幕間
――いらっしゃい。
珈琲で良いかい?
いつもの席で少し待ってな。すぐに用意する。
――――?
スペースが広くなっていないか、と言われれば、ああ、片付けたからね。
せっかくの常連見習いなんだ、店の者として、少しくらい客の居心地を考えることもある。
……ってのは理由の一つだから、そんなに嬉しそな顔を見せないでくれないか。照れてしまう。
なあに、そろそろ在庫整理をしようと思ってね。それを、そのスペース周辺から始めたってだけさ。
ここだけの話……と言うわけでもないんだがね、ここに店を出してからもうずいぶん経つが、いつのころからか、勝手に物語が増えるようになったんだ。
たまに来る客が勝手に置いて行っているのだろうとは思うんだが、この店の棚にあるなら店主が把握していなけりゃあいけない。並び順だって、そうそう客の来ないこの店も、時間が経てばある程度ずれてくるからな。
幽霊が?
ははっ。そうなら面白いな。この店も、幽霊の出る書店として客を呼べるかもしれない。
――そら、お待ちどうさん。
今日のは少し濃いめに淹れたから、もし苦手なら言ってくれ。シュガーポットとミルクを用意する。
しかし、あんたも珍しいな。今日の風はとても強い。こんな日にも店に顔を出してくれるとは。
なあに、嬉しいのさ。
じゃあ、今日もゆっくりしていきな。
気のすむまで、物語に浸りながら。
次回 第四章 一話 「 捜索 」




