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青い瞳に思い出せばまた見える

こんばんは。おはようございます。こんにちは。

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

ブックマーク、ポイント評価、ご感想、心より感謝いたします!

 互いに口の中に紅茶を含み、その香りを楽しむ。

 最中において、ミッタが呪いについての話を再開していた。


「ところでご主人、おぬし……今、祖父のことについて思い出していたじゃろう?」


 ミッタにいきなり指摘をされた、ルーフは驚きの代わりに目を少しだけ見開いている。

 言葉の上に直接表現するまでもなく、同意を示すのに十分な仕草を作ってみせている。


 そんな少年に対して、ミッタは畳み掛けるように追及の手を伸ばし続けていた。


「どうやらおぬしの思考は、主従関係を結んでいるわしの心理に、直接的な影響をもたらしているようじゃの」


 なにやら専門的な話をしている。

 ルーフがそれに理解を示すよりも先に、ミッタはなにか面白げなものを見るかのような視線を少年に送っていた。


「やれやれ、見目麗しきおなごが二人も近くにいるというのに、おぬしの頭の中にはしわがれた老いぼれジジイの事しか見えておらんときた」


 信じ難い状況、しかしてミッタはそれを愉快なものとして受け取るようにしている。


 灰色の髪のをなびかせる、幼女に指摘をされた。

 ルーフは彼女の言葉に、反射的な反論を発しようとした。


「別に……そんなことは……?」


 しかし反論をしようとした所で、彼女から指摘された事柄があながち間違っていないことに、ただただ困惑するばかりであった。


「お話している最中、ちょっと失礼するんやけど」


 ルーフが反論の言葉を考えようとしている。

 その最中に、ミナモが作業について相談事をしていた。


「おう、勝手に進めておくがよい」


「了解したわあー。さーて、点検点検♪」


 やりとりはそれだけで終わった。


「……あの、俺への経由無しに、勝手に話進めないでくれないか?」


 ルーフはようやく一つの反論をしていた。

 だが、少年の主張は彼女らに何の影響ももたらさなかった。


 ミナモは下着姿のままでルーフの前に屈みこみ、少年の右足に組み込まれている義足の様子を調べている。


 ほぼ半裸の女に体を探られている。

 その状況に、今更拒絶感を抱くまでもなく、ルーフは場面を誤魔化すように紅茶をもうひとくち唇の中に含んだ。


「さて、右目の呪いに関してなんじゃが」


 ミッタは右の手にティーカップを携えたまま、ふわふわと浮遊しながらルーフに呪いについての話をしている。


「どのような症状が出ているかどうか、簡単に説明するとしたら、視力が異常に向上していると考えらえるの」


 ミッタはゆったりとした動作で、右手の紅茶を口に含む。


 優雅そうに見えるその動作が、実のところは魔力を大量に消費して行われている動作であること。

 その事実を知っていると、ルーフは途端に目の前の幼女に悲しみのような感情を抱きそうになっていた。


「既にいくつか実感を覚えておるのではないか?」


「そう……なんだろうか?」


 ミッタに指摘をされた、ルーフは新鮮味が濃厚に残る感覚を思い出している。


「その能力を、活かせる武器をご主人、おぬしはすでに手元に持っているではないか」


 ミッタが視線で誘導をしようとしている。

 灰のような色を持つ瞳に見つめられている。


「…………」


 その先で、ルーフは幼女に導かれるままに、右の手を上にかざしていた。


 少しだけ呼吸をする、酸素と共に空気中に含まれている灰が、ルーフの体内を循環した。


 魔力の反応、かすかな光の揺らめきは蛍の輝きに類似している。

 藍色の光の後に、ルーフは手元に一丁の銃を発現させていた。


「あらあら、懐かしいものがでてきたわね」


 猟に使う狙撃銃によく似た武器を見た、ミナモが作業を中断して感想をこぼしていた。


「それ、エミル君が昔使っていたものじゃない」


 ミナモにそう指摘をされた。

 ルーフはそれに沈黙のまま、首を微かに上下するだけの動作で同意を表していた。


 アゲハ・エミル。

 ミナモの夫であり、現状古城に協力関係を結んでいる魔術師の一人。


 彼から受け取った、それは魔力を弾丸として撃ち出すタイプの銃であった。


「使い方もろくに知らないんだよな」


 ルーフはそうぼやいている。

 少年が不満そうにしている。それに対してミッタが、なぐさめるような声音を使ってみせていた。


「練習はしておるのじゃろ?」


「そりゃあ、まあ……」


 生まれて初めてもらった魔法の武器に、ルーフは毎朝イメージトレーニングを重ねていた。

 隠していた事実であり、ルーフは途端に恥ずかしさに顔を上気させている。


「そんな、わざわざ言わないでくれよ」


「おや、わしに隠し事は通用しないぞ?」


「そりゃあ、そうなんだろうが」


 自分とこの幼女は一心同体である。

 今更になって、その事実がルーフの胸を微かに圧迫しようとしていた。


「あらあら、可愛いことしてるやんか」


 暴かれた秘密に対して、ミナモがおかしそうな様子をみせていた。


「そんなヤル気のある若者であるルーフ君に、ひとつ、提案があるんやけど……」


「……え? な、なんだよ……」


 ミナモの意味深な様子に、ルーフは先んじて恐怖心のようなものを抱きつつあった。


 ルーフの、琥珀色をした左目と瑠璃色の右目が不安げに見つめている。

 その先で、ミナモは少年に提案をしていた。

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