表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

784/1412

絶縁の詩しか書かない

こんばんは。こんにちは。おはようございます。

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

ぜひともブックマークをしてくださると、励みになります。

「そうそう、そう!」


 ルーフが考えた予想に対して、ミナモははっきりとした喜びを表している。


「その通り、それぞれの魔力がぶつからないように、接触を遮断するための素材が必要になるんよ」


 ミナモは下着姿のままで、おもむろに立ち上がった

 下着の布地に密着している、胸元の柔らかさが、ルーフの視界のなかで上昇していった。


 ルーフがほぼ無意識のうちに見つめている。

 少年の視線の先にて、ミナモは胸元あたりで腕を組んでいた。


「モアさんの……じゃなくて」


 言いかけた声を、滑らかな動作にて言い直す。


「今はもう、ルーフ君の右足ってことになるんやね」


 誰が何を所持しているのかについて。

 ミナモはその点を、不自然なまでにきっちりと対立させようとしていた。


「そうなると……絶縁体意外にも、色々と必要になってきそうやねえ」


 ミナモはひとりブツブツと、誰に対してでもなく、これからの行動についてを予定し始めている。


「そのためには、この場所にある分の魔力鉱物だと足りへんかな?」


 自分自身に問答をすると同時に、ミナモの体が作業場のなか移動し始めていた。


「…………?」


 下着姿の女が、ゆらりゆらりと部屋のなかをさまよっている。


 パンツから伸びる右足。

 少女のそれと異なる、臀部の柔らかそうな膨らみが、パンツの裾からかすかに見え隠れしている。


 日焼けのない滑らかな肌、薄い影の下に伸びる白い足。

 何の欠落も見られない、彼女の右足にルーフは視線を落としている。


 とりたてて特別な理由などない。強いて言えば、人間の健康な右足というのは、あんな形をしていたこと。

 そのことを思い出そうとしていた。


「はふぃー、よい茶じゃったわ」


 ルーフがぼんやりと無意識の海にたゆたっていた。

 その右隣から、ミッタの満足げな声が聞こえてきた。


 声のする方に視線を向けると、ミッタはあいかわらずその身を部屋のなかに漂わせていた。


 腰のあたりまで伸びさらしている灰色の髪。

 重力の通っていない、毛先たちはそれぞれ勝手な方向に揺らめいている。


 しかしながら乱れることもなく、あくまでもミッタの一部分としての機能を持ち合わせる。

 ルーフはその動きに、海中のワカメを連想していた。


 後ろ髪とほぼ同じ長さの前髪をかき分ける。

 絹糸のように細やかな髪の毛の隙間、ミッタの丸い瞳がルーフのことを見つめている。


 ティーカップの中身をすべて飲みほした。

 ミッタの唇、ドールのように整っている、逆に言えば整合性がとれすぎている。

 人間の唇と表現するには、あまりにも完成度が高すぎる。


 均一化された唇が、ティーカップの縁から離れていく。

 薄くにじむ紅色のそれが、満たされた水分のなかでルーフに語りかけている。


「この茶は実に、実に美味じゃったぞ、なあ? ご主人」


「あー、そう……だな」


 最初の淹れたてからほとんど量の減っていない、まだたっぷりと紅茶が残っているティーカップ。


 ルーフの指先に伝わるかすかな振動。

それに合わせて、カップの中身も紅色の波をいくつも小さく発生させている。


小さく震えている。

少年の手元を見下ろしながら、ミッタは彼に探るような声で語りかけていた。


「どうしたご主人? はよお飲まんと、せっかくの紅茶が冷めてしまうぞ?」


「あ、ああ、そうだな」


ミッタから指摘された。

その時点にて、ルーフは手元の飲料を思い出しているようであった。


ミッタに飲むように言われた。

催促とは言わず、当然強制や命令を下したわけでもない。


にもかかわらず、ルーフはまるで誰かに体を羽交い締めにされているかのような、そんなぎこちなさで茶を口に含んでいる。


がっぷりと一度に大量の紅茶、しかもある程度の温度が残ったままのそれを喉の奥に押し流した。


「熱ッッ??! あっつうッッッ!!!」


許容範囲を越えた温度の侵入に、ルーフの体が強烈な拒絶反応を暴れさせている。


急いで口のなかの異物、つまりは熱の塊をどこかに移さなくては。


背中を丸めて、ルーフは熱の塊を飲み込んだ。


これで口のなかの熱さをやり過ごすことが出来る。

そう思っていた、しかして次の瞬間には別の問題点が発生した。


「う……ゲホッ! ゲホゴホッッ!!!」


慌てて飲んでしまった弊害なのだろう、胃のなかに逃げるはずの紅茶が、ルーフの気管に侵入してきていた。


非常に攻撃的な侵入に、ルーフはなす術もなく身体を悶絶させている。


苦しみ悶えている。

そんなルーフに、ミッタは呆れたような声音で心配だけをしている。


「おうおう、だいじょうぶか? ご主人よ」


「ケホッ……ケホッ……。あ、ああ……すまない」


「謝るようなことでも無かろう」


ルーフの謝罪文に呆れていながら、ミッタは彼の現状を回復させるための方法を模索している。


とりあえず唾液と鼻水等々、様々な体液でグジュグジュになってしまっている顔面をどうにかしなくては。


布で吹いた方がよい。

手頃な布はどこにあるか?


ミッタはその答えをすぐに見つけていた。


用意された布を、ルーフに差し出している。


「ほれ、ご主人、これで顔を拭くがよい」


幼女から、布が差し出される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ