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Episode 9


新たな短剣を取り出し俺と守護者との間を阻む壁に突き刺していく。

魔術師ならば、この壁……魔術障壁の弱い部分を見つけ出す事が出来るのだろうが、生憎と俺はトレジャーハンターだ。

的確に弱点を狙えないのであれば、それに偶然当たるように数を用意すればいいだけの話だ。


だからといって、こちらの弾にも限りがある。

それに守護者を倒した後も戦闘が起こる可能性があるのだ、ここで全力を使い切ってしまったら後々が厳しくなるだろう。


ならば、と現在使っている権能を思い出す。

俺が戦闘に使っているのは【身体強化】と【反応強化】の2つ。

主に前衛と呼ばれる、戦闘で前に出る者たちが使う権能だ。


【身体強化】はそのまま自分の身体を強化し、多少の怪我程度ならばすぐに回復できる程度には身体の回復機能も向上するもの。

【反応強化】は単純に、相手の攻撃に対してすぐに対応できるかどうかという……いまいちどういう効果があるか分かってはいないが、使っている時と使っていない時を比べると大きな差があると言われている権能だ。


主にこの2つと魔術、短剣などの刃物を使い戦うのが俺の基本的に戦闘での立ち回りだ。


……くそ、出来ればこっちは切りたくねぇがやるしかねぇか。

俺は一つ覚悟を決めると、零に近かった彼我の距離を自ら少し離す。

これから行う事を考えての事だ。


(メア、1枚手札を切る。今のまま防御は任せた)

『了解した……が、そうだな。それはあの壁を抜けるものか?』

(んなもんやってみなきゃ分からねぇだろ)


そう返すと、鎧は少しだけ笑いながらそれに同意した。


『……ふふ、あぁすまない。そうだな。そうだろうな。支援は任せてくれ主人様』

(もとよりそのつもりだ。いくぞ)


何がおかしいのか分からないが、笑っている鎧は置いておく事にする。

詳細を聞かずに任せろ、といったのだ。ならば合わせてもらおうじゃないか。


「キヒッキヒヒッ!」

「はは、よく笑う。きちんと喋れないのか?知恵の代わりに言語は理解出来ないのか?それとも俺が諦めたと思ってあざ笑ってやがるのか?」


言葉は理解できるのだろう。

俺の言葉を聞いた守護者はその気持ち悪い笑い方をやめ、短剣が数多く突き刺さった壁の奥からじっくりと俺の姿を見てくる。

その姿は何を言っているんだ、と言いたいように見えた。


「良いか?行くぞ。良く見て反応しろよ?【多重付与:身体強化】」


そう言った瞬間に俺の身体は光に包まれ。

その姿を見た守護者が焦り、炎球をいくつも出現させこちらへと撃ってこようとしているのを見て。

俺はただただ、まっすぐ守護者へ近づいた……はずだった。


『なっ……なぁ!?』

「……くそが」


俺の身体は守護者を通り過ぎ、そのまま後ろの宝物庫の扉へと激突する寸前、メアが咄嗟に張った障壁にぶつかって急停止した。

守護者は何が起こったのか分からず、振り向いて後ろに居る俺の姿を見て驚愕しているような表情を見せている。


俺が行った事は単純だ。

ただ単に【身体強化】を多重で掛けただけであり、そこに特殊な技術は存在していない。

但し、これをやるものはほぼいないだろう。


「いってぇな……だから普段これはやらねぇんだ」


全身が軋むような。

骨が悲鳴をあげているような。

筋肉が少しずつちぎれていくような。

そんな感覚が身体中を駆け巡る。


権能というものは、同じ効果の権能ならば何重にも重ねて自分の身体に付与することが出来る。

ただし、それが出来るといっても普通はやらない者の方が多い。

簡単な話、単純に身体に掛る負担が大きいのだ。

いくら【身体強化】による身体能力の向上、自然回復力が強化されていたとしてもそれは変わらない。


『……大丈夫なのか?』


鎧の心配そうな声を無視し、そのまま改めて俺は守護者を目の前に据える。

痛みはまだあるが、相手を待たせているわけにもいかない。

それに、分かったこともある。

……アレはこの速度についてこれていない。


それが分かっただけでも、この重ね掛けの技術……師匠に言わせるならば【重複付与】だったか。この手札を切ったかいがあった。

次は、捉える。相手の攻撃に関しては全て鎧に任せ、俺は再び足に力を入れ地を蹴った。

足の筋肉が千切れようと。ぶちぶちと嫌な音が身体のうちから響いていようと。


一瞬で守護者の元へと辿り着き。

何も持たなかった俺の手は、人型だった守護者の首があると思われる辺りを掴み。

勢いをそのままに、俺が入ってきた通路の壁へ守護者と共に突っ込んだ。


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