18. 計略の企て
ステラは、やはり話していない。――最も重要な部分を。
ステラから聞いた話によると主人公が、シアン、アトラス、アインを選ぶと溺死。ラサラス、メラクを選ぶと焼死。エラトス殿下、ザニア、僕を選ぶと絞殺。
――誰が何のためにステラを殺すのか?
ステラは話さなかった。どうしても言えないと。
ステラを説得する方法が見つからない。どうにかしてステラからその重要な部分の話を聞き出さなければ。
――いや、待てよ。
ステラじゃなくても、よいのではないか? もう一人、物語を知っている人物がいるではないか。
――都合がいい。
幸い、僕は彼女の攻略対象の一人ではないか。
ならば、こちらから彼女へ接触を図ればいい。
(ステラを……セイラを助けるためなら、何だってしてやる)
彼女に近づくための計画を立て始めた。
◇◇◇◇
「これは?」
「王城での夜会の招待状だよ」
週末、王城での夜会に参加することになった。
「出なくてもいいかなって思っていたのだけれど。まぁ、事情が変わってね」
にっこりと笑う兄に、不穏な空気を感じた。
「兄さま? 何か、企んでいますわね?」
「さぁ? どうだろう?」
「……」
ジロリと兄を見るがニコニコ笑うだけで流されてしまった。こうなると絶対に教えてくれない。
……仕方がない。
私も兄には伝えられないことがあるのだから。
下手に追及して、足をすくわれないようにしないとならない。
「急に決めたから当日のエスコートは僕がするよ。ステラは安心して参加すればいい」
「……わかりましたわ」
いつもより強引な誘いに、やはり何かあるとしか思えなかった。
◇◇◇◇
「週末の夜会に参加するのか?」
学園でシアンに聞かれた。
「ええ、そうなの。元々、参加しない予定だったのだけれど、ヴェガ兄さまが急に参加を決めて……」
「俺も行こう」
「えっ?」
「俺も行く」
「はぁ?」
「ヴェガードが行くのなら、何かあるのだろう?」
「ああ……やっぱり、そう思うわよね。まぁ……私も、そう思うわ。兄さまは、はぐらかしたけれど」
ふぅと肩をすくめた。
「エスコートは?」
「え?」
「ステラのエスコートは誰がする?」
「急だったから……と、兄さまが」
「俺がする」
「え? いや、それはさすがに駄目でしょう?」
「何故?」
「だって……私には婚約者がおりますもの」
「……そうか。そうだったな。すまない」
普段、無表情なシアンが一瞬、しゅんとしたように見えて驚く。思わず、ふっと笑ってしまった。
「何だ?」
首を傾げるシアンに言った。
「シアンって、何だか……時々、抜けてますわね」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味ですわよ?」
クスクスと笑う私に、未だに首を傾げるシアン。
そんな私たちをじっと見つめる視線に気が付かずにいた。
その日、アステリア家の屋敷に王家からの使者が来ていた。彼が伝えた言葉に息を呑む。
ステラの知る物語の展開とは違いすぎる出来事に、ただ驚愕するしかなかった。
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