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144.伝説の守護

 


「ねぇ、あの話。本当に信じるの?」


 時は、少し遡る。メラクが何かを考え込んでいるヴェガードに向かい、疑問を吐き出した。


「まぁ、おおよそはね」

「……かなり、めちゃくちゃな話だったけど」


 怪訝な顔をしたメラクに、ふっと表情を崩す。


「ステラから話を聞いただろう?」

「まぁ、そうだけどさ……」


 レサトとベイドの聴取を終えた二人は王女フレアが間違いなく、ステラやアリサと同じ世界から転生した者であると判断せざるを得なかった。


 彼らの話はアリサが残したノートに書かれたものとほぼ一致していたからだ。あの時はまだその場にいなかったメラクは内容を知らない。一概には信じられないというのも理解できる。


「じゃあ、あの王女様はステラに悪魔を召喚させてシアンにステラを処刑させようとしてたわけ?」

「そうなるね」

「はぁ? ホント、頭悪いんじゃないの?」

「不敬だよ、メラク」


 肩をすくめたメラクは『別にいいじゃん、本人、もうこの国にいないんだし』と、悪びれもせず言い放つ。ヴェガードは困ったように息をついた。


 ただ、王女が魔王と化したシアンを攻略対象として狙っていること、そして、その続編を始めるためにステラの処刑が必要だと考えていることを知った。


(ますます許せなくなったね)


 今のシアンがステラを処刑するとは到底、思えないが、それを謀っていたとなると、腹の底にどす黒いものが上がる。沸々と止め処なく湧くその黒い感情を一切出さずに、高額請求(報復)の内容を変更する。


(さて、アンドロスの御仁はどちらをお好みか)


 ふむ、と考え込んでいると突然、部屋に眩い光が放たれる。ギュッと瞑った目を開くと、そこには深くフードを被ったハデスとアリサの姿があった。


「アリサ嬢……ご無事でしたか」


 ヴェガードはホッと肩を下ろす。


「ええ、蘇りましたわ」


 ふふっと笑うアリサにハデスはジトリとした視線を向ける。それに気がついた彼女は口を横に引きつけ結んだ。突然、転移してきた二人に目を丸くしながら、メラクも安堵の息をついた。


「蘇ったってことは、やっぱりヴェガードが予想した通りアフロディーテの守護で?」

「あ、いえ……その……」


 アリサは気まずそうに俯いた。

 その表情に察したヴェガードは視線をハデスに移すと、ハデスは観念したように話し出した。


「ベリアルだ」


 メラクが大きく目を見開く。


「まさか……悪魔ベリアル?」


 否定しない三人に向かい、畳み掛けるように質問を投げる。


「何でアリサ嬢が悪魔に助けられるの? 悪魔には何のメリットもないでしょ? ……もしかして、契約してるの?」

「落ち着け、メラク」

「でもっ……」


 アリサは、ふぅと鼻から息を漏らし、ポツリと話し始めた。


「確かに鼓動を止めたのはアフロディーテの守護によるものです。ただその守護はアフロディーテによる最終手段でした」

「最終手段?」

「ええ。守護魔法が発動すれば、その身は鼓動を止める――()()()()()()()となります」


 人差し指を立て、真剣な表情を向ける。


「つまり、アフロディーテの守護はそこで切れる、ということです」

「なるほど――それで『伝説』なのか」


 ヴェガードは納得した。アリサのように、確実に蘇らせる手段がなければ、守護を受けていた者は、永遠に死んだ状態のままなのだ。


「そこでベリアルの力が必要になりました。幸い、“彼女”の契約が残っていましたから」


 ヴェガードの肩がピクリと上がる。


「――“幸い”? 君にとっては、ね」


 アリサは目を見開いた。一瞬にして、ピリついた空気が漂う。まるでアリサを護るように、一歩前に出たハデスとヴェガードの間には暗い沈黙が流れる。


「ヴェガード様。申し訳ありませんでした」


 アリサはハデスの腕を引くと、頭を下げた。


「ステラさんを助けるためなら、何でもします」


 ヴェガードだって、それはわかっていた。何故なら、彼女はもうすでに一度、ステラのために、その命をかけているのだから。


 ヴェガードは緊張した空気を解き、息を吐いた。


「一緒に、アンドロスへ行っていただきます」


 アリサは大きく一度、頷いた。




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