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Episode 12


暫くして。

メアリーは自問自答が終わったのか、いつまでも俺の頭の中に響いていた声が止み。

俺に問いかけてきた。


『……む、主人様よ。作業は終わったのか?』

「終わったぞ。移動するにも、お前の声が邪魔で索敵やらに集中できそうになかったからな」

『それはすまないことをした』

「……もういいのか?」

『あぁ。ある程度自分の中での整理はつけたつもりだ』


そう言って、後に発する言はないのか黙るメアリー。

……面倒だ。

正直な話、俺からすればこの意思ある鎧の事情はそこまで重要ではなく。

はっきり言えば興味もない。

だからこそ。


「そうか。じゃあいくぞ」


そう言った。


『……!そう、だな。あぁ。索敵は任せてくれ』

「第一目標は分かってるな?」

『あぁ、主人様がここから脱出することが一番の目標だろう?』

「そうだ。その後他のトレジャーハンターと合流、冒険者が来るまでの間にあの影が外に出てこないようにするのが第二の目標になる」

『第二目標の方では私はあまり活躍出来そうにないな』

「思ってもねぇ声色で言うぐらいなら自分の仕事をこなせ」


これが武器であったならまた別だっただろう。

敵を討ち、目に見えて活躍が出来る。それが武器だ。


しかし、鎧はそれ以上に活躍ができる。

鎧は、武器をある程度防ぐことができる。

鎧があるからこそ、ある程度安心して武器を振るうことができる。

それを分かっているからこそ、なのだろう。


だが、それを過信しすぎてはいけない。

人は学習する生き物だ。学習するからこそ鎧というモノを生み出し、その生み出した鎧を破壊するための道具をも生み出した。

だからこそ、俺がしっかりと考えて動かなければならない。


「まずは、入口に移動するぞ。もしかしたらもう他の奴らが掘り返してくれてるかもしれない」

『了解した』


そうして俺達は改めて行動を開始した。





「……まぁ、そうだよな」

『むぅ……』


案の定、まだ入口は土砂によって埋められており外の明かりを見ることは叶わなかった。

ただ、変わったこともある。

少しずつ少しずつ外から掘り進めてくれているのか、声のような何かの音が聞こえてきているのだ。

これならばさほど時間も掛からないうちに外の光を拝むことができるだろう。


俺は道具の中から少しでも土砂を削るのに適したものを取り出し、内側から慎重に土砂を削っていく。

下手をすれば崩れて生き埋めになってしまう可能性もあるからだ。

まぁ、もしかしたらメアリーが障壁を張ってそういった状況にはならないかもしれないが。


そうすること数刻。


「おっ」


微かに光が見えた。

外で掘っていた者達もそれに気づいたのか、こちらへと語り掛けてくる者や休憩していた者らを呼びにいく者だったりと様々な反応が返ってくる。


『ッ!おい!穴が開いたぞ!!大丈夫か!?』

『何だと?休憩してる奴らを呼んでくる!待ってろ!!』

『もう少しだけ待っててくれ、すぐに通れるくらいの穴を開けてやる!』


声的にまだ応援の冒険者はついていないようだが、あの時いたトレジャーハンターたちはほぼほぼ全員いるようだった。

助かった、という気持ちと共に周囲を警戒する意識を強めた。


何せ、この外にいるトレジャーハンターの中に俺を生き埋めにして殺そうとしてきた者が少なからず1人はいるのだから。


(メアリー、警戒を切らすな。俺をハメようとした奴からすれば二回目のチャンスだ。仕掛けてくる可能性が高い)

『了解した、いつでも障壁を張れるようにしておこう』


一度命を狙われている関係上、警戒しすぎて損をするようなことはないだろう。

少なくとも街へ戻り、ギルドマスターと会って話をするまでは安心することはできない。


暫くして。

俺が通れるくらいには広がった穴を前に、外のトレジャーハンター達が集まってきていた。

彼らが集まってきている理由は俺が無事だったからではない。

良くも悪くも仕事人な彼らは、俺がこの長い間ダンジョン内で何もしていなかったわけではないのを分かっている。

恐らくは、俺が宝物庫を攻略したのかどうかが気になっているのだろう。

何人かは俺よりもバックパックの方に視線がいっている。


ある種居心地の悪い雰囲気の中、俺はその出来た穴を潜りながら数刻ぶりに外へと出ることができた。

……分かっちゃあいるが、出れたのは幸運だったな。あの影には感謝すべきか迷うが。


最悪、ここにいるトレジャーハンター全員がそれぞれの拠点へと帰っていた可能性もあった。

そうではなかった理由は単純で。危険なモンスターらしき何かが発生したため、ここからそれらが這い出てこないよう見張らなければならなかったからだ。


「すまない、助かった。この借りは街の酒場ででも返すことにしよう」

「そいつは良い。後は冒険者を待つだけだが楽しみが増えたぜ」

「一杯だけとは言わせねぇから覚悟しておけ?財布がぺらっぺらになるくらいには飲み食いしてやるからよ」

「はは……お手柔らかに頼む」


周りを見渡しながら、顔に張り付けたような笑いを振りまいた。

そして一人、こちらへと強烈な感情を向けている者がいるのに気づき、話を振った。


「あぁ、もしかして君が彼らを纏めてくれたのか?礼を言おう。名前は何て言う?俺はカナタ=リステッドだ」

「……纏めなんてそんな。僕はレン=クロサキというまだ新人のトレジャーハンターだ。礼は受け取っておくが、そんな頭を下げられるようなことはしていない。当然の事をしたまでだ」

「そうか。ならクロサキ氏にも酒場で何か奢ることにしよう。それくらいはさせてくれ」

「それくらいならばありがたく受け取ろう。こんな見た目だが、僕は割と飲むから覚悟するといい」

「はは、こいつは怖い。とんでもない借りをつくってしまったみたいだ」


表面上は特に問題のない会話。

だが、彼の視線が時々顔ではなく俺の背後や(メアリー)、そして俺の身体の節々に向くのを見て俺は警戒を強めた。

恐らく俺の考えが間違っていないのであれば。


こいつが俺を生き埋めにしようとした犯人だろう。


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