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後ろに手が回る悪いことをしよう

 とりあえずミナモは、自前で用意できる対策を探しにいったようだった。


「対スライム用の結界が余っていたかもしれへんから、ちょい探してくるわー」


 そう言い残して、ミナモは浴室の外側、自宅の中へ捜索の手を伸ばしていった。


 さて、浴室に残された彼らの行動である。

 モアという名の少女が、引き続き一糸まとわぬ姿でルーフに提案をしていた。


「そうだ、ちょうどいいからルーフ君、このスライムたちを追い払っちゃえばいいのよ」


「何て?」


 さも妙案かのように提案をしている。

 しかしながらルーフは、少女が自分になにを期待しているのか、理解しがたい状況におかれていた。


 ルーフが意味不明に苛まれている。

 その間にも、風呂場に発言したスライムたちはその影響力、次々と現実に増幅させ続けていた。


 具体的にどのような状態であるのか、説明するためには視点を風呂場の天井に移す必要がある。

 移動させた、その先ではどうにもこうにも認めがたい光景が広がりを見せていた。


「そんなことよりも、ほら、見てちょうだいルーフ君」


 モアが、自分の裸体よりも重要な事柄があると言わんばかりに、ルーフの顔へと指を伸ばしていた。

 拒絶をするよりも先に、ルーフは少女の指の圧力に誘導されるようにして、顔の方向ごと視線を風呂場の天井に移動させられていた。


 見させられた。

 確かにそこには、どうにも認めがたいような光景が広がっていた。


「天井に、緑色のスライムがビッシリと……」


「ええ、形も相まってキュウリの群体のようね」


「ああ、鈴なりだな」


 そんな会話をしている。

 モアのほうは平常心であり、そして当然のごとくルーフは自らの肌に触れている温度、湿り気を意識しないようにするので精いっぱいであった。


 ルーフがそれ見たことを確認した、

 モアが引き続き彼に提案をしている。


「せっかくだから、リハビリついでにあの怪物さんを倒しちゃましょうよ」


「だから、何でだよ」


 ルーフとしてはなんの工夫もなく、ただひたすらに純粋な疑問点だけで唇を動かしていた。

 言っている意味が分からなかった。あの怪物に対して、自分が一体どのような行為を期待されているというのだろうか?


 訳が分からなくなっている。

 ルーフに、モアはさらなる提案を畳みかけていた。


「ああ、そうか、そうよね」


 ひとりで納得をする素振りを見せる。

 勝手に納得をした、その後にモアは自らの右足に指をかけている。


「かたっぽしかないのなら、キミだって困っちゃうわよね」


 そういいながら、モアは自らの右足を根元から外していた。

 やり方は実に簡単だった。まるで十分に熟れたバナナを房から一本もぎ取るかのように、モアは自らの右足を根元のあたりからちぎり取っていた。


「これを……」


 摘出した足の一本を、モアはちょっとした便利な道具でも貸し出すかのようにして、ルーフに差し出していた。


「これを使えばいいわ」


「使う」


 状況、光景に理解が置いてけぼりを食らわされ続けている。

 ルーフの意識よりも先に、モアは自らの肉体から切り離した一本をルーフの体にあてがっていた。


「ほら、ここを……こうして……」


 再び少女の裸体がルーフに密着をしている。

 乳房、白さが輝くおっぱいが、胴体の動きに合わせて小さく柔らかフルリ、と揺れていた。


 小さな、手のひらに少しだけ余る程度の肉、あんまんのような形をした肉の欠片の震えにルーフがみとれている。


 その間にも、モアはルーフの身に着けている衣服、ズボンのあたりをゴソゴソとまさぐっていた。


「えーっと? このあたりで大丈夫そうね」


 壊れた機械、あるいは単純な道具でも直すかのような、そんな気軽さでモアは自らの右足をルーフの空白に埋め込んでいた。


 少年と少女が互いの欠落をごまかしあっている。

 その間に、エミルは敵の正体にある程度の目途をつけていた。


「この位なら、ちょっと脅すだけで充分そうだな」


 敵の度合いを目測しながら、エミルは右腕を空間にかざしている。

 呼吸を繰り返す、心の中で武器のイメージを作り出す。


 若い魔術師が想像力を動かした。

 行為に反応して、ルーフの車椅子が転がっているあたりから、変化の気配が発生していた。


 車椅子に備え付けてあった袋、そこからエミルの使用する武器が持ち主のもとに戻されていたのである。

 光がかすかに生まれた、そのすぐ後にエミルの腕には一丁の猟銃が握りしめられていた。


「さて、と」


 エミルは銃を構えながら、引き金に指をひっかけている。

 呼吸をさらに整える、魔力の調整を頭の中に意識した。


 銃口から光が放たれる。

 それと同時に、風呂場の天井に生っていたスライムの群れが散り散りになっていた。


「よし、こんなもんかな」


 場面から怪物の存在を追い出した。

 エミルはとりあえずの安心感に、溜息のようなものを口から吐き出している。


 一つの作業を魔術師が終えた。

 エミルが視線を天井から床のほうへと戻している。


 そこでは、怪物の他にも一つの決定機な変化が訪れていた。


「おやおや」


 エミルが、若い魔術師が少年の変化に驚いていた。


「なかなかに、似合っているんじゃないか?」

ご覧になってくださりありがとうございます!

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