27. 魅了の効果
――何だ? あれ?
ベルクルックス男爵令嬢がエラトス殿下と離れていくと、シアンの肩から兄たちの手が引いた。
「うっわぁ……アレはマズイな……」
「……だな。さすがにシアンがいなかったら、かなりマズイ状態だったな」
兄ラサラスとザニアは口々に言った。
「悪かったな。シアン」
「いや、別に構わない」
兄に背中をトンと軽く叩かれた。
「それよりヴェガードとアインは大丈夫なのか?」
俺の問いかけに『そういえば』と兄たち二人は、ヴェガードとアインを見た。二人は、未だに彼女に視線を送っている。すでに彼女の魅了魔法にかかってしまっているようだ。
はぁと一つ息をつくと二人の肩にポンと手を置いた。すると二人は、ハッとして顔を上げ、あたりを見回すように視線を動かした。
「あ……もしかして。やらかしてた?」
アインが口を開くと、呆れたようにアトラスが頷いた。
「あんなに言ってあっただろう。……舐めすぎだ」
「アインのことを言えないな。本当にすまない」
「いや……」
ヴェガードがアトラスの言葉に苦笑いして謝るとアトラスはバツが悪そうに頭を掻いた。
「シアンだろう? ありがとう。助かった」
「構わない」
「それにしても……ステラに敵意剥き出しだな」
確かに、そうだ。
ある事情で、魅了魔法が効かない俺には、彼女がステラに向ける悪意を明確に感じられた。
魅了魔法にかかっていてもステラのことが大切なヴェガードに、わかったくらいだ。彼女の敵意は、かなりのものである。
『光というより闇――』
最初にステラが彼女に感じたものが真実味を帯びてきている。チラリと遠くのステラに目をやった。
「……え?」
思わず、口に出してしまった。今までいたはずのステラの姿がなかったからだ。
急いで最後に見た場所に移動する。しかし、どこにもいない。周辺を見回し、探すが見当たらない。
「ステラ……」
(何か、あったのだろうか?)
庭園にはいないようだった。王城の中に入る。
化粧室かと思ったのだが、近くの者に聞いてみても見ていないという。
(まさか、彼女と何かあったのか?)
また庭園に戻り、彼女の位置を確かめる。
彼女は、まったく移動しておらず、エラトス殿下とラサラス、メラクと一緒にいた。変わらず、楽しそうに談笑している。
あれだけの人数に囲まれて、ステラに何か出来るとは思えない。
それならば、ステラは何処に行ったというのか。
(――ステラ、どこにいる?)
何故か、とても嫌な予感がして、必死でステラを探していた。




