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Episode 25


正直な事を言えば、俺は動揺していた。


「む、その顔は信じていないな?これが私の本当の姿……ってなんで私全裸なんだ!?こっちを見るな!主人様!」


そんな事をいう目の前の少女……自称メアは、俺にそう語りかけてくる。

元々、メアが言っていた人からモンスターになるという話。

今回その逆の事が俺の目の前で起こったということだ。

その事実に、そして今までのことを信じざるを得なくなったその状況に、俺の頭は混乱していた。


「……とりあえず、これでも着ておけ。それとまだ戦闘中だ、気を引き締めろ」

「あ、あぁ……すまん、ありがとう」


俺は持っていた外套をとりだし、メアの頭に掛けてやる。

そして、自分の頭を整理するように、そして状況を飲み込めるようにと呆然とこちらを見ているレンの様子を伺った。

……とりあえずはこの子をメアだと仮定して進めないとダメだな。頭が働かん。


彼があの心ノ臓で何を起こそうとしていたかは分からない。

魔力を暴走させて、爆発のような事を起こそうとしていたのか、それとも魔力を取り込んで自身を強化するつもりだったのか。

真偽は定かではないものの、彼から話を聞くのが一番早いだろう。


そう思い、俺はいつの間にか切れていた【身体強化】を多重に掛けなおし、レンを捕縛するために地面を蹴ろうとして、


「メア、リー……?」


彼の言葉で踏みとどまった。

メアリー(・・・・)。なんてことない普通の女性の名前だ。

しかしながら、この場では。メアが自称本当の姿になったこの場では違う意味を持つ。

それは、


「レン、お前には聞かないといけない事が増えちまったみたいだな」

「はっ?……ッ!?」


メアリーという名前は、彼女の本名である【メアリー=クライネ】に繋がる名前という事。

そして、レンがどうやってかその名前を知っていて。尚且つ、メアの姿を見てその名前を発したという事。

それだけでも俺や【盗掘者の集い(エンム・リオル)】のギルドマスターにとっては重要な情報源となり得るのだ。


聞き出すためには、捕縛するしかない現状。

俺は止めていた足を動かして、レンの目の前まで移動し、掌底を放つ。

狙いは腹部、簡単に当てられる場所にしておくことにした。


しかしながら、それは寸での所で展開された多重の障壁によって防がれてしまう。

どうやら彼も彼でこの場がどういう場所なのかを思い出したらしく、こちらを睨むように見ながら、後ろに跳び距離をとった。


「貴様……ッ!メアリーとどういう関係だッ!」

「それを聞きたいのはこっちなんだがな。まぁお互い話を聞くにはどうするべきか分かってるだろう?」

「……チッ」


短く舌打ちすると、両手を広げ……そこに魔力を集め出すレンを見ながら。

俺も俺で短剣を2本取り出し、脚に力を入れ、いつでも踏み込めるように準備をする。

単純に踏み込んで攻撃するだけでは今までと同じように防がれる。

俺には障壁を簡単に突破する札や技術なんてものは存在しないのだから。


だからこそ、頭を使う。

ただの刺突でダメならば、そこに追加で何かを加えればいいだけだ。


「……【強化】」


そうして使うのは、俺が使える魔術の中で最も応用の効きやすい魔術。

剣に使えば、強度と切れ味を。

馬車などに使えば、耐久性を。

そして、人間や生物に使えばその筋力などを使った魔力分、文字通り【強化】してくれる魔術。


俺はそんな魔術を、多重に権能が掛かっているこの身体に付与した。

瞬間、俺の身体の底から今まで以上の力が沸き上がるのを感じ、それと同時に強烈な痛みが全身に襲い掛かってきた。


当然だ、人間の身体はそんなに丈夫ではない。

それを無理を押して権能と魔術で強化しているのだ。

どうしてもどこか無理が出る。

今までは使った部分だけが壊れていったが……魔術まで掛けるとその無理が呼吸をしているだけで襲い掛かってくるようで。


「行くぞォ!」


身体が悲鳴をあげるように。

声を張り上げ、レンの元へと一瞬で移動する。

それと同時、両手に集めていた魔力を炎と氷の剣に変えこちらへと襲い掛かってきた。

素人のような剣の振りではあるものの、レンもレンで【強化】かそれに類するものを使っているのか……その速度は速い。


それらを短剣によって受け流しつつ、蹴りを足を狙って放つ。

しかしそれを読まれていたのか、多重の障壁によって防がれた。

魔術を含めた近接戦闘の始まりだ。


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