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作者: SION

拙いものですが。




ある初夏の日のことだった。

私はよく一眼レフを片手に近所をふらふらと散歩するのが好きだ。

お陰でそこそこ人に見せられる程度にはカメラの腕を上げられたと思っている。

この日は天気がいい休日だったため、

カメラを持って外へ出ることにしたのだ。


とはいえ家の近所はどちらかといえば閑静な住宅街で、これといっていくアテもなく歩いていると前から小学生が楽しそうに笑いながら走ってきた。

どうやら学校も終わり、家に帰る途中なのだろう。

彼らはランドセルをまだ背負っていた。

転びそうな、なんとも言えない不安定さが残る足取りに見えたのはおそらくランドセル以外に持っている荷物が重かったのだろう。

走りながら若干フラフラとしている。


(転びそうだな…)と彼らが通り過ぎた矢先、

1人の少年は盛大に転んだようでドスーン!!と派手な音が背後から聞こえた。

思わず振り返ると、大丈夫かよーなんて笑いながら話しかけてる子がいた。

まぁ、平気そうかな?と思えるくらい、

転んだ少年は大きな声でいってぇー!!と騒いではいるがさっさと立ち上がり、転んだ際に撒き散らした荷物を拾い出した。

一緒にいた少年らも手伝うように拾い出したのをみて安心してそのままその場を去った。


少し歩き出してから、

あぁ、ああいう風景を撮れるとカッコいいのかな…なんて思っていた。

そんなことを考えながら小学校の側を通り、

その先にある広い公園に足を向けた。

そこは市立公園でそこそこ広く、近所のお年寄りからランニングに訪れる人から、果ては犬の散歩に来ている人もいるようなところで、

ちゃんと整備されていてかなり綺麗にもしてあり、さらには四季折々の花がいつも咲き誇っていた。


そんな花たちにカメラを時折向けながらのんびり歩いていると、

ふとなんだか周りが急に静かになったように感じた。

あたりを見渡すと先ほどまで辺りにいた人影がなくなり、風の音しか聞こえない。


まるで突然何もない空間にぽん、と放り出されたような気になってなんだか急に怖くなり、

思わず走り出した。

走り出したところで行くあてなんかない。

それにいくら公園内を走っても人の気配がない。

日が出ていて明るいのに静かなだけでこんなに怖い空間になるだなんて思いもしなかった。


しばらく走っていたが、普段の運動不足がたたり

疲れてしまった。

周りが見渡せる開けたところで足を止めると、

バサバサと羽音が聞こえた。

パッと振り向くと黒い小さな鳥が地面スレスレを低く飛んでいて、しばらくすると私の足元まで降りてきた。

びっくりしてみていると、

「雨が降るよー」

と一言鳥が話し、そのまま飛んでいった。


え、と思ったのも束の間、

飛んでいった方に思わず伸ばした手の上にポツッと水滴が落ちた。

少しずつそれは増え、次第にかなりしっかりと雨が降り出した。

慌ててカメラを抱き抱え途中見かけた藤棚まで走った。


藤の花はかなり咲いていて、

綺麗な藤色のカーテンのようだ、と思っていると後ろのベンチに座っていたおばあさんに突然声をかけられた。

「あなた、大丈夫?急に降ってきたわねぇ」

驚いたがそのまま、そうですね、と返事をした時には辺りには人がまばらに戻ってきていた。

そのままおばあさんに促され隣に座りながら、

雨が止むまでそのまま話すことにした。

その時に先程見かけた黒い鳥のことを聞いてみた。流石に話しかけられたとは伝えなかったが。

すると、「それはツバメじゃないかしら?」と教えてくれた。

おばあさん曰く、

ツバメは雨が近づくと低く飛んでいることが多いそう。低気圧が近づくとツバメの好物の虫の羽に湿気が溜まり、羽が重くなることで低く飛んでいるのを捕まえるために低く飛ぶことがあるんだとか。

へぇ、と小さく相槌をする。

あの鳥は、ツバメは私に雨が降ること教えるために来たのだろうか?となんだか摩訶不思議な気持ちになって、このことを忘れないようにと雨が降る藤棚での淡い藤色をカメラに収めておくことにした。


後日、溜まったカメラのデータをパソコンに移していると、

あの藤棚の写真をみつけもう一度ゆっくり眺めることにした。

よく見ると撮った時には気づかなかったが、

あのツバメがちゃっかり映っていたのには驚いたけれどね。

読んでいただきありがとうございました。

よろしければコメント等よろしくお願いします。

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