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神様はお手洗いも必要ないそうだ

「困ったわねえ」


「そうですねえ、メイお嬢さん」


 キンシとメイは互いにうなずきあっている。


「どうしたの~?」


 悩んでいる魔法使いの少女と魔女の様子を見た、見つけた。

 エリーゼが彼女らの様子を気楽そうに、旅行先で近場の神社や寺を探すかのような気楽さで問いかけていた、


「あ、ああ」


 エリーゼは少し考えたあとで、すぐに理解力を意識のなか、こころのなかに到着させていた。


「あ~……うん、これは困ったねえー」


 エリーゼが見ている方向。

 魔法使いたちと魔女が見つめる先、そこは怪物の尻の穴であった。

 

 異世界から転生ないし転移、あるいは召喚された存在。

 ニンゲンとは比べ物にならない程の魔力を有する、存在はもはや神に等しい意味を持っている。


 何故彼らがそのように、恐ろしき人喰い怪物の尻の穴を見ているのか。

 いかにして?


「かろうじて、かろうじて……!」


 キンシはどうにかして、状況をポジティブに受け取ろうとしていた。


「石突きが……! 石突きならコンニチハしております……!」


 どういうことかと言うと、キンシの武器はかなり深々と怪物の肛門モドキに突き刺さっているのであった。


「卵管ごと破壊したんだな」


 ツナヲが感心しながら、怪物の肛門らしき部分を凝視している。


「尻の穴から、卵管に埋まる心臓を破壊した。この勢い、投てきで発生する攻撃力を著しく逸脱しているよ」


「それなー♪」


 ツナヲの分析にエリーゼが同調コメントをしている。


「その辺はやっぱり、流石! 魔法使いってカンジだよねー」


「いやあ、それほどでも」


 ツナヲは魔術師の言葉を、自分にとって後輩にあたる魔法使いたちに向けられたワードの数々を快く、明るそうに受け取っていた。


「しかし、しかしながら、これは困ったね」


 さて問題提起。


「ケツの穴に深々と刺さった槍を、どうにかして取り戻さないといけないんだけど……」


 ツナヲが見守っている先。

 オレンジピールのように落ちついた色合いの瞳が見つめる。

 そこでは。


「うんとこしょー! どっこいしょー!」


 キンシが一生懸命になりながら、怪物の偽の肛門から自分の武器を引っこ抜こうとしている真っ最中であった。


 力いっぱい引っぱっている。魔法少女は少女としての腕力を全身全霊で籠めながら、自分の道具をどうにかして取り戻そうとしていた。


「もとより排泄を必要としていないから、穴もほぼ肉の一部に同化しているんだよなあ」


 ツナヲはキンシの背中側に近寄りながら、人喰い怪物の生態、もしくはこの世界における基準のひとつについてを現実感の中に再確認していた。


「むしろ卵管がのこっていたことの方こそ、苦し紛れに鳥類としての特徴を模倣したが故の弊害であって、そのせいで心臓を貫かれたんだから、なんだか物悲しいよな」


「あの……ツナヲさん……?」


「ああ、でも、彼らは殺さないと永遠に魂は救われない、こんなクソみたいな土地に閉じ込められたままじゃ、しかるべき輪廻転生も叶わない……──」


「ツナヲさん! お喋りできるのなら、少しでもいいので……ちょっとだけでもいいので、手伝ってくださいよ……!」


 キンシの主張を耳に受け取った。

 ツナヲはしかして魔法少女の要求を聞き入れようとはしないようだった。


「いやあ、でもね、これ以上物理的な力に頼っても、ただイタズラに時間が経過するばかりだよ」


 ツナヲは冷静な判断を下していた。


「もっとこう、工夫をしなさいよ。ほら、魔力はまだ残ってるか?」


「ええ、マグガップ三杯……──」


 言いかけたところで。


「──……いえ。いいえ! 六杯はいけますよ!! まかせてください!!!」


 とても分かりやすくサバを読んでいる。


 例えの話がいまいち不明瞭なことについては言ったん無視する。

 だとしても、少女はあからさまに無理をしているようだった。


「うん、だめそうだね」


「うええ?! なんで、なにゆえ……どうしてなのですか?」


 自分の主張がサラリと否定されてしまった。

 キンシはツナヲに詰め寄るような勢いで反論を並べようとしている。


「僕は元気ですよ」


「元気とやる気だけで、魔法は作れないんだよ」


 そういいながら、ツナヲは冷静な様子のままでポケットからスマートフォンを取り出している。


「こういう時は現代文明の利器に頼っちゃえ」


 言いかけた。

 すでにいくらか言い終えてしまった。そのあとに。


「……ん? いや、この場合、この世界の場合なら、前時代の遺物って言った方が正しいのか? 現実に則している表現かな……」


 ツナヲが珍しく言葉遣いについて悩んでいる。


「まあいいか、戦争の時代に作られまくった高性能の魔術式が、こうして現に登録されているであろう魔法の武器を検索してくれるんだよ」


 どういうことなのだろうか?


 気になった。メイがツナヲの方にテクテクと寄ってきている。


「それってどういうことなのかしら?」


 説明を求めているメイに向けて、ツナヲがスマートフォンの画面を彼女にも見えやすい位置へと運んでいる。


「なに、ちょっとした仕組みの話だよ」


 ツナヲはメイにスマホの画面を見せている。

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