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悪役令息の秘密の嗜み~今日も密かに悪役令嬢を愛でています~  作者: 夕綾 るか
第1章

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21. 物語の内容

 


「やぁ、シアン。いらっしゃい」


 アステリア家の屋敷につくと、いつもと変わらず微笑むヴェガードが出迎えた。


「先日の夜会以来だね。まさか、シアンも来るとは思わなかったけれど」

「……」

「ステラはだいぶ気に入られているみたいだね」


 ヴェガードの言葉に、まっすぐ視線を合わせた。

 じっと、こちらを見る彼の瞳の奥は、まるで何かを見定めているようだった。


「ごめんね。婚約解消が発表されてからステラにはいろんなのが引っ付いてくるから。何か癖になってしまって」


 そういって、珍しく眉尻を下げたヴェガードの顔は紛れもなく、妹を心配する兄のものだった。

 ステラが……セイラが心配するようなことは、きっとないのだろう。そう思った。


「とはいえ、シアンのことは()()、信頼しているんだよ? 何といっても、()()()()()()を共有しているのだから」


 その言葉に、ドクンと胸が高鳴った。


 ――ステラの秘密の共有。


 あの時、感じた言い様のない感情。

 それをヴェガードに()()()()口に出して言われたのだ。ヴェガードは恐らく、俺の感情のブレを見ている。彼は絶対に敵に回したくない人間だ。


「それで。ステラは?」

「ああ。先にサロンで待ってるよ。行こうか」


 ヴェガードとサロンまで歩く。不意に彼が低い声を出した。


「ステラは……シアンに何か言っていたか?」

「え?」


 思わず、足を止めた。

 先を歩くヴェガードは、俺が足を止めたのに気が付き、振り返る。


「夜会以降、ステラの様子がおかしい。……特に、僕に対する態度が」

「ああ……」


 ――あのこと、か。


 一瞬で理解したが、どう答えて良いかわからずに黙っていると、彼は大きく息をついた。


「その様子だと、知っているんだね。その原因」

「……まぁ」

「……でも言えないってことか。まぁいいよ。ステラが一人で抱え込んでいるのではないなら」


 ヴェガードは俺の肩にポンと手を置くと、


「ステラが話したい時は、相手になってあげてよ。僕には言えないこともあるだろうし」


 それだけいうと、サロンへ歩き出した。俺もその後に続いた。



 ◇◇◇◇



 《星の花の神話を聴かせて》


 人気の乙女ゲームの名前。

 攻略対象が多く、複雑に関係し合っていて、攻略が難しいゲームだった。人気だったため、続編の話も上がっていたくらいだ。その後、本当に続編が出たのかどうかは知らない。多分、私はその前に死んだのだ。


 召喚の儀式があった、あの日。取り戻した前世の記憶。


 ここがあの人気乙女ゲームの世界と同じだということ。そして、悪役令嬢の最期は、物語の主人公がどのルートを選んでもすべて同じということ。


 ステラ・アステリアの最期は全ルート『処刑』。

 ステラが生きて終わるエンドは――ない。


 でも兄には言えなかった。『処刑』の最期を伝えれば、何故、処刑になるのかを話さなければならないから。だから兄に伝えたのは死んだ後の私の()()


 第二王子との婚約破棄はステラが処刑になる原因が理由なのだけど。女神テミスの予言により、何故か先に婚約が解消された。それでも、処刑の原因はまだ残っている。


 ルートによって処刑の方法は変わるが、その理由はたった一つだけだった。だから、それさえしなければ処刑は免れるはず。


 ただ、それをしないようにするには、別の方法を考えなくてはいけない。それを回避するためには、本来、主人公(ヒロイン)が見つけるはずのものを私が彼女よりも先に見つける必要がある。それを使って攻略対象を救うのだ。


 これから起こる問題が誰の身に起きるのか。それはきっと、主人公(アリサ)が誰を攻略するかによる。


 彼女が誰かを選ぶ前に、私が見つけなければ。


 まずはこの国にある神話について調べよう。宮廷法官の兄なら何か知っているはず。


 けれど。兄との関係に気まずさを感じてしまった今、正直、この話を二人きりでするのには躊躇いがあった。出来ることなら兄と二人きりは避けたい。

 そう思っていたところに、シアンが同席を求めてきた。有難い誘いに、私は頷いた。



 ◇◇◇◇



「この国の神話?」


 サロンに来て、侍女を下げ、三人になるとステラが『この国に神話はないか』と聞いてきた。

 俺もヴェガードも首を傾げた。


「いや……聞いたことがないな。シアンはどう?」

「……ない」

「そう……」


 明らかに落ち込んだステラにヴェガードが聞く。


「神話が何か関係しているの?」

「ええ。私が話した創作物の題名が《星の花の神話を聴かせて》というの」

「星の花……」


 ――星の花……どこかで聞いたことがある。


 少し考えていると、ヴェガードが口を開いた。


「宮廷でも調べよう。王城の図書館にも資料があるか、調べてみるよ」

「ありがとう、兄さま」

「可愛い妹のためだからね。御安い御用さ」


 にっこり笑いながら、いつものようにヴェガードがステラの頭を撫でようと手を伸ばす――が、触れる直前でステラが避けた。


 ヴェガードの手が空中で止まる。

 ヴェガードも、俺も、そして、その手を避けてしまったステラ本人でさえも、驚き、固まった。


 張り詰めた空気が部屋に漂う。


「……どうしたの? ステラ」


 空中で止まった手を戻し、ステラの顔を心配そうに覗き込んだヴェガードが優しく語りかける。


「……ごめんなさい。兄さま」

「いいよ。何かあるなら、言って欲しいけど」

「……」


 ステラは黙ってしまった。

 まさか自分の兄を恋愛対象として見てしまいそうなどと本人を目の前にして言えるはずもない。

 理由を知っている俺からすれば、仕方のない行動かと思うが、理由を知らないヴェガードからすれば急な態度の変化に戸惑うのも無理はないと思う。


 ヴェガードは理由を聞くのを諦め、切り替えた。


「じゃあ、それらについて調べてみるよ」


 そして、そっと席を立つ。


「今日は少し仕事を持ち帰ってきたんだ。終わらせてくるよ。シアンは、ゆっくりしていってね」


 ヴェガードはサロンを出ていった。ステラは落ち込んだように俯いたままだった。





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