノスもシアンもヤキモチ妬いちゃダメよ?』

『レイラ。いい加減にしろ』


 悪魔ベリアルが頭に手を当てると彼女は肩を竦めて言った。


『だって。アリサの魂が闇を纏っていることに気がついて、それを浄化するために()()()残酷なことを言って、ステラちゃんがアリサを救おうとしたことを()()()()話したでしょう?』


 彼らは目を丸くした。悪魔が残酷なことを言うのは当たり前だとしても、自分から誰か他の者のことを良く言うことなど、あり得ない。


 ――しかし、確かに先ほど悪魔ベリアルはアリサに言ったのだ。


『あの娘が、お前を救った』――と。


 二人の男は悪魔をじとりと睨む。悪魔はその美麗な顔をひきつらせた。






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