タイトルなんていつでもいいのに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
ご覧になってくださり、ありがとうございます。
もしよろしければ、ブックマークなどをしてくださると嬉しいです。
てっきりハンカチかタオル、その他の布でも手渡されたものだと、ルーフはそう思い込んでいた。
まだ体には大量の異物感が残っている。
喉の奥から競り上がってくる感覚は、百本にまとめられた針で刺突されているようだった
痛みにも等しい拒絶
反応は瞬間的に、ルーフからまともな思考能力を奪いさっていった。
何も考えられそうにない。
だから、ルーフは素直にミッタから差し出された布に手をとっていた。
ゴシゴシ、ゴシ。
鼻水や唾液の他、視界を遮る涙を拭き取る。
慌てたいた手前、ルールは違和感に気づくのに少しの遅れをとった。
異変に気づき始める。
その頃合いになってから、狙いすましたかのように、ミッタがルーフに注意をしている。
「ああ、これご主人、そんなに引っ張ったら……」
何が起きるというのだろう。
その答えはルーフの目の前にあった。
「……って! お前の服じゃねえか!」
あろうことか、ミッタは自らが着用しているワンピース、その裾をハンカチ代わりにしていた。
幼女の着用している服、そのにおいがルーフの鼻腔の奥に、記録として残されてしまう。
「手頃な布野が見つからんかったからの、ここから少々拝借したのじゃ」
なにも悪びれる様子もなく、ミッタは淡々と笑顔だけをルーフに向けている。
ワンピースの裾をつかんだまま。
ルーフの視線は布の下側に、自然と、抗いようもなく布の下側屁と吸い込まれていった。
見た。
そしてルーフは驚く。
「……なあミッタ」
「ん? なんじゃ?」
「お前……お前パンツは?」
なんということか、ミッタはワンピースの下に、何も身に付けていないようであった。
下着も身に付けていない、裸の表面が白く滑らかに、ルーフの瞳に映っている
両の目玉を丸く見開いている。
そんなルーフに向けて、 ミッタはなんてことも無さそうに、ただ淡々と受け答えるだけであった。
「下着? おお、そういえば着けておらんかったの」
たった今、まさにその事実に気づいたと言わんばかりの様子。
呆然としている、ルーフを前にミッタは衣服の裾をつまみ上げている。
「ご主人の矮小でカチコチの未熟な魔力回路じゃと、必要最低限の上着しか用意できそうにないわい」
ミッタは口でこそ、残念がるような雰囲気を作ろうとしている。
だがその実、ノーパンであることに関して、とりたてて問題になどしていないこと。
「いやいやいや……」
そのことが、ルーフにはどうしても理解できてしまえて仕方がなかった。
「いやいやいや……!? いいや?!!」
「はい」だとか「YES」だと、そう答えそうになる唇をルーフは懸命に抑制する必要にかられていた。
「い、イイわけないだろ?! そ、そんな……嫁入り前の女がびらびらと……?」
「びらびら?」
ミッタはルーフの慌てぶりをじっくり眺め回しながら、その指はあいかわらずワンピースの裾を、ヒラヒラとひらめかせている。
布の下に見え隠れする。
陰部にはほとんど体毛が生えていない、人形のそれと大差ない平坦さとなめらかさしかなかった。
肉と皮の下、骨格の間にある生殖器。
それは人間のものと大差なく、ルーフは頭のなかに妹の裸を思い出していた。
あれはいつの事だったか。
まだ故郷で暮らしていたとき、ルーフはよく妹を風呂にいれてやった。
そのときに見たものと、たった今、現在に見ているそれ。
それらは、似ているようで全く異なるものだった。
何が違うのかというと、具体的に答えるための言葉は、今のルーフには用意できそうになかった。
あるいは過去のルーフの方こそ、よっぽど明確な説明をする事が出来たのかもしれない。
訳がわからなくなるほどに、理解不能な時間だけが、ただただ部屋のなかに引き伸ばされていった。
沈黙がどれ程の長さまで続いたのか。
残念ながら、計測するための時計を持ち合わせていない二人には、預かり知らぬことでしかなかった。
少なくとも三十秒は、互いに姿勢を崩さないままでいた。
「なにしとん?」
ルーフにとっては永遠の事のように思えて仕方がなかった。
だが実際にはミナモがひとり、家の物置から物品を取り出してくる、その程度の時間しか経過していなかったらしい。
家の中にある、ごくごく狭い空間。
隙間を利用して物置にしていた。
そこからミナモは、謎の容器を持ち出してきていた。
しかし、彼女の目線は容器の内容物よりも、目の前に広がっている光景に釘付けとなっていた。
ミナモの、濃い麦茶のような色をした瞳が凝視している。
彼女の視線の先にて、ルーフは慌てて弁明をしようとした。
「…………ッ!」
だが発しかけた言葉は、硬直した筋肉に行く手を阻まれてしまっていた。
なにを説明したらよいのか?
端から見れば自分は、自分達は下半身を意味もなく露出している集団、その一派でしかない。
つまりは、要するに自分は幼女の下半身を、集中して見つめ続ける。
いわゆるところの、変質者としか表現できそうにない。
己の状態を、ルーフは嫌に冷静そうな思考にて、判決を下していた。
そんな風にして、ルーフが黙っている。
すると、先に彼女の方から言葉をかけられていた。




