表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

オークに転生した俺は今日も奴隷のフリをする。

作者: 小狗丸

 気がつけばファンタジーRPGのような異世界に転生していた。


 今俺に起こっている出来事を要約するとこの一文となった。


 何故か今はもう名前も思い出せないが、元の世界での俺はオタク趣味がある以外は平凡な単なる会社員でしかなかった。それが明日は会社が休みだからと、自宅で酒を飲みながら異世界転生系のネット小説を読んでいるうちに寝落ちして、次に目を覚ましたらスライムやゴブリンといった見覚えのないモンスターから今まで見たこともないモンスターが多数生息している森の中にいたのだから正直驚いた。


 とにかく俺はファンタジーRPGのような異世界の、何処とも分からない森の中に転生してしまったわけだ。


 ……「オーク」として。


 そう、オーク。頭が猪で体が人間の、スライムやゴブリンの次くらいにファンタジー系の作品で知られているモンスター。それがこの世界に転生した俺の種族であった。


 別に世界を救う勇者とかになりたかったわけじゃないけど、それでも転生するなら人間がよかったと、自分がオークになったと知った時は軽く絶望した。


 実はこの世界に転生した時、この世界の一般的な知識が頭の中に流れ込んできたのだが、その知識によればオークは多くいる魔物の中でも下の方の実力のザコらしい。そして魔物を倒して報酬などをもらっている冒険者みたいな者達から見ると、オークは経験値兼「食糧」という扱いのようだ。


「これは色々とヤバイな……。とりあえず……『ステータス』」


 自分の状況がかなり危険だと気づいた俺は、とにかく生き残るためにはまず自分の力を正確に理解すべきだと考え、この世界の知識を使って自分の能力を正確に記しているステータス画面を呼び出した。俺が口にすると目の前に光の板が現れ、「なんだかいよいよゲームっぽくなってきたな」と思いながらステータス画面を見てみると……あれ?


「シルバーオーク? 何だこれ?」


 ステータス画面にある種族の欄には「シルバーオーク」という聞いたこともない種族名が記されていた。指でステータス画面のシルバーオークの部分を触れてみると、ステータス画面にシルバーオークに関する説明文が表示される。


「ええっと、何々……。『シルバーオーク。オーク種の変異体である魔物。雄しか存在せず、体毛が光の加減で銀色に見えるのが特徴。身体能力等は通常のオークと全く変わらないのだが、肉は非常に美味でどの部分も食べられる。更にシルバーオークの睾丸には食べた者は三十ポイントのスキルポイントが得られる効能がある上、シルバーオークの睾丸はシルバーオークの部位で最も美味で世界三大美食の一つに数えられている』」


 スキルポイントというのは「スキル」という特別な技能や能力を得るためのポイントのことだ。この世界での強さはスキルが全てで、強くなるには大量のスキルポイントが集めて強力なスキルを覚えるのが必要があり、一回のレベルアップにつき三ポイントのスキルポイントが得られる。


 なるほどそういうことか、つまりシルバーオークは美味しく食べられる上にレベルアップ十回分のスキルポイントが得られる、冒険者が一気に強くなれるボーナスキャラ。○タルスライムのオーク版ということか……って!


「ふざけるなよ! 何だよそれは!? 冒険者に狙われて殺される確率が大幅に上がったってことじゃないか!」


 俺はあんまりなシルバーオークの情報に思わずその場で叫んだ。


 というか睾丸って○玉の事!? 世界中の冒険者が俺の○玉を狙っているって事!? 確かに動物の睾丸が漢方薬の材料に使われているの聞いたことがあるけど、これは流石にあんまりだろ!?


 いよいよ本当にこの世界で生き残れるのか不安になってきた俺は、何かこの世界で生き残るための情報はないのかと自分のステータス画面を穴が開くくらい凝視し、やがて自分に特別なスキルが二つもあることに気づいた。


 一つ目は無機物を自分の好きな物質に変えることができる「錬金術」のスキルで、二つ目は死者を蘇らせて自分に絶対服従の部下にする「隷属蘇生」のスキル。


「おお……! 何だ、俺ってば強いじゃん!? こんなスキルがあれば冒険者達に狙われても余裕で……ん?」


 自分に備わった二つのスキル。そのどちらも充分チートなスキルであることに、俺はこの世界で生きていける希望を見た気がしたのだが、その直後にステータス画面の一番下にある文章が記されているのに気づく。そしてその文章はこう記されていた。


【所有物】

 シルバーオークの魔石(効果:錬金術・隷属蘇生、使用回数:五回)×1


「…………………………ナニコレ?」


 ステータス画面の一番下にあったその文章を見た瞬間、これ以上なく嫌な予感を感じて俺が呆然としていると、頭の中に流れ込んできたこの世界の知識が浮かび上がってくる。その知識によれば……。


『魔物とは、生まれながら特別なスキルを覚えていて、体内に魔石と呼ばれる特殊な石を持っている生物の総称』


『魔石を使用すれば、その魔石の持ち主であった魔物が覚えていたスキルを回数制限はあるものの発現させることができる』


 と、あった。


 ………。


 ……………。


 …………………。


 し、死亡確率、またも上がったぁ!? 俺を殺して手に入るドロップアイテムがチートアイテムすぎる! 使えば石を金に変えたり死んだ人を蘇らせたりできるチートアイテムなんて誰だって欲しいって!


「……ヤヴァイ。この情報がもし知られたら冒険者の集団どころか、冗談抜きで『国』が動く可能性が充分ある。そうなったら逃げ切ることも抵抗することもまず無理だ」


 そして人間に捕まれば十中八九殺されて魔石を奪われて終わりだ。もし殺されずにすんだとしても、待っているのは自由の「じ」もない奴隷生活だろう。


 その後、最悪の事実が次々と明らかになったことで俺の頭はついに考えることを完全に放棄して、俺はその場に倒れるとそのまま眠りについたのであった。


 ……現実逃避とも言う。




 一晩眠って精神的に落ち着いた俺は改めて現在の自分の状態を再確認することにした。


 一、シルバーオークというオークの変異体だが特に強いわけではなく、現在のところザコモンスター。


 二、体の肉は非常に美味で、○玉……睾丸を食べると実質十回レベルアップした効果を得られる。


 三、殺して手に入る魔石は「錬金術」と「隷属蘇生」の効果を発揮するチートアイテム。


「……アカン。やっぱり冒険者達に追いかけ回された挙げ句に殺されるか、便利なアイテム代わりの奴隷としてこき使われる未来しか見えない」


 実際、もしゲームで今の俺みたいな敵キャラか出てきたら、俺は地の果てまで追いかけて殺していると思う。そしてこのままだと、この暗い未来が本当に現実のものとなってしまう。


 殺される未来も奴隷にされる未来も嫌な俺は、最悪な未来を避けるために一つの方法を考えた。それはスキルを使って俺の存在を隠す「隠れ蓑」を作るというものだ。


 まず適当な死体を探してそれを「隷属蘇生」のスキルで俺に忠実な部下にする。そしてその部下には冒険者になってもらって、俺は冒険者に従う魔物の奴隷のフリをする。


 あと、そこら辺の石を「錬金術」のスキルで金塊にして、それを売った金で冒険者となった部下の装備などを整えれば、自然と部下が有名になって周囲の視線は俺ではなく部下に向けられる。その上、装備などを整えたのをきっかけに部下が実力をつければ、俺が人間達に狙われた時に盾となってくれるだろう。


 一見すればこの方法は奴隷にされた未来を自ら選んだように見えるが、本当に奴隷にされるのと奴隷のフリをするのでは大きな違いがある。野生の魔物として生きていく自信がない俺にはこれ以外の方法が思いつかなかった。




 冒険者の部下を作って隠れ蓑にする作戦を思い付いた俺はさっそく適当な死体を探すことにした。すると次の日、目的の死体は思ったよりあっさりと見つかった。


 俺が見つけたのは壊れた武器や鎧と一緒に地面に転がっている白骨死体。見たところ冒険者の死体のようだ。


「冒険者の死体か……。これは話が早くて助かるな」


 正直死体ならなんでもよかったのだが、最初から冒険者であれば鍛える手間も省けるし、魔物や戦闘のことにも詳しいだろうから心強い。俺はさっそくこの冒険者と思われる白骨死体に「隷属蘇生」のスキルを使うことにした。


(それにしてもこんなに見事に骨だけになって復活とかできるのか?)


 最初はうまく蘇生できるか不安であったがその心配は杞憂だったようで、俺がスキルを使うとすぐに骨から肉やら血管やら内蔵やらが盛り出てきて僅か数十秒で白骨死体……もう白骨ではないのが蘇生は完了した。


「……………ん? あ、あれ? あたい、確か死んだんじゃ……?」


 俺が蘇らせたのは二十代くらいの人間の女性で、彼女は自分が一度死んだ自覚があるらしく、起き上がると不思議そうに自分や周りを見回した。


 人間の女性が落ち着いたところで彼女の話を聞いてみると、やはり彼女は冒険者、しかも主に一人で戦うかなり優秀な冒険者らしい。だがある日、知り合いの冒険者達と魔物退治の仕事を受けてこの森にやって来た時に強力な魔物と遭遇し、彼女は仲間達に逃げるための捨て石にされた挙げ句にその強力な魔物に殺されてしまったのだと言う。


「……それはまた、大変だったな」


「別に気にしてはいないよ。冒険者の世界ではよくあることさ」


 俺の言葉に話を聞かせてくれた女冒険者は、本当に特に気にしていない表情で答える。そして俺が女冒険者に自分を蘇らせた理由、冒険者の奴隷のフリをする作戦を伝えると彼女は……。


「あんた、そんなことを考えるだなんて本当に変わったオークだね? まぁ、いいさ。命令に逆らえない以前にあんたには命を救ってもらったんだ。それくらいお安いご用さ」


 と、あっさりと引き受けてくれて、俺と女冒険者との「表向きは人間の冒険者と魔物の奴隷だが、本当の主人は魔物の方」という奇妙な関係が始まったのであった。


 女冒険者と主従関係を結んだ俺は「錬金術」のスキルで女冒険者と一緒に野ざらしにされていた彼女の武器や鎧を治し装備を整えると、女冒険者の案内で人里へと向かうことにする。ちなみに俺が治した装備は○ラゴンクエストの女戦士を思い出させるセクシーなビキニアーマーと大剣で、それを装備した女冒険者はとても魅力的で俺は最初に部下にしたのが彼女で本当によかったと、女冒険者の白骨死体を発見した自分の幸運に感謝した。




 結果から言えば、俺の冒険者の奴隷のフリをするという作戦は成功した。


 ボロ布を被り、女冒険者の後ろに付き従う俺を人間達は馬鹿にしたり好奇な目で見ることはあっても、敵意を向けてくる者はいなかった。


 そして奴隷のフリをして女冒険者と旅をしてしばらく経ったある日。俺は一つのことを思いついた。


 俺の◯玉……シルバーオークの睾丸は食べるとスキルポイントが三十ポイント上がる。それはつまりそこから作られる「アレ」にも同じ効果があるんじゃないか?


 そう考えた俺は次の日の夜。女冒険者に「口を使った奉仕」をして俺の「アレ」を飲んでみるように命令した。


 この世界の強さとはスキルの強さだ。もし俺の考えが正しくて俺の「アレ」に◯玉と同じくスキルポイントを上げる効果があれば、女冒険者を強くするのに役立つはず。


 女冒険者には俺の隠れ蓑の他に、俺の護衛としての役割があるのだから彼女には是非強くなってもらわないと困る。だからこれは必要な実験なのだが……。


「はぁ……。命令には逆らえないから仕方ないけど……あんたもやっぱりオークなんだね」


 そう言う女冒険者の呆れたような視線が正直辛い。確かにこの実験を考えた時「巨乳女戦士に無理やり性的な奉仕をさせるオーク」の図を想像してしまい興奮したが、これは必要な実験なんだって。


 そんなやり取りしてから始めた実験は大成功であった。


 女冒険者の「口を使った奉仕」によって興奮した俺は、実験が始まって数分で股間から「アレ」を放ち、それを飲んだ女冒険者はスキルポイントが五ポイントも上がっていた。睾丸を食べた場合に比べてはずっと劣るが、それでも二回分のレベルアップと同じ効果があり、しかも俺の精力次第では何回でもスキルポイントを上げられるのだから大成功と言っても過言ではないだろう。


「こ、これは凄いね……。あんた、変わっているだけじゃなくて凄いオークだったんだね。……さっきは少しだけ見損なったけどあたいの早とちりだったみたいだ。すまなかったね」


 女冒険者も実験の結果に驚き、ついでに彼女の中の俺に対する評価が一気に上がったようだった。




 俺の「アレ」に関する実験から俺と女冒険者の生活は少し変わった。


 昼間や人目のある所では俺は女冒険者の奴隷のフリをして、夜や人目のない所では奴隷のフリを止めて主人に戻り女冒険者に「口を使った奉仕」を何回もさせる。


 そんな生活を続けていると女冒険者のスキルポイントは大量に集まり、それを使って彼女は強力なスキルを次々と覚えて、一年もしないうちに女冒険者は大陸で有数の強者として人々に知られるようになった。そしてそのついでに、俺も「大陸有数の優秀な冒険者の奴隷」として知られ、人々から若干の敬意で見られるようになった。


 うん、本当によかった。この世界に転生したばかりの頃は生きていける自信が全くなかったが、今ではそこら辺の一般人よりもずっと裕福な生活を送れるようになった。


 俺が考えた冒険者の奴隷のフリをするという作戦は間違ってなく、しっかりとした成果を出してくれたのは嬉しい限りだ。しかし……。


「はぁ……。あんた、今夜もたっぷり出してもらうよ……」


「い、いや……。昨日もやってくれたんだし、今日は『奉仕』はしてくれなくてもいいぞ? お前も疲れているだろ?」


「遠慮するんじゃないよ。あたいが強くなればその分、あんたが安全になるんだろ? だからほら、今夜もたっぷり『奉仕』してあげるよ」


 女冒険者が積極的に「口を使った奉仕」をして俺の「アレ」を飲み、強くなってくれるのは正直助かるし嬉しい。……しかし、この最近少し積極すぎないか? 夜になったり人目のない所に入る度に肉食獣のような目で俺を見てきてなんだか怖いんだけど。


 オークに転生した俺は今日も奴隷のフリをする。


 全ては自分の安全の為に。だが最近、フリではなくて本当に奴隷に、主に性的な奴隷になってきているのは気のせいか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が○タルスライムのオーク版というのは、少し面白かったです。 [気になる点] 主人公がヘタレすぎて、今のままでは読者が主人公に感情移入し辛い気がします。 せっかく錬金術と隷属蘇生なんて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ