表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

711/1412

そのまま深夜のコンビニに行こう

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

ブックマークなどなど、応援の気持ちがとても嬉しいです!

 先手必勝。なる戦略を心のの底から信じきっているかのように、キンシはその体を空間のひずみに向けて飛び立たせていた。


 空を飛んでいる、と表現すればそれまでの話。しかしながら、ナナキ・キンシという名の魔法使いが使うそれは、一般的な飛行能力とは幾らか毛色を異ならせているモノであった。


 飛んでいるのではなく、突進しているかのようである。引力が働いている、それは当人の定めた方角に落ちていっている、と表現するに相応しい激しさであった。


 星の重力とは異なる方向に落ちる、それがキンシの使う魔法の主な種類、種別であった。

 その鮮やかな緑色をした右目が見ている方向、場所に向かって落ちていく。


 傍から見れば異様に高く跳躍をしたかのように見える。

 キンシは己の定めた方向、つまりは怪物の肉がぶら下がっている場所に向かって、真っ直ぐ落ちていった。


 魔法を使いながら、重力に身をあずけつつキンシは空中にて体を構えている。

 落ちている途中にて、体をまるく、うずくまるようにしている。


 屈折した体を、虚空のなかで一気に開放する。

 激しく、熱した油の中にコップ一杯の水をぶち込むかのような激しさで、キンシは右の足をまっすぐ解き放っていた。


 放たれた右足の蹴りが、空間のひずみ、そこからこぼれかけていた怪物の肉に炸裂していた。


「pきゃ、あーq¥あぁぁー、ぁ」


 水風船を踏み潰したかのような、ささいな破裂音のような音。

 それが聞こえた後には、すでに怪物の体は空間のひずみから引きずり出されている後の事であった。


「キンシちゃん!」


 地面から少し離れた所、都市の空にて展開された攻撃。

 メイが上に漂う魔法少女の名を叫びながら、目線はそれよりも吹き飛ばされた怪物の方に向けられようとしている。


 両手に拳銃のような武器を構えながら、メイは蹴り技によってとばされたであろう、怪物の肉をその目に検索しようとしている。


 蹴り飛ばされた、怪物は空間のひずみからさして離れていない場所に漂っていた。

 キンシの繰り出した蹴り技の勢いの割には、あまり長くない距離の内に留まっている。


 それはひとえに、怪物そのものが意志をもって魔法少女の攻撃をその身に受け入れいた、事実に変わりはなかった。


 戦闘に参加できる分の意思を確認した。

 途端にキンシの肉体の奥、臓物の隙間、隠されるべき内側からむくむくと喜びの熱が盛り上がってきていた。


「戦える、戦いが用意できますね!」


 相手の先頭の意思を確認している。


「さあ戦いましょう! 血を削って、肉を膨らます、戦いをしましょう!」


 そうった旨の報告を、キンシは自らに丁寧に言い聞かせるように言葉にしていた。


「よろこんでいる場合じゃないわよ! キンシちゃん!」


 武器の照準を整えながら、メイは虚空に漂う魔法少女に指示のようなものを出している。


「ゆだんしないで……つぎの行動にそなえて……!」


 幼い魔女に言われるまでもなく、キンシは漂う体を怪物のいる方角に向けて固定しようとしている。

 少女が動作をしている、その間に怪物は空気の中に体を馴染ませようとしていた。


 あらわになった、怪物の全体はまるで風船のような丸みを形成していた。

 マシュマロを彷彿させるフォルムは、ブニブニと柔らかさを主張している。

 しかしながら、同時に同時に肉のずっしりとした質量を感じさせる。


 あれに体当たりをされたら、かなり痛そうである。

 メイがそんなことを考えていると、まさに怪物の方でも想像したかのような攻撃方法を選んでいた。


「あー AAAぁぁぁあああー」


 口らしきものは見当たらない。だが怪物は確かに存在する口元から、叫び声のような鳴き声を発している。

 叫びながら、怪物は自らをこの世界に蹴り出したモノ、つまりはキンシに向けて攻撃をしようとしていた。


 突進してくる怪物を、キンシは紙一重で回避している。


「おっと! 危ない」


 ビュウウッと風が掻き乱される音が、キンシの子猫のような聴覚器官のおく、鼓膜を震動させていた。


「なかなかにパワフルですね」


 怪物の動きに対して、キンシはその様に評価を口にしている。

 口では調子の良さそうな言葉を選んではいるが、その内心は新たに生まれつつある不安が増幅の気配を色濃くしていた。


「手も足も、ヒレのようなものも無いというのに、どうやって空気中の移動を可能にしているのでしょうね」


 問いかけている、少女の言葉に返事を寄越す声は無かった。

 彼女が把握しているように、怪物の体には推進力を期待できそうな物は存在していなかった。


 マシュマロのように丸みを帯びている肉体。

 ただ漂っているだけならば、まるで街灯を彩るアドバルーンのような微笑ましさすら感じさせる。


 動きがほとんど感じられない、まるで見えない風に操られているかのような、怪物の体が再び突進をしている。


 何の予備動作も無い、直進はまさに唐突そのものであった。

 接近に気付くことができなかった、キンシの体が怪物と激しく衝突をしている。


「うぐっ!」


 胸元に衝撃を受けた、キンシの体が空中のなかで跳ね飛ばされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ