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灰笛続き 12月16日 2つ 1359 写真はとても参考になるんだ

「そうだ!」思いついた中でペン先の方向性が決まる。


「地図だ、これって地図に似ているんだろう?」


 問いを投げかけるような口ぶりになってしまったのは、もしかするとまだ答えに確信を得られていないことの証明でもあるかもしれない。

 しかし確証を得るよりも先に俺の手元から別の現象が発現しようとしていた。


 光が明滅したような気配がした。

 右目にかすかな痛みが走る。かつての呪いによって変容してしまった右側の眼球が魔的な存在へ敏感なる察知能力を稼働させているらしかった。


「魔力の反応……?」


 理解力が届くよりも先に目まぐるしく変化が増幅していった。


 魔法陣が波打っている。

 灰笛(はいふえ)の土地を赤ん坊のおくるみのように包む魔法陣。


 柔らかな水と光の粒で構成されている魔術が揺らめいている。

 柔軟な質感は俺を中心として変容を次々と重ね合せているらしかった。


「な……なんだ……?!」


 突然と思われた出来事に俺はとっさにその場を離れそうになる。

 しかし俺の動きをモアが後ろから羽交い絞めにして制止してきていた。


「動いちゃダメ、せっかくの術式を台無しにするつもり?」


 声音が少し硬い。

 聞き慣れない音程は俺への警告を意味しているようだった。


「一度使った魔法は最後までしっかりと使い切らなくちゃいけないんだよ」


 モアが俺に告げ知らせてきている。


「でなければ呪いが返ってくる、魂に傷がついてしまう」


「なんだかスピリチュアルな話になってきたな」


 何はともあれ抱き締められていたら自由に動くことも出来ない。

 それにこの状況も悪くはない気がした。

 なんと言っても背中に美少女が密着しているのである! 

 濃密なるディープキスに続いて「あすなろ抱き」とは、少女の乳房の感触が背中の肉や骨、皮膚にたっぷりと感じ取ることが出来る。


「あ、魔力の反応がさらに高まった」


 下半身の興奮具合はどうしようもないほどに魔力の活力と直結しているらしい。


「あ!」


 俺は閃いていた。


「興奮したドキドキを魔力に転換すれば……ちんちんのイライラも解消できるんじゃね?!」


 アイディアについての反応は彼女ら二人に相対的な反応を結び付けていた。


「たわけなのか? それともバカなのか?」


 ミッタは完全に俺の事を軽蔑しているようだった。

 ふざけきった発言としてしか受け取っていないようである。

 

「俺は本気なんだが……」


 まさかドン引きされるとは心外、じつに心外である。


「いいなあ、うらやましいなあ」


 モアが珍しく俺に純粋な羨望の眼差し、吐息や鼻息を首筋にフコフコと吹き付けてきていた。


「下半身の肉棒でそこまでの意欲を掻き立てられるなんて、あたしには一生出来ない真似だよ」


「いいだろ、うらやましいだろ」


 俺は美少女のおっぱいの感触を堪能しつつ、彼女に肉体的な制約における恩恵と精神の充足をこれでもかと主張しまくる。


「エエからはよお絵ェこさえんかい」


 俺はミッタに文句を言う。


「えー……どうせならもっとこの状況を楽しみたい……」


「言うとる場合か、このたわけが!」


 正直なところミッタの罵倒もなかなかにゾクゾクする。

 ……マゾヒストという訳では無い、どちらかと言うと彼女にあえて心配してもらうという状況に言い知れぬ快感を覚えずにはいられないのだ。


 なんたる迷惑!

 われながら実に厄介である。


「もう……なんでもええわ。それで? 絵は完成したのか?」


 モアが少しぐったりとした様子で俺の手元の具合についてを確認している。


「まかせろ、しっかり仕上げたよ」


 俺は自信満々にスケッチブックに記した魔法陣、もとい作成したイラストを彼女たちに見せる。


「どれどれ?」


 モアが期待をたっぷり込めた視線のなかで、俺を背後から抱きしめたままの格好で後ろから俺の手の中をのぞきこむ。


「んん……」


 ミッタは憂いをたっぷりにしている。

 物憂げな動作がよりセクシーでどうしようもないという俺の願望など露知らず、とにかく自分の主の魔的な行為を確認するより他はないようだった。


 俺の絵を見た彼女たち。


「って、なんじゃこりゃあああ??!」


 ミッタが叫び声をあげたのが先だった。


「あ、あなた……これ……裸婦画じゃないか!」


 のじゃロリ口調を忘れるか、あるいは意図的に捨て去っているのかもしれない。

 考察はともあれ、ミッタの言い分は見事に現実に上手く当てはまっていた。


「風景画とかではなく?! なぜ女の裸を描いておるんかおぬしは?!」


 叫び声をあげている最中で冷静さを少しでも取り戻そうとしているらしい。

 俺としてはもう少しミッタの本心を聞いていたかったが、しかし彼女にとって必要な演出であるのならば仕方なく受け入れるしかないのだろう。


「分からない」


 嘘をつく必要も無い。

 仮に必要性があったとしてもどれだけ虚構を演出できたか、考えるまでも無く失敗のイメージがすぐに浮かび上がる。


「描いていたらなんだかこんな風になっちまったんだ」


 ミッタの言う通り、俺の手元には女の裸の絵が出来上がっていた。

 正確には布一枚を身にまとった女の姿。

 写実的な絵とは異なり、幾らかのデフォルメを含んだものだった。


 ようするに、どういうことかと言うと。

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