彼の提案するところによれば
響き、
二人の子供に心配のこもった視線を向けられて、幼子は何かを言おうとして、
「ンふー、ンふー(p‐q)」
しかし苦しげな吐息だけしか伝えることが出来ず、目尻に悔しげな涙が目尻にたまり、柔らかい皮膚の上を落とすだけだった。
ルーフは心の奥に気になることが出来ていた。
この幼子は確かに読んで字の如く幼くて、それこそ妹よりも若い年齢に見える。
しかし、それにしては………。
「うゥ………ゥ(;@p@)」
ルーフの他人事じみた不安を助長するかのように、幼子は言葉を発することが出来ず只々苦しげな表情を浮かべるばかりだった。
「ルーフ君」
背後から不意に男性に話しかけられて、ルーフは大げさともとれる挙動で驚いてしまう。
振り返るとヒエオラと言う名の店長がルーフに何かを差し出していた。
「よかったら、コレ使ってよ」
それは濡れた布、紙製ではない方の濡れ布巾だった。
「掃除用に使う奴だけれど、まだ新品で一度も使ってないからとりあえず汚くはないよ」
彼の主張する通り、冷たい水をたっぷり含んだ布は工場からそのまま直送したかのように繊維が強く柔らかそうに自己主張している。
「あ、どうもっす」
ルーフは店長に簡単な礼を伝え、じっとりと重い布を受け取る。
そして素早い手つきで幼子の皮膚に滲む不快そうな汗を素早く拭い取った。
幼子は気持ちよさそうに瞼を閉じて布の冷たさを受け入れた。
外気の刺激によって粘液を侵出し始めている鼻腔が、空になりかけのマヨネーズみたいな音をプキプキと奏でている。
「うーん………。顔色、良くなりませんね」
ルーフと同様に濡れ布巾を受け取り、それを幼子の首筋に挟み込みながらキンシは表情の陰りをさらに増す。
「………、そうだな」
ルーフは心ここに非ずと言った感じでキンシに返事だけをする。
「どうしましょう、こういう時ってやっぱり病院に連絡するべきです、よね?」
ルーフの返答を待つこともなく、キンシは自分に出来うる相応しい対応を急いで模索しようと思索を巡らせる。
「携帯、ちょっと待ってください………、今スマフォを───」
携帯端末を探すために左手を動かそうとしたキンシ。
しかし、魔法使いが電話機器を取りだすより先に、
「いや、待て」
水道の水と幼子の汗を含んだ布を握りしめているルーフが短く制止の声を発した。
「スマホを使う必要はない」
「え?」
またしても行動を阻止されたキンシは、戸惑いを隠し切れないでいた。
「必要はないって、でも病院で見てもらわないと、これはちょっと危険でヤバめな感じですよ」
魔法使いの言うことはもっともであった。
「僕とトゥーさんには医療も、医療魔法の技術も持ち合わせいません。こうやって汗を拭うことしか、僕等に出来ることは───」
キンシはそこで言葉を区切る。
「仮面君?」
そしてルーフの、仮面の下の瞳をうかがった。
「もしかして、」
渡ります。




