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107.予知の王女

 


『だから、シアン様に処刑してもらわないと……ね!』


 15歳の少女の口から飛び出したとは思えないような非情な言葉。愛らしい姿の王女の口から放たれたその無慈悲な言葉は彼らの目を醒まさせるには充分だった。


 ――『予知』の力を持つ王女。


 それがアンドロス王国の第二王女フレアだった。彼女には幼少期より不思議な力があった。特に隣国の大国アルカディア王国について、知り得ぬことを知っていた。そのため王家では重宝され、溺愛されてきた。その力は親しい者にしか、語られていなかったのだが。


 そんな中、突然、第二王女フレアに呼ばれたのが、アルキオネ侯爵令息とパラメディス伯爵令息の二人だった。彼らは最初、王女の『予知』を信じていなかった。

 しかし、自分しか知り得ない思考や想い、そして、出来事や家族の関係などを言い当てられ、その力を信じるに至った。胸の内など、本人にしかわからないことまで知っていたのだ。彼らが王女に心酔するには、充分だった。


 ある時、彼ら二人だけに王女の『秘密』を打ち明けられた。その特別感と優越感に二人はさらに王女にのめり込んだ。



 隣国の情勢に変化が起き始めたのは、今から二年前のことである。本来なら、まだ先の出来事である内乱の火種が燻ぶり始めた。しかし、この時点ではまだ気にもしていなかった。


 本格的に何かおかしいと感じたのは『ゲーム』がスタートした時点から、少し経った頃からだった。

 自分たちは『続編』の登場人物キャラクターだから関係ないと思っていたのだが、不測の事態が起きた。

 内乱が勃発してしまったのだ。自身がこれまでしてきた『予知』が外れる形となった。これに王女は焦りを隠せずにいた。


 ――アルカディア王国で、何かが起こっている。


 『ゲーム』の本編の物語は、アルカディア王国の中での話だ。隣国であるアンドロスからでは、内部の情勢を知ることも、何かを働きかけることも出来ない。


 『本編』が終わるまで、あと約半年。

 そして、そこからさらに二年後に『続編』は始まるのだ。ただ、それには必要なことがあった。


 『本編』が、シアンルートのハッピーエンド以外で終わること。そして、悪役令嬢ステラ・アステリアが処刑されていること。これが必須条件だった。


 第二王女の『予知』が外れたことにより、父親である国王陛下に王女自身が調査を申し出た。


 アルカディア王国で不測の事態が起きている――そのせいで自分の『予知』がずれてしまった。だから、自分で実際に調査したいと進言したのだ。国王は王女を大切にしていたし、内乱から護ることにもなるため、隣国への留学として、アルカディア王国と話をつけることに成功した。


 それによって、本来の物語よりも二年半も前に、隣国アルカディア王国への留学が決まったのだ。


 第二王女フレア。彼女は転生者である。

 アルカディア王国での名前は、主人公ヒロイン


 ――そう。名称変更可能、なのだ。

 転生前の彼女の名は、リイナ。

 彼女は『続編』の主人公ヒロインである。



 ◆◇◆◇



 《星の花の伝説を聴かせて〜双樹の伝説編〜》



 北の果て。

 雪で覆われた地に、今や誰もがその存在を忘れてしまった神殿がひっそりと建っていた。


 保存魔法で護られたその神殿の奥には『扉の間』がある。その扉の向こうには『闇』で覆われた世界が存在していた。本来なら、『対』となるその世界が『闇』に覆われ始めたのは二年前のことだった。



 アルカディア王国。

 この国には『魔道士』と呼ばれる者たちがいた。

 魔術、魔法に優れた者たちでその存在は国家機密となっている。


 そのうちの一人が『ある出来事』により、『闇』に支配され『魔王』と呼ばれるようになった。


 アルカディア王国の東の丘にある星花の木は、その『闇』の力により、すでに枯れ始めていた。


 このままでは星花の力を使うことは出来ない。


 主人公ヒロインはその『魔王』を倒すため、攻略対象と共に旅へ出る。そして、星花の木の双樹を探し出し、その光を手に入れようと奮闘する。


 隣国の王女であるその身分を偽り、アルカディア王国に留学生としてやってくる主人公ヒロイン

 そして、その護衛騎士と、その従者。学園で教師として王女を世話する公爵家嫡男。生徒会長で留学生を気にかける侯爵家令息。


 主人公ヒロインは彼らと、その『魔王』を倒す。そして、星花の光を使い、世界を『闇』から救う。


 これは、そんな王女の物語。



 〜・〜・〜



 王立魔法学園に隣国からの留学生がやってきた。

 身分を偽った王女は学園での生活に留学生として少しずつ慣れてきていた。

 そんな平穏な生活も世界が『闇』に覆われていくことで次第に変化していく。


 二年前から少しずつ進行していた『闇』は確実に王都まで飲み込み始めていた。


『このままでは、王都は「闇」に覆われます!』


 第二王子エラトスがアルカディア王国の国王陛下に進言する。緊急に開かれた会議には各組織の長と公爵家嫡男、そして、第一王子、第二王子が出席していた。中には兼務する者もいたのだが。


(一体何故、こんなことに……)


 ――あの時、彼女を処刑しなければ。

 そして、彼にその責を負わせてしまわなければ。


 エラトスは頭を抱えた。


 『闇』の原因は、彼女の処刑だ。公爵令嬢ステラ・アステリア。

 第二王子である私の――元婚約者だ。


 そして、その『闇』を創り出している者。

 その男は、四大公爵家令息の一人だった。

 ――今では『魔王』と呼ばれている。


 エラトスは苦しそうに顔を歪めた。


 何故、自らを『闇』に堕としたのだ。

 何故、『魔王』になど、なったのだ。



(何故なんだ――シアン!!)





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