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内なる情熱は自己満足なのか?

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

 魔法使いの少年が好奇心と無関心の狭間にさまよっている。

 それと同じ場所、同じ土地にて、キンシという名の魔法使いの少女は、自分とは異なる少女と遭遇をしていた。


「こんにちは、いえ、もしかしたらもう、こんばんはになるのかしら?」


「どうなんでしょうね」


 少女が疑問を抱いているのに対し、キンシは頭に生えている子猫のような聴覚器官をピクリ、と動かしている。


「日はすっかり暮れてしまいましたよ」


 ありのままの事実を、包み隠すことなく話している。

 キンシの単純な言葉に、きらめく金髪を有している少女は笑顔を返していた。


「そうね、ちょっと前まで室内にこもってたから、時間の感覚がよく分からなくなってるの」


 明るめの青い瞳をひとつ、まばたきしながら少女は自分の具合についてを少しだけ打ち明けている。


 絹糸のように垂れ下がる、手入れの行き届いた髪の毛を指ですくう。

 少女の指先を眺めながら、キンシは時間の経過についてを考えていた。


「思えば、こんな所でずいぶんと長々と、世間話をしてしまいましたね」


 そう言いながら、キンシは視線を周辺に巡らせている。

 魔法使いの少女の、新緑のように鮮やかな色を持った瞳に景色が反射される。


 さして視点を動かすまでもなく、キンシの瞳は一軒の喫茶店を見つけ出している。

 少しだけ休憩をするために、喫茶店の前でたむろをしていた。


「あなたたちは、ここで何をしているのかしら?」

 

 青い瞳の少女に問いかけられた。


「何をしていた、と申しますと」


 簡単なはずの質問に、キンシは答えを返せないでいる。


 やましいこと、とまでは行かずとも、あまりよろしくない行為に参加していた。

 自意識過剰ともとれる感覚が、魔法少女の唇を凝らせていた。


「えっと」


「なに、ちょっとした世間話だよ」


 口籠る魔法少女の言葉を代理していたのは、一台の子供用自転車であった。


「手前の今後について、依頼内容の確認について、それぞれ納得の行くような話へと決着するための大事な、大事な会議なのさ」


 成人した男性の持つ低い音程、普通の人間のそれとよく類似した滑らかさを持つ音声。

 それらは間違いなく、まぎれもなく、子供用自転車の姿をした彼から発せられているものであった。


「あら、そうだったの。お話し中に邪魔しちゃって、悪いわね」


 彼の語った内容に納得をした、青い瞳の少女は気軽な様子で会話に一つのピリオドを打っている。


 平然とした様子で状況を受け入れいてる。

 少女の様子に、キンシは驚愕を覚えずにはいられないでいた。 


「いえ、いいえ、気にすべきことは僕たちにもあります!」 


「あら、なにかしら?」


 青い瞳の少女は、まるで何ごとも無かったかのようにしている。

 再び喫茶店の店内に戻ろうとしている少女を、キンシは動転しながら呼び止めていた。


「き、きき、気にならないんですか?」


「何を?」


「だ、だから、し、喋る自転車さんとか、あ、あとは、僕たちのこと、とか」


 かなり心理状態を荒ぶらせているキンシを、少女は面白いものを見るかのようにしている。


「そうね、まったく気にならないって言えば、それは嘘になるわね」


 少女は口元に笑みをにじませがら、瞳の中に好奇心の色を現している。


「ぜひとも知りたいわ、あなたたちのこと」


 少女のポニーテールにまとめられた髪の毛の房、揺れる毛先、うなじの和毛(にこげ)が雨風に震えている。


「じゃあまず手前から!」


 少女から自己紹介を求められた、声に飛びつくように反応をしていたのは子供用自転車の姿をした彼であった。


「手前の名前はシイニ、リラン・シイニと申します」


 シイニと名乗る子供用自転車の彼は、景気が良さそうにチリン! と鈴をひとつ鳴らしていた。


「シイニさんね。それで、あなたのお名前は?」


 少女はキンシに向けて話しかけている。


「あ、え、えと、僕の名前はキンシ、ナナキ・キンシです」


 キンシは、魔法使いとしての自身の名前を口にしている。

 魔法少女の名前を聞いた、青い瞳の少女は笑みを継続したままで、自らの情報を開示している。


「あたしの名前はモア。アゲハ・モアよ」


「モア、アゲハ」


 伝えられた名前にキンシが違和感を覚えそうになっている。

 だがキンシが感覚を確かに掴むよりも先に、少女の後方から別の声が伸びてきていた。


「私の名前はメイ、カハヅ・メイ」


 モアが視線をキンシからそらしている。

 魔法少女の肩越しに、白い綿毛のような幼女の姿を確認している。


 メイと名乗る幼女は、ふわふわとした羽毛に包まれた細い腕で、自らの左側にたたずむ青年を指し示している。


「この子はトゥーイ、私たちは……そうね、仕事なかまってことになるのかしら」


 真っ白な雪のような羽毛に包まれている。

 

「この子たちは魔法使いで、私は魔女。そして、シイニさんは私たちにお仕事を依頼しにきたお客さま」


 白色の魔女は、落ち着きはらった様子で自分たちに関する情報を簡単に説明していた。


 そうして、その後で白色の魔女は紅色の瞳をモアのほうに固定している。


「……それで? モアちゃん、あなたは何ものなのかしら?」

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