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桜の木の下で  作者: Nekomaru
3/5

桜の木の下で 第三枚 「友達」

次の日、四月十八日(水)

「……うーん…」


時は昼休み。みんな友達とお弁当を食べている中、私は自分の席で考えごとをしていた。昨日……


『その……私……いっつも昼休み…屋上にいるから…良かったら……きて…』


と、昨日初めて会った博名さんにそう言われた。だから今行こうか迷っているのだ。


(うーん……行きたい…けど……う〜ん…

まぁ、とりあえずお弁当を……)


と、自分のかばんを漁った。


「あ……あれ?お弁当が……ない?え…朝はちゃんと入れたはずなのに…?」


その時、すぐに嫌な予感がして、後ろのゴミ箱の方をみた。


「……!!」


そこには、朝お母さんが作ってくれていたお弁当が捨てられてあった。グチャグチャになって……


(せっかく……お母さんが作ってくれたのに…な…)


お弁当は諦めて、私は屋上へと向かうことにした。



(えっと……ここだよね?あれ……っていうか、屋上って生徒は立入禁止で鍵がかかってたような……)


そんなことを思いながら、屋上の扉を開けて、中に入った。


「うわぁ……始めてきたけど、凄い景色だなぁ……小学校のときも屋上なら来たことあったけど、こんなに綺麗じゃなかったもんな…」 

(っていうか……博名さんはどこに……あ!」


景色を見ていたら、遠くの方で博名さんを見つけた。博名さんは屋上のど真ん中でグーグー寝ていた。こんな人いたんたな……


(よ、よ〜くこんなとこで寝れるな……それもこんな気持ち良さそうに……しかも寝顔も可愛くて美人レベルっていう……起こしちゃだめだよね…)


すると……


「んん……」

「えっ!!」


寝顔をガン見していたら、突然目が開いて、ムクッと起き上がった。私はビックリして変な声を出してしまった。


「ん〜……あれ…あんた……?」


博名さんは寝ぼけた顔で私の顔をじ〜っと見て、


「あー……昨日の…」

「あ!うん!昨日の佐藤です!!」


私何言ってんだろ。

慌ててそう言ってしまった。


「いや〜…屋上でお昼ご飯食べてたら、いつの間にか寝ちゃってたよ」


と、博名さんはすぐ横にあったかじりかけのおにぎりを食べ始めた。


「………」

「……持ってきてないの…?お弁当…」

「あっ!いや……あの…」

「す……捨てられちゃって…」


私がちょっといいにくそうにいうと、博名さんはすぐ察してくれたみたいだった。


「……いる?このおにぎり…」

「えっ?!でも食べる分……」


博名さんのお弁当は少しだけ大きいおにぎり2つしかないみたいだったし、お腹空いちゃうんじゃ…


「あー……いいよ。そんなお腹空いてないし(めっちゃ空いてるけど)」

「あ…ありがとう……」


と、貰ったおにぎりをパクパク食べていると、ふと気になったことがあって。


「そういえばさ、博名さんって、なんで立入禁止の屋上に普通に入れるの?」

「あ〜…鍵盗んできた。」

「ええっ?!」

「なんかの用事でここの鍵借りたとき、返し忘れて、それで次の日の昼休みにワンチャンここ入れるかもって思って、そしたら案外簡単に入れたんだよね〜〜誰も入ってこないし、鍵盗んだのさえ誰も気づかないし……」

「ええ……」


やる事がすごいやる事が。


「いつごろからそうしてるの?」

「えーっと、一年生のころくらいかな。私、そんとき不登校気味だったし、クラスには不良とかギャルばっかりだし、友達一人もいないから…教室にあんまりいたくなかったし……」

「……うん、わかるよ、その気持ち…」 


しばらく沈黙が続いて、なんだか急に居づらくなってので、


「いやー、でも、博名さんって意外とワルだったりするんだね〜w」

「……まぁ…確かに自分でも時々思ったりするかな〜w」


「……あのさ、私も今度から、ここに来ても…いいかな?」

「えっ……」

「あー……やっぱりいじめられる人とは嫌かな?」

「いや……そういうんじゃなくて、いや、普通にさ……誰かと話したり、誰かと一緒に過ごせたこととか、あんまりなかったから、ちょっとびっくりして。でも、佐藤さんとだったら、私……」

「……?」

「ううん!なんでもない……いいよ。ここに来ても。むしろ来てほしいし。」

「……!!うん!」


私も、全然誰かと話したりすることがなかったから、凄く、嬉しい。


キーンコーンカーンコーン……


「あ!!やばい!もう5時間目始まっちゃう!行こう!博名さん!」

「うん……」


そして、屋上を出ようとしたとき……


「あ……あのさっ!」


博名さんに呼び止められた。


「どうしたの?」


「あ、えっと……その、「博名さん」じゃなくて……呼び捨てでいいよ……下の名前で……」

「……!!うん…!」



それからというもの、毎日博名さ……じゃなくて、怜香と一緒に屋上でお弁当を食べた。一緒に帰ったりもした。私にとって、こんな楽しいことだった。こんな日がくるなんて……教室にいる時間は相変わらずいじめられて辛かったけど、前よりずっと学校に行くのが楽しみになっていった…



それから一週間後、四月二十三日(火)

教室……

(あれ……先生くるの遅いなぁ……どうしたんだろう…?)

ガララッ!!


「えー、朝のHRを始める前に、みんなに重要な話がある。今日からこのクラスに、新しい仲間が増えるぞー」

「えっ!転校生!?」

「どんな子かな〜」


周りがザワつき始める。


「えー、じゃあ入ってきてくれ〜」

ガラガラガラガラ

テクテクテク……


「今日からこのクラスに新しく入る、霧森理音さんだ。」


え……?


「理音……?!」

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