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幕あい 読む必要性を感じられない雑用

これらは物語に、

「それで? 何をどうすんだよ。っていうかこれどうやって動かすんだ?」


 少年が魔術的な道具を片手に、魔法使いに質問をした。


 魔法使いが答える。


「動かすのにはまずですね………」


 魔法使いはためらうことなく少年の指に自分の指を添えて、そのまま連動する格好で少年に道具を起動させる。


「おお………! 動いた」


 当たり前の感想を漏らした少年のことを、少年の妹が薄く開かれた瞼の隙間から覗き見ている。


「でしたら、」


 魔法使いが少年との距離を変えぬまま、彼を目的の物体のところまで誘導していく。


「こんな感じの指示を与えてくれませんかね」


 少年は近くにいる魔法使いから与えらえる指示のままに、魔術の道具へ手際よく命令を入力していく。


 魔法使いがその様子を見て少年に問いかける。


「すみません、聞いてもよろしいですか」


「あ? なんだよ」


「いえね、貴方は随分と道具の使い方がうまいので、ちょっと不思議に思っているのですけれど。以前どこかで勉強などをしたんですか?」


 魔法使いからの問いかけに、少年は少しだけ入力の指を濁らせる。


「あー……いや、身内にこういう道具に詳しい人間がいたから、その人に教えてもらったんだ」


 「もらった」の言い方に若干の違和感を感じつつも、


「へえー、そうだったんですか」


 魔法使いはそれ以上の追及をすることなく、少年の言葉を適当に受け入れておいた。


 特に特筆すべき会話も出現しないまま、彼らの間には道具に入力されるコマンドの音と、少し遠くから風に乗って聞こえてくる潮騒だけが静謐に積もっていく。


「よし、よーし? ………よし!」


 少年が確信の持てる形で道具に命令を入力することに成功した。


「これで使えると思うが………」


「おおー!」


 魔法使いが嬉しそうな声を上げる。


「それでは、それをこれにかざしてみてください」


 少年は少しばかりの疑いを抱いたまま、しかし魔法使いの言うとおりに道具を地面に転がされている物体のほうへと向ける。


「それで? あとはどうするんだ」


「どうもこうも、そのままおとなしく待っていれば」



「g8d84、tえddj4」



「え」


 魔法使いの声とかぶる形で聞こえてきた謎の音声に、少年が驚いていると。



「う? うわ、うわっ、うわわわ!」


 少年が持っていた魔術道具が大きく、壊れかけの洗濯機のように激しく振動し始めた。


 そして次の瞬間には道具の紙面から黒い竜巻が、黒文字によって構成されている暗黒の渦巻きが地面に落ちていた肉塊を絡め捕り。


 そしてあっという間に「すぽん」と小さなその体に、人の幼子よりも大きかったはずの死肉を掃除機よろしく吸収してしまったのだった。


「…! ………っ、……」


 瞬きする暇もなく収縮した現実に、少年は別の意味で呼吸が苦しくなりそうだった。


「やっぱり」


 魔法使いがなぜか自信ありげに頷いている。


「君は道具を使うのが上手いですね、うらやましいです」


 いまいち実感の持てない羨望を向けられ、少年は魔法使いにあいまいな視線だけしか送ることができなかった。


 魔法使いが道具を、文庫本の形をしている魔術の道具を閉じる。

関係があったりなかったり。

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