その方不敬につき首を根元から落としてしまおう
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確かに、メイの言う通り周辺の人々はあからさまにキンシ達に強く注目をしているようだった。
ひそひそ、ひそひそ。
周囲の人々の声。
「なに、あれ……? すごい数の鉱物じゃない」
「あんなに山のように積んで、絶対一般人じゃないよ……」
「っていうか、あの子供の左手見た? あれってもしかして……」
「うん、見た見た……。どう見てもあれって、普通じゃないよねえー……」
ひそひそ、ひそひそ。
「なにやら、色々と言われてしまってますね」
キンシは少し恥ずかしそうにしている。
その恥ずかしさは喜びとは異なり、それよりかは幾らかネガティブなもの、羞恥心を基軸とした感情のあらわれであった。
「なんだか僕もそわそわしてきちゃいました」
キンシはそう言いながら、左の頬を指先で少しこすろうとしている。
だがそうすると、キンシの左半身に刻まれている呪いの火傷痕がより一層分かりやすく周辺の前にさらされることになった。
左頬から左手に刻みつけられている、黒々とした呪いの痕を見た。
周辺の一般市民たち、「普通」の人々のどよめきがさらに色濃く立ち昇ってきた。
ざわざわ、ざわざわ。
他人たちは語らい合っている。
「あれ見て……! あんなに酷い火傷痕、見たことないよ」
「やっぱり、アレってもしかして、ウワサに聞く魔法使いってやつじゃない?」
「うっそお、魔法使いってホントに実在するの?」
「なにそれ、魔術師とはなんかちがいがあるの?」
「えー知らないのおー? 魔法使いってのはね……」
ざわざわ、ざわざわ。
「僕たち魔法使いは、あまり世間に喜ばしくない存在なんです」
聞くべきではないと、耳を貸すべきではないと、キンシは頭の中ではそう理解していた。
しかしどういうことだろう、聞きたくない内容に限って、この魔法使いの少女はより子細な情報を正しく集めてしまうのであった。
「喜ばしくないって、どういうことなのかしら?」
魔法使いの少女の表現を聞き入れた。
メイはカウンターの上に転がっているリンゴ、……の形に整えられた魔力鉱物の結晶を指先にて自分の方に近寄せている。
「それはもちろん、そのままの意味ですよ」
キンシがメイからの問いかけに短く答えている。
長くは語ろうとしない。
魔法使いの少女のその様子から、メイはある程度のことをさとってしまっていた。
たとえば、魔法使いと言う存在がこの世界にとってあまり喜ばしい存在ではないということ。
「まいにち怪物さんをあいてにしているのに、どうして魔法使いさんがうとまれるひつようがあるのかしら?」
相手が話したくない。
そう理解しているのに、聞かずにいられないのは魔女としての本能なのだろうか。
メイは理由を作ろうとした。
「ううん、なんでもないの」
だがすぐに、魔女は自分の想定を自らの手で否定している。
秘密を詮索したがるのは、あくまでも自身の性格の悪さから由来しているに過ぎない。
という事実をメイは自覚する。
「いいたくないのなら、いわなくても──」
話題を雑に中断させようとした。
シャットダウンを、しかして認めない存在も確かにここに存在していた。
「魔法使いってのは、時代が時代なら異端なるもの、異常者として扱われていたからね」
声がした方にキンシとメイが視線を向ける。
見やった。
その先ではカウンター席に腰を落ちつかせているモアが、メイと同じように自分の近くにあるリンゴ型魔力鉱物を手の中にもてあそんでいるのが確認できた。
「異常なる量の魔力量をその身に宿す、魔法使い……と呼ばれていた症状を持つ人々は、昨今になってようやく世間に広く認知されるようになってね」
「へえ、そうなの」
メイはまずもって正直な感想を心の内に許している。
「あんなにハデにあばれるから、てっきり伝統のあるお仕事なのかとおもってたのだけれど」
「おや? カハヅ・トウゲン博士はその辺の事情はあまり教えてこなかったみたいだね?」
メイの様子にモアが珍しく驚いてみせている。
「もしかすると、氏は魔術師と魔法使いの違いについてあまり関心がなかったとみえる」
モアが一人関心を示している。
古城の主、魔術師のリーダー格を務める彼女は、いたって気楽な様子でリンゴ型魔力鉱物を手の中にくるりくるりと転がしている。
「まあ、アレだ、多すぎる魔力は適切な処置をしないと人体にとってもあまり良いとは言えないのは、この魔力社会の上に大きく事実としてのし掛かってくるからね」
モアは手の中の魔力鉱物をコトリ、とカウンターの木材の上に置いている。
「事実、キンシ君の肉体も魔力の多さについてこれていないんじゃないかな?」
モアに指摘をされた。
「……」
キンシは少し考えた後に。
「そう、なんでしょうかねえ……?」
やんわりと笑っている。
どう見ても誤魔化している、その場を取り繕うとしている。
魔法使いである、自らを「ナナキ・キンシ」と名乗る、少女の様子にメイは魔女としての意地の悪い関心を抑えきれないでいた。
「キンシちゃんの体の傷あとも、そのおおすぎる魔力のせいなのかしら?」
そう言いながら、メイはキンシの体に触れようとした。




