彼らにとっては板チョコのような感覚で食べられます
ご覧になってくださり、ありがとうございます。
「言うなればスマートフォンとあまり大差はないと思われますね」
キンシがメイにそう説明をしている。
「だったらそんな、くりすたるナントカだなんて、たいそうな名前でよぶ必要もないんじゃないかしら?」
キンシに向けてメイが疑問を投げかけている。
幼い肉体の、白色のふーかふーかとした羽毛を生やしているメイ。
魔女である彼女の言い分に対して、キンシは魔法使いとしての反論を下の上に用意しようとしていた。
「それは間違いですよ、メイお嬢さん。なぜならば、その……えっと……」
しかしながら例によって、キンシは自分特有の会話下手、コミュニケーション能力の不足具合に悩まされ、さいなまれている。
「く、くく、水晶情報版は、現代の魔法および魔術の叡智を食器用洗剤のようにギュギュっと詰め込んだ、まさに夢のようなアイテムでして……」
キンシがいろいろと語っている。
「へえ、そうなのー」
メイは魔法使いの少女の、つたない至らない解説を左側の聴覚器官に聞き流している。
幼い肉体の白色の羽毛を生やした魔女の、小さな紅い椿の花弁のような聴覚器官。
白色の魔女が属している種族、植物の特徴をその身に宿している。
魔女のスルーもお構いなしに、キンシはこの世界における便利アイテムについての解説を一生懸命に行おうと試みていた。
「内に秘められた魔術式……魔術機構は複雑怪奇、愚鈍なる僕には到底理解できないであろう、高等なる技術力が丹念に、密集して籠められているそうな」
そんなことを言いながら、キンシは羨望の眼差しをモアの手元にある道具に注ぎ込んでいる、
「いいなあ、いいなあ!」
羨ましがっている。
そんな魔法使いの少女の視線を浴びながら、モアはあくまでも気軽そうな様子にて、板を指先で軽快に操作していた。
「それはそれとして、こちらの資料を確認していただきたい」
モアは腰を前に屈めて、手の中の板の表面をメイに見やすいであろう位置まで移動させている。
「んん?」
メイはモアから提示されたものを確認している。
画面とされるであろう、表面にはグラフのようなものが現れていた。
「ふむふむ」
メイはその内容を確認している。
「どれどれ……?」
幼い肉体の魔女が納得を深めている。
その横で、キンシも魔女にならおうと画面の内容を読み取ろうとしていた。
「……」
グラフと文字列をしばらく読んだ。
読んだ、その後に。
「どうしましょう……全然分かりません」
割かし早めの速度にて、キンシは板の内容を理解することを諦めてしまっていた。
「ど、どど……どうしましょう、トゥーイさん」
キンシはトゥーイに向けてすがりつくような声音を向けている。
「あの人たちが話している内容が、僕には全く理解できそうにないですよ……っ!」
「…………」
そんなことを言われてもどうしようもないと、トゥーイは返事をしようか迷った。
しかしながら迷いの最中にて、トゥーイは問題の情報源を先に検索することにしていた。
モアとメイはこの様なことを話していた。
「なるほどね」
メイが納得をひとつ作り上げている。
「適切か、あるいは、それ以上。の、ストレスによって、魔法使いさんや、魔術師さんは、より優れた、魔法を使う、事ができるのね」
メイは可能な限り発音を正しくするために、文節を丁寧に区切って言葉を唇に発している。
メイの木苺のように小さな、瑞々しい唇がこの世界に存在しているらしい、事象についてを語っている。
「ということは? 私たちニンゲンはもうちょっと仲がわるいほうが、もっとすごい魔法をつかえるようになるってことなのかしら?」
しかしてメイはすぐさま、堪えきれなくなるように速やかな発音、つたない発声へと戻ってしまっている。
そうしたくなるほどには、モアから提示された情報は白色の羽毛を生やした彼女にとって、非常に興味深いものであるらしかった。
「その説には、オレは心から賛同するわけにはいかないな」
キンシがやがて諦めて、魔法の「リンゴ」作成の作業に戻ろうかと考えはじめた。
その頃合いにて、モアとメイの会話にトユンが介入をしてきていた。
「トユンさん」
メイが視線を動かし、トユンの声がしたほうに目線の位置を固定させている。
白色の魔女の、椿の花弁のような瞳に見上げられている。
彼女の視線を意識した上で、トユンはどこか慣れきった様子で反論を舌の上に用意し続けていた。
「現在と現状のコミュニティを否定することは、モア様、貴女にとっても非常に不都合なんじゃないかな?
少なくともオレは、いまのこの社会に満足とはいかずとも、それなりの居心地の良さは感じているつもりなんだが」
「大災害」という一つの傷痕。
そして恐ろしき人喰い怪物という、日常に隣接した驚異の数々。
それらによって、現時点において人間たちはある程度のルールに則った規則正しいコミュニティを形成することに成功した。
「そうだね」
トユンの……この灰笛という名前を有する地方都市に暮らす市民。
「普通」の人間であるとされる、彼の意見を聞いた、モアは微笑みを口元からほんのりと薄めていた。




