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ボクは挽き肉にはなりたくない

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

「そんなので大丈夫なのかよ……?」


 ルーフが不安を抱いている。

 そうしたくなる程には、ミナモからの提案はありきたりなものでしかなかった。


 と、言うよりかは。


「それじゃあ、ハリが言った作戦内容とさして変わらねえじゃねぇじゃんか」


 不安の中に、謎に不満げな素振りを作ってみせている。


「大丈夫やって、ルーフ君」


 不安と不満がないまぜになっている。

 そんな魔法使いの少年に、ミナモは励ますような声だけをかけていた。


「うちの「ほうき」の機動力をナめてもらったらアカンで!」


「いや、別に……なめている訳じゃねえんだけども……」


 ミナモとルーフが互いに不安をなぐさめようとしている。


「いえいえ、決してミナモさんの技量を(うたぐ)っているワケではございませんよ?」


 そんな会話劇に、ハリが介入をしようとしてきていた。


「ですが、やはりここはボクが囮になる作戦の方こそ、現状を解決するのに相応しい案だと思うんですけどねえ?」


 どうやら彼は、いまだに自分の案が却下されたことが気に食わないらしい。

 頭に生えている、黒猫のような耳をイカのヒレのようにペタリ、と下げている。


「また、まだそんなこと()-てはるわ、この人は」


 不満げにしている。

 黒猫のような魔法使いに、ミナモは呆れたような視線だけを送っていた。


「ダーメやって。なんべん言ったら分かってくれるの、ハリ君にそんな無茶はさせないように、うちもエミル君から言付かってるんやって」


 ミナモはハリを説得しようとする。

 そのついでに、自分の側の事情についての理解を相手に求めようとしているようだった。


「ハリ君は曲がりなりにも、うちんとこにとって貴重な魔法使い、戦力だって、エミル君も何度も話しとるんやから」


「エミル……」


 人の名前、他人を意味する名称をルーフは耳に聞いていた。

 名前を聞いた瞬間に、両腕に構えている猟銃、……にとてもよく似た魔法の武器が重さを少しだけ増したような、そんな気がしていた。


「とにかく、しっかりつかまっとらなあかんよ、振り落とされちゃダメやで」


「あ、ああ……分かってるよ」


 いまさら確認するまでもない。

 当たり前の事実に対して、しかしながらルーフはどこか強い違和感を覚えずにはいられないでいる。

 そんな少年に対して、ミナモはさも重要なことを伝えるかのように、声音へ緊張感を注ぎ入れていた。


「ほら、ルーフ君、きみは義足を新調したばかりなんやし、うっかりバランスでも崩してバイクから振り落とされたら、さすがのきみでもフローリングの上にミンチ料理をふるまうことになるで」


「や、やめろよ……やたらと具体的なイメージ図を作らないでくれよ……」


 想像の方向性を嫌悪すべき赤色に染められそうになった。

 ルーフはミナモの言葉を振り払おうとしている。


「そうですね、ミンチは避けたいところです」


 そうしている間に、ミナモは魔法のバイクのエンジンをあたため終えていた。


「さて、進みますか」


「あ、ああ」


「しっかりつかまっとるんやで」


「ああ、分かってるよ」


 ルーフはまだ慣れそうにない、そしてこれから先も慣れることのないであろう、そんな手つきでミナモの腰に腕を回している。

 しっかりと体を密着させた状態で、それを確認した、ミナモがバイクを前進させている。


「そいじゃ、ちょいと囮役に乗じてくるわ」


 そう言って、ミナモは空飛ぶ魔法のバイクを発進させる。


 引力がグウン! とルーフの全身を後ろ向きに引っ張っていった。

 彼ら、主にルーフの体が大きく移動を開始した。

 それに反応を示していたのは、怪物たちの群れの幾つかであった。


「 あx^^\\ ぁぁぁ    ぁぁぁぁぁぁぁァァァ     ぁぁあぁかかかかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 怪物たちの群れ群れが、小さな口を開いて鳴き声を発している。

 ひとつひとつ、それぞれの音は小さいものでしかない。

 だが、小さな音がいくつも重なり合うことで、さながらスポーツ観戦の応援歌のように壮大な存在感を形成させていた。


 アトリエの天井付近、日の光が届かないところ。

 暗闇の中に、天井から吊り下げられているガラス瓶、その内側に詰め込まれている魔力鉱石の数々。

 薄紫であったり、ほのかな青色を帯びている光のいくつか。

 それらに照らされて、何本もの細長い筋が移動しているのが視覚の中に確認することが出来た。


 小さな影は埃やチリのように微かなもので、しかして同時に動きの素早さが触れ難い生き物としての気配を有している。


 ざあざあ、ざあざあ。

 と、柔らかいものが硬いものにぶつかり、はじける音がそこかしこから聞こえてくる。

 おそらく怪物の一匹、それぞれがガラス瓶に衝突をしているのだろう。


「飛ばすで!」


 怪物の群れが接近してきている。

 気配を全身に受け止めているのは、なにもルーフだけに限定されている訳ではなかった。

 ミナモがかけ声を発している。

 それに合わせて、魔法使いたちはそれぞれに身を構えていた。


 ルーフは自分の体をミナモの背中に密着させ、ハリはバイクの後部座席の余分を握りしめている。

 バイクが発進した。

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