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浮かんでは消える過去たちよ

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

 呪いを受けた肉体をぶら下げながら、キンシは独り言のようなことを呟いている。


「この呪いと共に生きることになって、もう何年くらいになるんでしょうかね」


「おや、そんなに年期の含んだものなのかね?」


 キンシが勝っている様子に、シイニが少しだけ意外そうな声を発していた。


「見たところだと、まだ呪いを受けてそんなに日にちが経っていないような。そんな具合だと、てっきり、手前なんかはそんな風に見受けられたんだがね」


 シイニが目測を語っている。

 子供用自転車の姿をしている、彼に予測をされたキンシが、すかさず反論のようなものを用意していた。


「いえいえ、そんなことは無いんですよ? もうかれこれ三年以上は、この厄介な呪いと共に生活を余儀なくされていて、でしてですね」


「年月のことは、いまはどうでもいいのよ」


 魔法使いの少女が持論を展開させようとしていた。

 だがそれよりも先に、メイの方が己の木になる事項を優先させていた。


「けっきょくのところ、その……呪いって、どういった状態のことをお話ししているのかしら? 私は、そこが気になってしかたがないのよ」


 幼い魔女が気にしている事項に、キンシは特に迷いも無く、速やかな回答を言葉の上に用意していた。


「呪いって言うのは、ですね、要約するとしたら病気の一種みたいなものなんです」


「病気」


「ええ、そうですお嬢さん。風邪とか水疱瘡だとか、そういった症状と同じようなものだと考えてくだされば、この後の話題も大体ご理解いただけるかと」


「と、いうと……ウイルスが関係してくるのかしら?」


「……え?」


 メイからの意見に対して、キンシは早速戸惑った様子をみせてしまっていた。


「だって、キンシちゃん」


 眼鏡の奥の瞳孔を丸く広げている。

 魔法少女に対して、メイが追及の手を伸ばし続けていた。


「その例え話だと、呪いは外部からののしんにゅうしゃ、ウイルスで起きるびょうきってことに、なっちゃうわよ」


「おやおや、さっそく言葉の隙を突かれているじゃないか」


 幼い魔女からの追及に対して、キンシが何も言えなくなっている。


 その様子に、シイニが呆れたような声を発していた。


「駄目じゃないか、仮にも魔法使いを自称するというなら、これしきの舌戦で油断をみせちゃあいけないよ」


 キンシの不甲斐なさに対して、シイニが己の持論を語ろうとしていた。


 しかしながらメイにしてみれば、子供用自転車の彼が語ろうとしている内容も等しく、同じくどうでもいいものでしかなかった。


 そして魔女の抱いた感想は、彼にも十分理解できている内容でもあった。


「分かってる、分かってるよ。呪いについての話をしてほしいんだろ? そんな急かさなくても、もう少し前戯ってものを……──」


 シイニが語ろうとした内容を、彼がすべてを言い終えるよりも先に、阻む腕が存在していた。


「大人の優しい検閲」


 電子音を含んだ青年の声と同時に、シイニの体が地面から離れていた。 


「え?」


 彼が状況を全て理解するよりも先に、トゥーイの腕が彼の体を高く、高く持ち上げていた。


「うわーっ?!」


 突然星の重力と別れを告げさせられた。

 シイニは、ただ驚くばかりにトゥーイの腕のなかで宙ぶらりんになっていた。


「いきなり何すんだーっ?!」


 子供用自転車の彼を軽々と抱え上げている。

 青年の行動に驚いているのは彼だけではなかった。


「トゥーイさん?!」


 片腕だけでシイニの体を抱え、掲げている。

 青年の行動に、キンシが一驚の声を発していた。


「何をしているんですか? 可哀想だから降ろしてあげてください!」


 キンシがもっともらしい注意を彼に主張している。

 

 しかしながら、魔法少女の意見は今のところは青年に通用する気配を有していなかった。


「拒否します」


 ただそれだけの事を主張している。

 トゥーイはキンシの言葉を無視しながら、シイニの体を片手で抱え続けていた。


「何をするんだ、キミは?!」


 トゥーイの右腕に抱え上げられたままの格好で、シイニは彼の行動の理由を考えようとしている。


「降ろしてくれ、お願いだ、いや……別にこの体で傷つけられても困ることなんて何も無いんだが」


 青年の行動の理由を考える最中(さいちゅう)にて、シイニは自らの状況を再確認している。


「うん? うん……この体なら、たとえビルの三階から突き落とされたって、少なくとも命には何の問題も無いんだけどね」


「へえ! そうなんですか」


 子供用自転車の姿をしている、彼から新たに告げられた事実にキンシが驚いている。


 魔法少女の反応を視界の下に認めた。

 シイニは抑えきれないように、自分の状況についてを一つ明かしている。


「この体、このボディーは仮初の姿でしかないからね。外壁をちょっとぐらい傷つけられたとしても、本体である手前の意識は多分、おそらく……! 守られ続けるんだろうな」


 子供用自転車の姿をした彼がそう語っている。


 彼の言葉を聞いた、メイは疑問を一つ抱いている。


「と、いうことは……そとがわをグチャグチャにすれば、おくのものも表面に出てきてくれるのかしら?」

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