桜の木の下で 第四枚 「急展開」
「え……理音?!」
先生の隣の転校生の女の子をみて、私は人生でこれでもかってくらい驚いた。だって、その子は三年前に引っ越した……
……私の幼馴染がてら、親友の理音だったから…
「あっ、咲羅じゃーん!やっほー!」
途端、私は突然叫んだからか周りから驚かれたようにジロジロ見られていることに気づいた。
「なんだ、お前ら知り合いか?まぁいい、じゃあ、霧森は鈴川の隣なー」
「いやー、驚かせちゃってごめんねー?」
「もうっ!本当にびっくりしたんだから…!」
休憩時間、私は理音とともに廊下でさっきまであったことを話していた。
「いや、私は転校先で咲羅がいるって事前に知ってて、驚かせよーと思ってて!」
「もぉー!私は何にも知らんかったよ?!」
って。またあの頃のように何気ない会話をした。
いじめられてた私にとって、最近は玲香意外と話すこともまずなくて、人の会話方法をほぼ忘れてしまっていた私だけど、理音とは喋れるんだなぁ……
「あれ?佐藤さん…?」
「……ん?」
と、声がしたほうをみると、不思議そうな顔の玲香がいた。私達が2組の前で喋ってたからから多分気づいたんだろう。
「ん?知り合い?」
「うん!友達でね〜!」
「そうなんだ!始めまして!うち、咲羅の幼馴染の霧森理音です!」
「あ、自分、2組の博名玲香っていいます。転校生?」
「うん!いやー、3年前にこの町出たんだけど、また戻ってきたんだ!」
(やけに元気な人だなぁ……そういえばこの子この間の佐藤さんの話に出てきた幼馴染の子……で、間違いないかな?)
「そういえば玲香、理音もあの場所連れてっていい?」
「いいよ。佐藤さんの幼馴染なんだし……」
「え?あの場所って……」
〜その日の昼休み〜
「えええええ?!あの場所って屋上のこと?!」
「ん?そうだよ?」
理音は屋上にくるなりかなり驚いていた。まぁ、本来なら立入禁止の屋上に行くんだからそうとうやばいことだよね。そりゃ驚かれる……
「え、立入禁止じゃないの?私の前の学校ではそうだったけど……」
「うーんとね、本当は入っちゃいけないんだけどね、玲香がね、屋上の鍵をこっそりとって来てるから…」
「へ?!博名さんが?!」
理音はさらに驚いた。
「え、でもいいねそういうの!ワクワク感があって!すごいねー博名さん!」
「そ、そうかな…?」
と、理音はテンションが高くなっていた。玲香は心なしかちょっと困ってそう。
「そういえば、理音はなんでここに引っ越してきたの?」
「いやー、なんかパパの転勤の都合らしくて!でもせっかくクラス替えしたばっかりなのに。って思ったけど、転校先に咲羅いるって聞いた瞬間嬉しかったなー」
「あー、理音のお父さんフリーランスだからねぇ…」
理音は小さい頃から活発で明るくて、誰とでもすぐに仲良くなれる性格。ちょっと…いやかなり勉強が苦手だったから、バカキャラって感じで人よりもはっちゃけてる。そんな性格は今も変わらないみたい。
「そうだったんだねーあの、霧森さんって…」
「あぁ、理音でいいよ!霧森さんって言いにくいしさ。」
「あ、じゃあ私のことも玲香でいいよ!」
「そう言えばさ、理音はもう友達できた?」
「いやいや咲羅、流石にもうできてたら猛者じゃんw」
「まぁそらそっか!でも理音はすぐ出来そうだけどなぁー」
「ん……」
と、理音は少しだけ黙って、
「でも、隣の席の笑里ちゃんって子達が話しかけてくれてさー」
「え……?」
「優しそうな人たちだったし、ああ言う人たちとなら友だちになっても……」
(笑里ちゃんって……鈴川さん…え、確か咲羅をいじめてる主犯格の…!?」
「理音、その人らはだ…」
「玲香っ!」
玲香は多分、私の戸惑ったような表情を見て察してくれたんだろうけど、私はその声を止めた。
「え……」
「うん?どうしたの?」
「あっ、えっと!理音ごめん!ちょっと待ってて!」
「え……?」
何が起きているのか分からない感じの理音をおいて、私は玲香の腕を引っ張って屋上のドアの裏に走った。
「ちょっと佐藤さん?!なんで言わなかったの?!理音に…」
「うん……せっかく言おうとしてくれたのにあれなんだけど……、今はちょっと、理音にいじめられてること言いたくなくてさ…」
「でも、理音はあの人達のこといい人だって思ってるんでしょ?それ、なんだか騙されているものじゃ……それに、あいつらはもつ佐藤さんと理音が友だちだってこと知ってるんだし……」
「うん。だから、帰りにちゃんと言おうと思って……、だから、それまでは……」
「………」
「分かった…それまでは理音には黙っておくね……」
「へぇ…」
「いいこと聞いちゃった☆」