23. 王子の想い
ステラと婚約解消した。
そんなに仲が良かったわけでもないが、それなりに自分の心に衝撃があった。
次の日の学園でステラの様子が心配になったが、杞憂に終わった。むしろ清々として、今まで以上に魅力的に見えたくらいだ。
(私との婚約解消が、そんなに嬉しかったのか)
何だか切なくなる。そんな切なさも方々から聞こえてくる噂に驚き、一瞬で消え失せた。
(アリサ嬢との婚約の為に婚約解消だと? ……そんな訳あるか!)
確かに、エスコートはした。
アステリア家は出席しない予定だったからというのもあったが、三年から特別に編入した生徒を紹介する役目を担っていたからだ。彼女と同じ学年でなければ、第一王子の兄上でも良かったのだ。
(噂とは怖いものだな。否定すら出来ないなんて)
人知れず、ため息を吐いた。
「これでステラは死なずに済むのか?」
テミスに問いかけた。ふわりと気配を感じる。
『まだね……』
「どうしたら、助けられる?」
『そうね……この先はステラちゃん自身が選んでいく道だから……貴方に出来ることはないわ』
「そうか」
ステラが最善の道を選んでくれるとよいのだが。
『それより……アフロディーテが困ったことになっているの』
「アフロディーテ? アリサ嬢の守護神か?」
『ええ、そうよ。前に神にもわからない力があるといったのを覚えている?』
「もちろん」
『それでね……アフロディーテは、どうやらその力によって召喚させられちゃったみたいなの』
「はっ? それは、どういうことだ?」
『本来、あのアリサって子には、アフロディーテを呼ぶことは出来なかったのよ』
「……全然、理解出来ないのだが」
『アフロディーテは、あの子と話すことが出来ずにいるわ』
「姿を現すことが出来ないという意味か?」
『ええ、そうね。声も届かないみたい』
「何故、そうなっているのか、わかるのか?」
『実は……アフロディーテの話だと、あの子もステラちゃんと同じで、違う魂が入ってるみたいなの』
「何だって?」
『アフロディーテはあの子の身体に守護を与えていて、魂には別の守護神がついているそうよ』
「え?」
『それでアフロディーテとは話せないみたい』
(何なんだ、それは……)
ステラといい、アリサ嬢といい、何故、そのような通常では考えられない事態が起きているのか。
それはステラの死の未来と関係があるのか?
「アフロディーテはもう一人の守護神が誰なのか、わかっているのか?」
テミスは首を振った。
『あの子自身もわかっていないみたい』
そこまで話すと、テミスは何かに気が付き、ハッと顔を上げた。
『私が言えるのは、ここまでだわ』
そして、ふわっと姿を隠すようにいなくなった。
ステラとアリサ嬢。
彼女たちに一体、何が起きているというのか。
テミスが最後に見せた不穏な空気に言い様のない不安が込み上げていた。




