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ゴミ箱の上の自由人な宝物

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

ご感想、とても励みになります、感謝いたします!

 ミッタからの質問に答えたいのは山々であった。

 しかしながら事は、怪物を相手に彼を殺すためのやりとりは、すでに始まってしまっているのである。


 ミナモのバイクのアクセルは彼女の手に握りしめられ、ルーフの体は引力に逆らっている。


 素早く流れる景色。

 その中で、ミッタの囁き声がやたら主張強くルーフの鼓膜を震動させていた。


「な、何だよ……?」


 聞かれた手前、ルーフは彼女の言葉を無視することも出来ずに、ただ返事だけを寄越していた。


「忙しいんだから、手早く済ましてくれないか」


 ルーフが要求している。

 それに対し、ミッタは気安い様子で要求を飲み込んでいる。


「ご主人、おぬしはその武器の使い方をまだ知らぬとみられるな?」


 灰色の幼女、下半身を怪物に喰われたままの彼女に確認をされた。

 ルーフは最初の数秒、質問の意味が理解できずに首をかしげるばかりであった。


「武器の使い方?」


 こんな時に、こんな場面でわざわざそのような事を聞いてくる。

 理由が理解できなかった。


「こんな時に、今更何を聞いて……?」


「まあまあ、何も頭から無下にすることでもないじゃろう」


 ミナモがバイクを操縦し、道の上をとりあえずは適正とされるスピードで走っている。

 そんな最中に、なにやらミッタはルーフに教えなくてはならないことがあるらしかった。


「忙しいんだが?!」


 ルーフが苛立っていると、彼の前方にある運転席に座るミナモが怪しむ素振りを見せていた。


「なになに? どうしたん?」


 ミナモにしてみれば、少年がひとりでにいきなり騒ぎ出したかのようにしか見えていない。

 何かしらの異常事態として判断した、ミナモはバイクの発進を一時停止させている。


「あ、もしかして? ミッタちゃんがなにか言ってきとるん?」


「あ、ああ……そうなんだが……」


 体を引っ張る引力が弱まった。

 ルーフは武器を構え直す暇も無いままに、今はただ与えられた質問に答えるだけで精一杯であった。


「なんか……あいつがこの武器の使い方に文句があるらしくて、な……」


 ルーフは端的に事情を説明している。

 語りながら、少年は不安の事項を手早く彼女に付け付け加える。


「それより……止まって大丈夫なのか?」


「んー? 今のところは大丈夫なんとちゃう?」


 少年が不安がっているのに、ミナモは気楽そうな返事だけをよこしている。


「足とか目が元気なのとは違って、あの敵さんの動きはゆったりと探ってる感じやから……。せやから、メインストリートに出ていくまでには、もうちょっと時間がかかるはずやから……」


 簡単な予想をたてている。

 ミナモの言うとおり、怪物の動きは決して素早いものではなかった。


 やはり視界が不明瞭なのだろう、怪物はその細長い銀色の爪の先端に触れ合せることで、周囲の情報を集めているらしかった。


 ……たしか、昆虫にそういうのがいたような気がする。

 座頭虫(ざとうむし)だったか。

 ルーフは自分の知り得ている情報を再検索しようとしていた。


「それでも、あの大きさのやつが襲ってきたら、普通の車はあの爪にズタズタにされそうだな……」


 決して安心はできない。

 そのことを再確認している、ルーフは不安のなかで武器を握りしめている。


「いまからそのように暗い表情をしてどうする」


 暗い表情のルーフに、発破をかけるような声掛けをミッタが行っている。


「わしのアドバイス通りにやっておけば、おそらくじゃが、この場は乗り切ることが出来よう!」


 ルーフとは相対的に、ミッタは強い確信を持ってこの場面における勝利を確信しているようだった。


「……悩んでいても仕方ねえ……か」


 不安を抱えたままで、それでもルーフは怪物を殺すための手段を、より確かなものにしようと試みている。


「……それで? この武器の正しい使い方ってのは、どういう事なのか教えてくれるのか?」


 ルーフは腕の中にある武器を見下ろしている。

 古い型のボルトアクション式ライフル、にとてもよく似た魔法の武器。


 銃に似たそれを、ルーフとミッタの瞳が見つめている。


「もちろん、わしが知っている情報はすべて教えるつもりじゃよ?」


 武器をその灰色に輝く瞳に映す。

 ミッタの目は静かなる()る気に満ち満ちていた。


「なに、難しいことなどなにも無い……引き金を引くときに……じゃ」


 バイクのエンジン音が響き渡る。

 彼らの限定された空間の中に、灰色の幼女の囁き声が少年の耳元に届けられていた。


 話を聞く。


「…………」


 聞いた。

 その後に、ルーフは少し意外そうな様子でミッタの顔を見つめている。


「そんなんで、いいのか?」


「おう、これだけの用意をしておけば、おおよそお主の素質だけで誤魔化すことが出来よう!」


「誤魔化すって……」


 少しでも多くの安心を得ようとした、ルーフは幼女の言い方に不満げな様子をみせている。


「本当に、大丈夫なのか……」


 不安ばかりを抱いている。

 少年の表情とはまったく異なり、彼女たちはいよいよ怪物を殺すための準備を整え終えているようだった。


「それじゃあ、その手順で一発かましてみようや!」


 ミナモがアクセルを握りしめる。

 

「まずは、下準備じゃの」


 バイクが再び発信をしているのを確認した。

 ミッタが体を大きくひらめかせようとした。

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