表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1244/1412

食事の邪魔をされた理由で破壊行為へとしけこむ

こんにちは。

 とはいうものの、何を言ったとしてもやるべきことは()るだけであった。

 空中戦としけこむ、キンシは武器を杖として使うことを急きょ決めていた。

 計画性もクソもない。一応必要最低限の作戦はあるものの、それさえ実現する事さえ怪しい。


 だが、そうだとしてもキンシはただ目の前の出来事に一生懸命に取り組むだけであった。

 万年筆とよく似たペン先を持つ、槍のように長い、キンシの身長より少し長めのペンを振りかざす。


「そうれ、くるくるくる」


 擬音と言う言葉、表現方法の一つを使う。

 言葉を使うことで、キンシは自らの内に魔法を使用する体制が整うをの感じとっている。


 魔法使いの少女の言葉を受け取った、世界が少女のもとに魔法を認識している。

 あるいは他の誰か、少女の作った文章を読んだ誰かのこころが魔法にエネルギーを注ぎ入れる。

 それはささやかな力だった。


「少ない、嗚呼少ない」


 数を重要視して幸せになる可能性は限りなく低い。

 SNSの数、学校の成績の数、友達や過去や未来の恋人の数。

 数え出したらきりがない。しかしそれでも、読まれなければただの無意味で無味無臭な現象でしかないのだ。


「しかし、貴方を殺すには充分のようです」


 せいぜい魔法を使える程度の意味しかない、だとすればキンシはそれを全力で人喰い怪物の殺害のために使うのみであった。


 殺意を受け取った。怪物の肉、体表を覆う錆びついた金属の羽毛がブワブワと膨らんでいる。

 もう一度(くちばし)を開く。

 嘴の稼働区域にある羽毛を少量毟り取り、再びそれを口の中で固めて勢い良く吐き出す。


 飛んできた砲弾。

 ひゅるるるん……。音を奏でて敵を攻撃しようとする。


 今度は避けることができる。

 のは、キンシの魔力がバイクのエンジンのようにあたたまってきたことが理由の一つとしてあげられる。

 あるいは、安心感もあったかもしれない。


 たとえ狂暴な砲弾が襲いかかってきたとしても、メイの魔法の弓矢が弾を見事に破壊してくれる。


 キンシはそう期待しながら、思うがままに空を飛んで自力で砲弾を避けていた。


 魔法少女は攻撃を回避した、成功した。

 さて、狙いを失った砲弾がどうなったかと言うと。


「……」


 メイの沈黙のもと、彼女の右側三メートルほど離れた辺り、ビルの窓ガラスを粉々に破壊していた。


 バリバリバリ、バリバリ、バリバリバリ、バリリンンンン!!!!


 無残に破壊されるビルの窓。

 魔術的なバリアは意味もなく怪物の魔力の質量に負ける。

 透明な破片は地面に落ちることもなく、まるで雪の結晶のように空間を漂っている。

 それはこの灰笛(はいふえ)にあるビル群が、いわゆる「普通」のビルとすでに大きく性質を異ならせていることの証。

 

 ……と、この世界の建築事情について詳しく語る場合ではないようだ。


「んるえええ?!」


 破壊の場面をただ見ることしか出来なかった。

 それはキンシにしてみれば仕方のないことだった。

 てっきりメイが守ってくれるものかと、そう期待していたのだ。


「め、メメ……メイお嬢さん?!」


 期待が外れた失望よりも先に、キンシは状況の意味不明さにただひたすら打ちのめされていた。


「何をなさっているのです?!! 矢を撃たないのですか?」


 キンシは綿埃のようにフラフラと漂いながら、オヨヨと頼りなさげに破壊されてしまった窓ガラスに近づいている。


 当たり前のように世界の重力を忘れたままで、キンシはビルの側面に直立している。

 なにも無く超常現象として壁に立ってる訳では無く、もちろんスパイダーな能力を使って壁に張り付いてはいない、決して。


 キンシは足元に粉々になった破片を認めつつ、破壊を防げなかった公開にひたすら打ちのめされている。


「悲しむひつようはないと思うのよーキンシちゃーん」


 少し離れたところにいるキンシに向けて、メイが励ましの言葉を送っている。


「ガラスの一枚や二枚、なにもそんなに気にすることは無いと思うのー。どうせ、この灰笛(はいふえ)ならすぐに治る……──」


「結末のあとのエピローグでは無く、原因についての説明を求めます!」


 国会議事堂などで交わされていそうな反論を使っているのは、意外にもキンシの喉もとであった。


「どうしてあなたは、弾を破壊する方法を知っているというのに、それを実行しなかったのです。僕はその理由を求めます!」


 キンシの気迫に気圧されることなく、しかしメイは本心から為る熱を帯びた主張をしっかりと言葉にしている。


「だってキンシちゃん、あなたは自分で避けられるし、それにさっきの弾はトゥーイにも当らなかった。なのにどうして、わざわざ矢を使う必要性があるのかしら?」


 羽根だって決して無限ではないし、あくまでも有限でしかないと、メイはそう主張したがっていた。


「それはそうでけれど……」


 白色の魔女の意見に、キンシは一部分でもそれなりに納得してしまっている。

 その時点で勝負はもう決まりきっているようなものだった。

 何と戦っているのか、その当たりさえも不明瞭でしかないのだが。


「ですが! 弓で破壊しなければ町がボロボロに……──」


 キンシが主張している隣で、すでに次の破壊行為が行われようとしていた。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ