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Episode 5


「まぁすぐには向かわねぇよ。先にボス部屋を見学してからだ」

『……何故見学を?』

「普通に気になるだろ、ボス部屋。普段宝物庫の近くにはないからな、こういう時じゃないと見れないんだよ」


そう言いながら立ち上がり、自分の現状の装備を確認しつつボス部屋の方へと向き直る。

近くにある、とは言いつつも向かうには少しばかり距離のある位置に存在するそこは、元はボスと呼ばれるダンジョンの核を守るために異常進化させられたモンスターが縄張りとしていた場所だ。


周囲は冒険者が攻略のために動いていた事もあり、モンスターの狩り残しというものが殆どないくらいには安全な環境となっている。

もしダンジョン内で休憩するならボス部屋以外は警戒を解くな、と言われるくらいには安全なのだ。

しかし、今は本当に安全かどうかもわからない。

……影みたいなモンスターが居る可能性もないわけじゃない。だが、そこに行ってみたい。それだけの気持ちがあれば今は十分だろ。


「それにボス部屋は基本的にダンジョン内では一番安全なんだよ」

『安全……?ボスが居たのにか?』

「あぁ、むしろボスが居たからだな。冒険者がボスに挑む時は……それこそ勇者とか呼ばれる存在じゃねぇ限りは数日かけて相手を弱らせて仕留めるもんだ。それをするために、周囲のモンスターは先に根絶やしにするんだよ」

『成程な。そのおかげでダンジョン攻略後に迷い込んだモンスターでも居ない限りはほぼ安全というわけか』

「そういう事だ」


俺達の救出がいつになるか分からない。

救助が来ない、というのはこのダンジョン内に出現した件のモンスターの特徴である人間を取り込むという点を考えればあり得ないだろう。

それならば、ある程度拠点に出来るであろう部屋の位置は覚えておいた方が良いだろうし……近いならば簡易的な拠点を構えてしまっても構わないだろうと思っている。


一応は数日分の食事なんかは保存のきく干し肉なんかを持ってきてはいるが、最悪の場合何日かは食事をしない覚悟ではいた。

なんせ、故意とはいえ一度崩落しているダンジョンなのだ。

入口を掘り出すのにある程度の時間は掛かってしかるべきだろう、と考えているし……そも時間がかかってくれた方が俺自身がダンジョンを攻略する時間も増えるために都合がいいとも考えていた。


「道案内は任せる。俺も警戒はするが主にお前がそれをやるんだ」

『任された。さっき見せてもらった地図の通りに案内すればいいのだろう?ならば問題はない』

「じゃ、行くぞ」


少しだけ嫌な予感が過りながらも、俺達は出発した。

その予感が気のせいだと……自分の勘違いなのだと、そう思いながら。




(メア、どれくらいいる?)

『多すぎて判断できない……が、ここがあ奴らの出現場所で間違いないようだぞ?先ほどからここで出現しておるしな』

(……チッ、面倒な事になったな)


数分後、鎧の案内でボス部屋に辿り着いた俺達を待っていたのは大量の影の様なモンスターだった。

数えるのも馬鹿らしくなるほどの数に、どうにかこれら全部とこの場で戦闘を行う事自体を避けられないかだけを考える。

所謂モンスターハウスのような状態……幸いな点とすれば、俺達が部屋の外からそれを確認できたという所だろうか。


普通にやったら物音を立てた瞬間、ボス部屋から大量のモンスターが流れ出て俺達をあっという間に呑み込むだろう。比喩ではなく。

しかし、こうやって観察していると気付いた事もある。


(なんでこいつらは襲ってこねぇんだ?)

『……私と同じように知性がある、とか?』

(んなもん、人間を取り込んだ後なら説明つくが……だが複数体が同じ反応はおかしいだろ)

『それもそうか……ふーむ』


奴らは見た目的に信じたくはないが、生きている。

だからこそ目の様なモノがなくても、何かしらの方法で周囲の情報を得て行動しているはずなのだ。

俺達トレジャーハンターが権能を使い、【魔力感知】や【動体索敵】などを行うように。


だが。

俺達の姿が目の前にあっても。

俺達が音を立てても。

俺達が魔力を紡ぎ魔術を行使しても。

奴らは反応せず、ただただその場を漂っているのだ。


「……これなら声出しても問題ねぇかもな」

『……良いのか?』

「問題ねぇだろ、実際今襲われてねぇしな」


しかし、この反応はあの男……ティクルが言っていた事と少し違う。

彼は襲われかけたのだ。

それなのに俺は襲われない。明確な違いといえば、鎧の存在程度だろうが……その要素に関しては別に気にしなくてもいいだろう。


「見つけちまった以上放置も出来ねぇしな……どうするか」

『といっても主人様に出来る事も少ないだろう?』

「……そうだな。とりあえずは地図のほうに印だけでもつけておくか」


地図に最低限の情報を書き込み、俺達はそこを後にする。

反応されないと分かっていても、出来る限り足音を立てないようにゆっくりと。

あれらを討伐するのは自分達ではなく、冒険者の仕事だ。

それこそ、救助されてからでも遅くはない。


ならば、俺は先に進むだけだろう。

目的は宝物庫の攻略なのだ、ここで留まっていても攻略は進まない。

鎧の案内に従いつつ、俺は宝物庫の方向へ足を進め始めた。


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