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11. 王子の守護

 


 公爵令嬢ステラ・アステリア。


 アルカディア王国の第二王子である、エラトス・アルカディアの婚約者の名前だ。王家と公爵家の間で、二人が13歳の時に決まった。


 何度か茶会や夜会でエスコートしていたが、それ以上、お互いに興味も関心もなかった。


 ステラは完璧だった。

 礼儀作法も、所作も、教養も、嗜みも、全て。


 ――ただ。


 時折見せる傲慢さや表情のなさに、令嬢としての可愛らしさを感じられなかった。


 ところが学園に入ると一変した。


 彼女の傲慢さや表情のなさは、()()()()()()()に対してだけになった。


 主に私とメリッサ嬢に対して。


 何故だ。他の者が相手であると、態度がまったく違った。以前の彼女からは考えられないほどに。


 それは……とても可愛らしい御令嬢の姿だった。


 そんな状態が二年も続き、三年になった。召喚の儀式が行われた授業で倒れた彼女を、とてつもない速さで助けたシアンに黒い感情を覚えた。


 今まで感じたことのない想いに戸惑った。


 翌朝、学園でステラを待っているとシアンがエスコートしてきた。ステラは私の婚約者なのに。


 シアンに話しかけると動揺する素振りも見せず、すんなりその場を離れていった。


 ステラに向き直るとなるべく優しく笑いかける。


「心配したんだよ? ステラ」


 そういうとステラは少し驚いた顔をしたが、それでも「ありがとうございます」と返してくれた。


 そんないつもと少し違う可愛らしい返しに嬉しくなり、エスコートしようと腕を差し出した――次の瞬間、


「所詮、婚約者としての義務でございましょう?」


 そこには冷たい視線を向ける、()()()()ステラの姿があった。


「なっ……何故?」

「殿下は婚約者として当然の義務を果たされているだけだと思いますわ」

「違う。そうじゃない」


 ステラの顔をまっすぐ見ていった。


「ステラは何故、()()()()そのような態度なの?」


 ステラが目を見開く。しかしそれは一瞬で。すぐにいつものステラの顔に戻る。


 ステラからの返事はなかった。


『予言をあげるわ』


 私の耳元でふわりと言葉が聴こえる。

 そこには、私の守護神テミスがいた。


「予言?」

『そうよ。私は「法と予言の女神」ですもの』


 ふふっと、テミスが笑う。


『安心してね。この声は貴方にしか聴こえていないから』


(ならば、声を出して答えては不気味ではないか)


『まぁ、そうなるわね』


 心の声に返答したテミスに驚き、彼女を見上げると、にっこり笑って肩を竦めてみせた。心の中で『はぁ』と、ひとつため息を吐く。


『あのコとは婚約破棄になるわ』

「何だって?!」


 急に大きい声を出した私に周囲が驚く。ステラも無表情ではあるが、じっと私の顔を見つめた。


「……何でもない」


 そう呟き、ステラと校舎に向かって歩く。テミスは続けていった。


『あのコには別の魂が入っているわ』

「っ!!」


 最早、心の中だけで処理するなど、到底、難しいような情報に、ただうつむいて耐えることしか出来なかった。




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