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灰笛続き 12月20日 1つ 1364 ヒミツの言葉だから絶対間違えないでね

 モアはこころよく質問に答えていた。それはそれは快活な様子であった。

 まるでこれ以上に素晴らしい事実、現実などこの世界のどこにも存在していないと高々に宣言してくるような、そんな具合であった。


「もちろん! ルーフにはこれから大事な協力を乞おうとしているんだよ」


「おいおい、よりによって古城の女王と言うものが俺みたいなゴミクソ平民ヤロウに乞食行為だなんて、許されていいことなのかよ?」


 俺の反論にモアはすぐさま持論を重ね合せてきている。


「何を言うか! あたし個人の生命は全てこの世界……灰笛(はいふえ)と言う名の土地、環境や空気を守るためだけに存在しているんだ。

 たとえここでルーフ、君に裸になって四つん這いで皿に盛った熱々のオートミールを舐めろと言われたって、それらの行為がこの土地を守る結果につながるのであれば、ぜひとも恥を受け入れようとも」


 やたらと具体的に恥辱の例文を明記されてしまった。

 頭のなかで想像しようとしてしまう、映像を振りはらうように俺は煩わしいコバエを振りはらうかのように首をちいさく左右に揺らした。


「なんだったらここで再現してみようか?

 まずは四つん這いになって靴を舐めて……あとは白色の皿にオートミールをたっぷり……」


「やめろ、おぞましいモノを見せるんじゃねえっての」


 身を屈めようとするハイレグ水着的姿の金髪ポニーテール美少女へ、俺は爆発寸前の風船を抱え込むように手を伸ばそうとしていた。


「良いのう、良いのう!」抑制しようと懸命なる努力を働かせようとしている俺の横にて、ミッタが状況を悦楽する声音を発してきていた。


「オートミールならばわしの検索機能でいずこの家からかっぱらうことが出来よう。

 あるじ様、なにかしらの魔法なり魔術なりで熱加工を……」


「せんでいいっつうの! なにノリ気になってるんだよ……」


 彼女たちの愚行もそこそこに、俺は速やかに女王の要求を叶えようとした。


「えっと? 仕事を手伝ってほしいんだよな?」


 淫靡(いんび)な虚妄を振りはらおうと、俺はモアにするべき事柄についてを問いかけている。


「具体的には、俺は何をしたらいいんだ?」


「うーん、するべきことはたくさんあるんだよね」


 クリスマスプレゼントを前にどの箱からリボンを解こうか迷っているかのようなモアの様子に、俺はついつい身構えてしまう。


「なんだよ……こんな宵闇の廃墟で隠すことなんてなにも無いだろ?」


 それともまさか、四つん這いで何某(なにがし)すること以上に危険で怪しい、妖しい行為に耽ろうとしているのだろうか?


 可能性を提示されるとなると、ますます想像の根っこが意識を深く侵食していくような気がした。


「なに、武器の初期設定をしてほしいってだけの話だよ」


 しかしどうやら俺が期待……ないし危惧していた状況は訪れることは無いようだった。


「初期設定?」


 急に具体的な内容を伝えられて困惑しなかったと言えば嘘になるが、しかし内容だけならばさして難しいことでも無いようである。


「武器っていえば……」


 エミルから譲り受けた狩猟用ライフルにとてもよく類似した魔法の武器を取り出そうとした。

 それならば背中に背負っていたはず。


 と、思ったところで。


「あ、しまった……!」


 俺は自分の失態についてを今さらながらに思い出していた。


「ヤッベ、古城に置きっぱなしじゃないか?」


 手短に必要最低限詳しいことを語るとすると、暴走した怪獣(材料はこの世界のニンゲンである)と戦っていた。

 自爆魔法を使って気絶して、武器についてはそのままフェードアウトしてしまっていた。


「どうする? 今から取りに行くか……」


「えーやだー」


 なぜかモアが面倒くさがっていた。


「せっかく過去の記憶を検索したのに、早くしないとさー色々と鮮度が落ちちゃうっていうかー」


「鮮度……?」


 何の鮮度なのだろうか?

 気になったが、どうせロクでも無い話でしかないと思う中で、俺は文句をたれているモアに直接解決方法を問い合わせることにした。


「それじゃあ、どうすれば今ここで武器を取り戻すんだよ」


 モアは「やれやれ」と言った素振りで俺に提案をしてきていた。


「そこはほら、契約の力をまずは借りるということで」


 契約となると、俺はミッタの方を見やる。


「なんじゃ」ミッタもまたモアと同じような感情表現を作っていた。


「わしの検索能力を頼るということか」


 しかしなにも無いところにいきなり武器を一丁取り出すことが易々とできるものなのだろうか。

 不可能ではない、という確定的な事項だけが脳内を圧迫している。


 できなくはないのだろう。

 しかし方法が分からない。


「こういう時なら、魔法使いなら……直感とトキメキ的な何かしらに導かれて行動するだろうな……?」


 魔法使い先生ならば可能なのだろう。

 信じられる思考は、同時に俺に実行できない虚しい実感でしかなかった。


「そうだねえ」


 モアは簡単に俺の不安へ情報だけを書き加えてきていた。


「君みたいなまだ一端の作品もろくに描きあげられない、チンケなシロートじゃあできる事は限られてくる」


 ハッキリと言いやがる。


「だから、今回は特別、やり方を教えてあげるよ」

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