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ドッカーン!

周囲は常にそれなりに気にするべきだった。

 やると決めたからには、しっかりがっつりやりこもう! これはキンシが現時点で作り上げ、あらゆる反対を押し切って決定したモットーであった。

 そんなものを作ってしまうほど、キンシの気分は苔むした巨大岩石のように動くことを拒んでいた。

 それでも若者は進む、いまだに勢いを止めることのない争いの中に、真っ直ぐ近付いていく。

 気配を感じ取られてもおかしくない程の距離になっても、男性たちはキンシの存在に気付くそぶりを見せなかった。それほどまでに目の前の敵に夢中になってしまっているのだ。

 

 さてどうしたものか、どうしてくれようか。一向に自分に気付こうとしない愚か者どもを、キンシはとりあえず白けた目で見つめてみた。

 [綿々]店内には今の所、いつも通りに客がほとんどいない。

 となれば、とキンシは決意する。

 息を大きく吸い込み。

「おうおうおう、おーう? そこのアベレージなグットルッキングガイ共! いいかげんにしてくれませんかね!」

 ドカン、と一つ大きな地団太を踏んで、男性たちの視線を自分の方へ向ける。

「これ以上大声出したら、その代わりと言ってはなんですが、僕の拳が唸り声をあげちゃいますよ?」

 なんじゃそりゃ、カウンターの中から様子をうかがっていた店長は早くも後悔を心の内に芽生えさせていた。

「あ? 何だコイツ」

 一時的に生まれた沈黙の中、大人の方の男性が先んじて当然の反応を示し始めた。アルコールに染まった声で大声を出し続けてきた結果、喉が掠れ気味になっている。

「お互いもういい具合に成長しきっているくせに、こんな馬鹿馬鹿しく下らない迷惑を作るべきではありませんよこの野郎」

 緊張のあまり口調がブレている若者に対して、大人の男性はより一層苛立ちを募らせてしまった。

「うるせえなあ、部外者は黙ってろ」

 羽虫を払い除けるように手を振る。

 しかしキンシは引き下がらなかった。

「大体ですね、この場合においては何よりあなたが一番ダメダメだと思わないんですか?」

 パーソナルスペースをも踏み越える勢いで、キンシは男性に詰め寄る。

「誰だって見ず知らずの、それも真昼間から酔っぱらっているような奴に、可愛い可愛い妹を侮辱されたら、そりゃあ文句の一つも言いたくなりますよ。ねえ! そこの仮面君」

「へ?」

 急に話を向けられた少年は、先程までとは打って変わってぼんやりと若者のことを見つめた。

 ノリ始めたキンシは、最早自分でも制御できなくなってきた言葉の勢いに身を任せるままだった。

「やるなら全力で戦い合いましょう。全身全霊で向かってきてください、僕たちは総力を以てあなたを迎え入れますよ」

 どうして喧嘩を止めようとしていた人が、喧嘩を受け入れようとするのか。遠目で様子を観察していたトゥーイは疑問に思った。

 急激なまでに不可解さを増した現状に、男性はいよいよ顔面の赤みを増していった。

「嗚呼もう何だってんだよちくしょう、最近のガキってのはどいつもこいつも」


 その後彼が何を言ったのか、言おうと考えていたのか、子供たちが知ることはなかった。

 なぜならそれよりも先に[綿々]が、店の玄関部分が大爆発をしたからだ。

魔女ではありません。

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