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桜の木の下で  作者: Nekomaru
5/5

桜の木の下で 第五枚 「揺れ動く心」

放課後……(靴箱)

「あっ、やばい!教室に宿題忘れた!取りに行ってくる!」

「待っとくね〜」



〜校舎裏〜

宿題を教室まで取りに行ってあの二人のところに戻ろうとしたとき、あの人たちは突然……


コケっ!


「っ……!?」


ドサッ!!



突然、何かに足が引っかかって、思いっきり体から転んでしまった。


「いった……これ絶対擦りむいて……」

「あれ〜?こんなところで何してるのぉ〜?」

「……!?」


声がした方に目を向けると、目の前に、いじめの主犯格と取り巻き達の姿が……

途端、私は嫌な予感しかしなかった。


「……まぁいいや、ちょっとあんたに用があんだけどさぁ……」

「……用…?」

「そ、あんたの友達の、霧森のことなんだけど…、」

「え……!?」


理音のことでなにか言われるのかな……


「あいつもバカだよねー、ちょーっと優しくしたくらいですぐ友達目線になっちゃって。」 

「それなぁ〜www」

「でさぁ、ちょっとお願いがあんだけど、あいつからさ、お金とってきてくんない?あいつ馬鹿だから、多分気づかないって〜w」

「うわ、ずる賢いねぇ〜(笑)」

「いやいやあいつが馬鹿過ぎるんだってwww」

「……理音は…」


「え?」

「理音は……確かに勉強はできないけど…そんなにあんたらが思っているような馬鹿じゃないし、それにお金なんて理音からは絶対取らないから…」

「……は?」



「……ねぇ理音、流石に佐藤さん遅くない?探しにいったほうが…」

「確かに……」


「玲香〜、こっちにはいなかったよ〜?」

「こっちにも……何処行ったんだろう…?」

「お前……誰にそんな口聞いて…」


(え……この声って…鈴川よね?でも、なんだか結構怖い声だった気が……)


その時、私の頭の中に嫌な考えが浮かび……


(ま、まさか……あの子(咲羅)に何かあったんじゃ…!?)

「玲香〜?」

「理音!ちょっとこっちきて!あの子がいるかも知れない!」

「う、うん!」


「はぁ…はぁ……っ…!??」


目線の先に、超怖い顔をしている鈴川達三人と、負けないくらい怖い顔をしている佐藤さんの姿が……

 

「あんた……噂によりゃ、2組の博名と関わるようになったって…」

「……!!!」

「ちょうどいいや。前々からうざかったし、一回シメよっか?」

「れ、玲香は関係ないでしょ?!」

「ふーん、お前、やけに友達思いだね?」

「違う!私にとって二人は……!私の大切な友達だからだよ?!友達に辛い思いをさせたくないのは当然のことでしょ?!」

「それに玲香は…!いじめられてる私を、見ず知らずの私を助けてくれようとしたたった一人の人なんだよ!だから、巻き込んで傷つかせなくないの!」


「っ………」


「私のことはいくらいじめても構わないから、でも、あの二人に手を出したら私が許さないからっ!絶対!」

「つっ……生意気なっ…!!」


ビシッ!!バシッ!!


「つ……」

 

不意打ちで顔を殴られたので、思わず後ずさりする。


ゴンッ!!


「痛っ……」


バタッ!!


押されるようにみねうちを殴られて、そのはずみで校舎の壁に倒れた。

 

「……ゔうっ…」

「あんたなんか……!」

「や、やめっ……」


主犯格が私を殴ろうとする手を振りかざした。私は痛くて抵抗する力もなくて、そのまま殴られるって思い目をつぶった。 

 

ガシッ!!


「……は?」


でも一向に痛みも音もなく、代わりに主犯格の唖然とした声と何か掴んだような音が聞こえた。不思議に思って恐る恐る目を開けると……


「……」

「……れい…か……?」


目の前には、主犯格の振りかざした手を軽々しく掴んでいる玲香と、かなり焦り顔の主犯格の姿が……


「っ……お前…?!」

「……やっぱり、あんたらの仕業だったのね、佐藤さんがいなくなった理由…」


とだけいい、(玲香ナレーション)私は主犯格の手を振り下ろした。

三人は唖然としていた。


「……というか、この際だから言わせてもらうけど、あんたらはなんでこんなことしてるの?私はそんなことしても楽しくないと思うけど。」


「っ……」

確かに、(咲羅ナレーション)私もずっとそう思っていた。だってこんなことしてなんの意味があるのって……

玲香は淡々と静かな声で……


「ま、どうせあんたらにとっちゃ楽しいんだろうけどね。でもそんな身勝手なことで佐藤さんを傷つけられたら溜まったもんじゃないんだけど。考えたことあるの?やられてる側の気持ち。」  

「っ……知らねぇよそんなの!つかお前こそ、なんでいじめられるやつといちいち関わんの?!」

「なんでって……」

「どーせよく思われたいからやってんだろ!いい子ぶってんじゃねーよ!」


「………」


「なんか……」 


バチンッ!! 


その時、私の頭の中の何かが壊れる音がして、

気づけば主犯格をビンタしていた。


「っ……いった…」

「な、何してっ…!」


「……なんかない…」

「何?!」

「いい子ぶってなんかないわよ!さっきから黙って聞いてりゃ人の気もしらず勝手なことばっかり……!私はね、ただ守りたかっただけなのよ!あんたらにいじめられてて、泣いてたこの子をね!

この子はね、自分がいじめられても、大切な人だけは絶対に守ろうとする子なのよ!そんな心の優しい子が、なんで傷つかなきゃいけないのかが、私には分かんなかったからっ……!」

「玲香……」

「あんたらみたいに、群れて人を傷つけてそれで居場所作って安心している奴とは大違い。だから、私もそんなやつには絶対になりたくない!シメたいならシメなさいよ……私は例えみんなから虐げかれても、咲羅を守るって決めてるから!」


「玲香……名前を…」

「え……あ…私今、咲羅って……」


その時だった。玲香の後ろから、図星を刺されてキレたのか、やばい顔をしている主犯格が、玲香に襲いかかろうと……


「玲香!危ない!」

「え……」

「キャァッ!」


私が声をかけたけど一足遅くて、玲香は主犯格の攻撃を目に受けてしまった。


ビシッ!!バシッ!!ヅグチッ!ボンッ!!

そのまま主犯格はどんどん玲香を殴っていく。はじめは呆然としてきた取り巻き二人も慌てて玲香に暴行をしだした。


玲香はどんどん傷だらけになっていった。その光景はまともにみれなくて……


「ちょ…やめてよっ!」

「邪魔すんなっ!!」


ドンッ!!


私が止めに入ろうとするのも虚しく、突き飛ばされてしまった。

輪の中にいる玲香はかなり苦しそうで、今にも気絶しそうだった……


(どうにかできないの?!このままじゃっ…!だ、だれかっ…!)


「あれぇ〜?随分やってくれますこと。」


その時、近くから声がして……


「理音……?」

「霧森?」


そこにはかなり余裕満々な顔をしている理音がいた。いじめっ子達も理音に気づいたのか一旦玲香への攻撃をやめた。 


「ったく……」

「おま…いつからいたんだよ?」

「玲香がこっち駆けつけたときに一緒にいたけど……まぁいいや、それよりあんたら、今すぐこれ以上咲羅をいじめないって約束してくれる?」

「はぁ?なんでそんなことしなきゃ…」

「あ、しないの?ふーん、じゃあ……」 


そういうと理音は、隠していたスマホを取り出し……


「このスマホに、一部始終録画してあるから。あんたらが今してたこと。これを先生とか教育委員会に持っていけば、どうなると思う。」

「え……あ…そ、そんなのっ……それを消せば……」


と、主犯格が理音に近づこうとした。


ガシッ!!


それを止めるかのように、玲香が主犯格の腕を掴み……


「はっ……っ離せよっ!」

「あっ……私、こう見えても力強いから……多分あんたには勝つと思うよ?」

「っ……」

「言っとくけどねぇ…それを奪おうとしたって、あんたらは…何回も佐藤さんの私物に落書きしたりしたでしょ……だから…その時点で証拠はすでに揃ってるから…」

「……あっ…」

「それに、証言人になってくれるかはっ…っ……わか…らないけど、クラスの人もいじめのげ…現場をばっちり見てるんだから、」

「っ……!!」

「まぁ、他にもいろいろ…やってるんだと思うけどっ…」

「そんなの……!」

「……で、どうするの?今すぐに咲羅にいじめないって誓う?それとも…」

「っ……!」

「笑里、もういいよ……やめといたほうが…、」

「そうだよ……」


玲香と理音から攻められ、さらには取り巻き達にさえ止められた主犯格は、限界がきて…、


「っ…分かったよ!もう何もしないから!」

「本当に?」

「うん……も、もう行こ!」


そして、三人は去っていった。


「やっと引いてくれたわー、あいつらしつこいっちゃありゃしない……で、玲香、大丈夫……?」

「う、うん……」

「保健室とか行く?」

「いや……大丈夫…」

「なら良かった……帰れる?家に……」

「うーん……それは……」 

「どうしよう……帰らなきゃなのに…」

「あ、じゃあ、うちの兄ちゃんに車で迎えに来て貰おっか!そうすれば早いし……」


あ、そういえば、理音には5歳上の海斗くんって言うお兄さんがいたよね。当時高校生で。

確か先天性の心臓病だった……

じゃあ、今は大学生くらいだから、車の免許持っててもおかしくないよね。


「え……いいの?わざわざ…」

「いいよ!ちょっと待ってて!今電話してくるから!」

 

そう言い、理音は走っていった。


しばらくした後……


「玲香……あのさ……」

「……ん?」

「……ごめんね…」


「……えっ、なんで佐藤さんが謝るの……?」 

「だっ…て……私を守ってせいで玲香が怪我しちゃったんだもん…私のせいで……」

「いやっ!それは私が勝手にやったことだし……って、なんで泣いてるの?!」

「いやっ……私…ずっとずっと…一人ぼっちだったから……」

 

でも、

私は、あの桜の木の下で玲香に出会えたから……

一人ぼっちじゃ…なくなったんだよ……?

だから、

私………


「私……ずっと玲香と……友達以上になりたくて…」

「親友……ってこと?」

「う、うん……」

 

っていうと、玲香はちょっとの間黙って……


「私は…もうすでに佐藤さんのこと…親友だって思ってたよ?」

「え……?」

「屋上で……一緒に話して、仲良くなったときから……ずっと。」

「そうなの…?」

「うん。あ、後さ……」

「ん?」


玲香は自分のポケットをあさり……


「これ……」

「ええっ!?こ、これって…」


玲香が取り出したのは、玲香と出会った日に鈴川さんに壊された、宝物の桜のペンダント……


「これ……一応直してきたから…」

「え?!これ本当に直してくれてたの…?」


実はあの後……(2話の続き)

「あっ……あとさ…」

「え……」

「これ……さっき水たまりに落ちてた…桜のペンダント……拾ったんだけど……これ、壊れちゃってるから、良かったら直すよ……」

「え?!で、でも、1から10までやってもらってたし……それに、それ結構グチャグチャし…」 

「確かにグチャグチャだけど、ちょっと形を整えるくらいならなんとか……私、そういうの得意で…」

「え……あ、じゃあ…」



あのとき、玲香に直すのをお願いした。

でも……本当にやってくれるなんて……

しかも、超キレイだし……


「上手くできてるか分からないけど……」

「ううん、ありがとう…!本当に…!」

「ううん……佐藤さんの宝物だし…お父さんの形見なんでしょ?」


本当に……嬉しい。

あれ?そういえば……


「そういえばさ、さっき、「咲羅」って呼んでくれたのに、今は「佐藤さん)だよね。」

「え……や、あれはとっさで…」

「もうー、普段から「咲羅」って呼んでよー」

「ええ〜…それはちょっと気恥ずかしいというか…」

「咲羅ー!玲香ー!、兄ちゃん送ってくれるって!」


そうこうしていると理音が戻ってきた。


「そうなの!良かったぁ……」

「とりあえずこっちまで来てくれるって……」



それから、海斗くんの車で玲香の神社(以後博名神社)まで送ってくれて……


「ほんとうに玲香をここまで送ってくださってありがとうございました。」

「いえいえ。理音の友達だし……それでは、また。」

「ええ、ほんとうにありがとうございました。」

 

「玲香、なんとか無事そうでよかった〜」

「ね、ほんとに……」

「そういえは咲羅も怪我してるけど……大丈夫?」

「うん……わたしは大したことなかったし……」

「それなら良かった……」

「理音ー、ちょっとこっちきてー」

「なにー?兄ちゃんー」


博名神社を出る前に、あの時の桜の木の下に立った。

あの人、風と花びらに誘われてここにきて、階段から落ちて、この桜の木に落ちて……

ここの木の下で、玲香と出会って……   


(でも、もう散っちゃって来てるなぁ……もう4月も終わるし、予想してたけど、やっぱり寂しいな……)


なんて思った。 

もし、この桜の木がなかったら。 

私は玲香と出会うこともなくて、

生きるのが辛くて……次の日には自殺なんかしてしまっていたのかも。

あの日、ペンダントを壊されて、 

いよいよ限界がきて……

死にたくなってしまった。

だから、

この桜は……

私を活かしてもくれて、幸せをくれたのかもしれない。

だから、

「ありがとう」と、

そう、心のなかでそっと思った。

 

「咲羅ーー」

「あ、ごめん!理音今行くー」


そうして私は階段を駆け上った。


新しい世界へと、走っていくように……

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