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Episode 11


「ん?」


俺がそれに気が付いたのは殆ど偶然だった。

何個かの特殊なアイテムや、質に流せばそれなりの値段になりそうな武器を仕舞っていた時の事だ。


それは、本に重なるようにして置かれていた。

保管されていたと言うよりも、誰かが使った後にその場に放置したかのように無造作に。

恐らく偶然。そんな風に置かれていた物を手に取った。


『それは……?』

「片眼鏡だろうな。だが……」


装着してみると、それがただの片眼鏡ではない事がよく分かる。

まず見えるのが、文字文字文字文字。

文字の羅列だ。


【ナイフ】、【ショートソード】、【在庫帳簿】、【壁】、【床】、【破損した床】……。

片眼鏡を通して見た物の名称が、全て見える。

俺の知識に依存してるのかと思えばそうではなく。

明らかに知らない名称も表示されている事からして、これはそういうものなのだろう。


それに加え、片眼鏡で手に取った物を詳しく視ればより詳細な情報が出るようだった。

基本的な説明に加え、呪いがかかっているかなど……それこそトレジャーハンターが喉から手を出す程に欲しがるレベルのものだ。


「どうやら鑑定が出来るものらしいな……。下手すりゃ国宝級だぞ。なんだってこんなもんがここに……」

『何?大発見ではないか主人様よ』

「阿呆が。こんなもん持ってるのがバレりゃ最悪暗殺されて奪われるだけだぞ……まぁ、バレなけりゃいいわけだが」


そう言いながら、俺は先程まで自分用にと鞄に仕舞っていた道具達を改めて取り出していく。

この片眼鏡で見れば、俺の雑な鑑定よりもきちんとした名称が分かるからだ。

要らないものを多く持ち帰る主義は無いし、出来るのならば拠点にある物も改めて整理した方が良いだろう。


「チッ、やっぱゴミも混ざってやがった。やっぱ鑑定が出来るもんがあるとちげぇな……」


改めて要るものと要らないものを選別しつつ。

ふと、気になる事があった。

……これでメアを見たらどう表示されるんだ?


鑑定が出来るようなアイテムの中には、生物の生命力……生きるための力や魔力が分かるものがあったりするらしい。

らしい、というのも伝聞でしか聞いたことが無いためであるし、そもアイテムを使わなくとも教会に行けば有料ではあるが調べてもらうことは可能だ。

それなりに高額な為、そういったものを調べるのは貴族やらの裕福な層のみだが。


そこで、気になったのは鎧の存在だ。

いや、鎧というよりも、リビングアーマーがどう視えるのか。

無機物でありながら、モンスターとして生きている者。

誰も鑑定なんてする機会もないだろう。純粋な好奇心だ。


「メア」

『なんだ?』

「一旦お前を脱ぐ。感知やらはそのままに、異変があったら知らせろ」

『……何故脱ぐ?』

「……この片眼鏡を使ってお前の事を視るだけだ。変な事をしようとしてるわけじゃあない」


俺は鎧の留め具を外していき鎧を外していく。

どうせバラバラにしても独りでに鎧の形へと戻るのだ。適当でいいだろう。


『成る程な……もしかしたらそこに私の知らない私の情報が記されている可能性がある、と』

「あくまで予想だがな。……何か分かるなら良し、何も分からなくともお前がどういう存在なのかは分かるだろうよ」

『まぁ……そうだな。私も自分がどういう存在として世界に認識されているのかは気になる所だ』


鎧の返答を聞きながら、俺は片眼鏡を鎧へと向ける。

すると、ある程度予想通りに。

けれどやはり予想外に。

鑑定結果が俺の目に表示される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【メアリー=クライネ】

種族:リビングアーマー

状態:良好

生命力:

魔力:

保有権能:

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……これは」

『む?主人様どうだ?どう表示された?』

「表示は、された。ただ……」

『ただ?』


一息。


「お前、名前本当はメアリーって言うんだな」

『メア、リー?』

「……なんだ?覚えてないのか?嘘をついていたってわけじゃあなく?」

契約(パス)があるのだ、主人様に嘘をつけるわけないだろう?……そうか。メアリー。メアリーか……今までなんで私は忘れていたんだ……?』

「……メアリー=クライネ。お前の名前だ。家名までわかったってことはある程度調べやすくはなるだろうよ」


俺の話を聞いているのかいないのか。

鎧は……メアリーは、ずっと小さく『忘れて……あぁ、では私は……?』と呟き続けていて、他の事を聞けそうにはなかった。

本当の事を言えば、この名前について俺はどうでも良かったのだが……本人(本鎧?)はそうとはいかなかったようで。

自問自答を繰返し、もしかしたら感知すら行っていないかもしれない。


……一応、俺も索敵しておくか。

何を考えているのか、俺の頭の中に延々と流れ込んでくる。

これではまともに作業をしようとも進むものも進まないだろう。


俺はそのまま一旦作業を中断し、メアリーを着直した後に宝物庫の扉にもたれ掛る。

そして目を閉じ、頭に流れ込んでくる声ではなく。

自分の耳が捉える音に集中しつつ、まだ残っている問題を考える。

どうやってそれを乗り越え、外へと出るか……これが俺の今の優先すべき目的なのだから。


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