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旅する少女と祠の呪い  作者: kokohuku
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十二話 『 決裂 』

 ――そして、ミイ姉さんがルチルの話を聞いている、その間。

 マメとキノコも一体何があったのかと、猟銃片手に立ち尽くすカルネに詰め寄っていた。

「姉さん! 何があったんです? 猟銃と猪と子牛と、あっしにゃこれっぽっちも分からねぇ。いなくなった後、何がどうして今みたいになったってんですか!?」

「そうですぜ、姉御。姉御にゃ話さなけりゃならねぇことが山とありますぜ! 村長さんにマルコさん、二人にゃ沢山心配してもらったんです。訳を話すことが礼儀ってもんでしょう」

 しかし、そんな二人にカルネは舌を打って見せる。

「ったく、本当に馬鹿な連中だよ。そんな連中に感化された、あんたらもあんたらだけどねぇ。いいかい、アタイがいつ、どこで心配してくれと頼んだんだい? それとも、探しておくれと書かれた紙でも見つけてここまで追いかけてきたのかい? 違うだろう。勝手に追いかけてきて勝手になんだかんだと言っているだけだ。何がアタイには話さなけりゃならないことがある、だ。いい加減にしとくれ。もううんざりなんだよ! ここまで付き合ってくれたことには礼を言ってやるがね、これ以上の足手まといはいらないんだ。とっとといなくなっておくれな!」

 カルネは奥歯を噛みしめるようにそう言うと一向に背中を向けて、腰に下がる砂金を入れた袋を強く握りしめた。常より酷い言われ様に言葉を失うマメとキノコに、荷物を担ぐカルネは振り向かずに続ける。

「ああ、それとねぇ。周りの動物の慌てようをみりゃあわかることをわざわざ言ってやる必要もないんだがね、もうすぐこの池は爆発したように噴き上がる。それも、伝承が正しい物ならば、その水の量は天変地異クラスのもので、下流にある何もかもを押し流す鉄砲水になるはずだ。お前たちも死にたくないのなら、山を登っておくこ――――」

 その時、カルネは肩をつかまれて強引に振り向かせられると、思い切り頬を殴られた。ゴグッ、という肉と骨を殴りつける重い音と一緒に、足をふらつかせる。

「へッ……痛いじゃないか」

 殴った相手を睨み付けるように視線を上げれば、そこにはこぶしを握ったまま震わせるキノコがいた。突然の事にマメもマルコもアニールも、ただ唖然としていた。

「なんて事をしてくれてんだい、姉御ぉ……! そんなことしたら、村は――姉御を助けて、うちらを世話してくれた村の人たちは、どうなるってんだ!」

「がなり立てるんじゃないよ……アタイは大したことしちゃいないんだ。ただ池の中に杭みたいな石柱があって、その足元から砂金が出てきているようだから引き抜いてやった、ただそれだけさね。それの何がいけないんだい」

「何が……? 何が、だって!? 姉御は知っていたはずだろう! だから、鉄砲水が出るって知っているんだろう! 姉御がすげぇお人だってことはうちもマメも知っているさ。古くて文字がのたくった蛇みたいな文献をすらすらと読み解ける知識があることを、うちらは知っているんだ! なら、姉御がやったことが何を引き起こすかだって分かっていたはずでしょう。それなのに、どうして……どうしてこんなこと! 姉御っ!」

「――仕方ないだろう!!」

 それはカルネの咆哮だった。カルネはキノコの襟を引っ掴むと、鼻の頭がぶつかるくらいの近さで怒鳴る。

「だったらどうすればよかったんだい、えぇ!? こんな所まで旅をしてきて、時間もどんどん少なくなって……キノコ、お前はアタイの妹に苦しんで死ねと、そう言うつもりかい!」

「そんなわけねぇさ! でもほかに方法が――」

「ならその方法ってやつをご教授願えませんかってんだよ! アタイだってみんなが笑って大団円って方法が良かったさ、でもそんな方法ありゃしないんだ! そんな方法があったら、きっと世の中から人死になんて出ちゃいないのさ! それでもアタイは妹の死を許せなかった……だから、最後に残った方法を試したんだ! その何が悪いってんだい!?」

「悪いに……決まってんでしょうが! 人ひとりが勝手にしていい命ってぇのは一つきりだ。知り合いでもねぇ命や、ましてそれが親切にしてくれた相手なら勝手に奪っていいはずがねぇ。いいや、逆にこっちが命を使って恩を返さなきゃならねぇはずだ……なのに姉御はッ!」

 にらみ合うカルネとキノコ。二人の言い争いにしかし、その場のだれも答えを出せなかった。

 理想じゃない。

 二人とも正論なのだ。

 ただ焦点が違うだけだ。

 だから決着がつかない。

 お互いの言葉に折り合いをつけられない。

 カルネは舌を打って、突き放すようにキノコの襟から手を離した。二歩三歩と後退さると、背中を向ける。

「ふん。まあ、そもそも。こんなこと言いあってたって、やっちまったものは仕方ないんだ。アタイは一足先に避難させてもらうよ」

 山の上に向かって歩き出したカルネはそれきり振り向かず、鬱蒼と生い茂る樹々の間に消えていった。引き留める声はなかった。マルコもアニールも、そしてこれまで一緒に旅をしてきたキノコやマメであっても、言葉がなかった。

 けれど――。

 そんな暗い雰囲気などお構いなしに、あるいはぶち壊すように、事態は止まらず進んでいく。


次回 「 かくて、竜神は吠え猛る 」

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