机の上にステキな魔法陣
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渦巻の内部にて、赤にオレンジが混ざった緋色の光が満たされていく。
ゴウンゴウンゴウン……。と、何かが唸り声をあげているような音が小さく響く。
「電子レンジがわりの魔法ね」
メイがトゥーイの作った魔法について、理解をすみやかに至らせていた。
「なんてベンリなのかしら、まいにちのお料理も、これを使えば燃料代をせつやくできるんじゃないかしら?」
温められていくパックのご飯をながめつつ、メイはトゥーイに提案をしている。
「すくなくとも、燃料の使いすぎで明かりがとつぜんプツーンと飛ぶことは無くなるとおもうのだけれど」
メイが自分なりに魅力的な提案をしている。
しかしながらトゥーイの方は、白色の羽毛を持つ魔女のアイディアを素直に受け入れられないでいた。
「…………」
あえてゆったりとした動作にて頭を振っている。
緩やかな拒否を主張している。
「トゥーイさんの意見も仕方なし、なのですよメイお嬢さん」
青年の意見をキンシが慣れた様子で補足していた。
「普通のひとだと、本来ならば一個の魔法陣を自作するだけでもかなりの魔力を消費するのですよ」
キンシは白色の魔女に向けて説明をしながら、頭の中にて実体験を自らの内に再確認している。
「僕なんかは、簡単な円陣を描くだけで体中の水分が枯れ枯れに干からびてしまいますよ」
「そ、そんなに大変なの?」
絵が描けない魔法使いの少女が真剣に語っている。
それにメイがおびえのようなものを抱きそうになっている。
白色の魔女が胸元のやわらかな羽毛をブワワ……とふくらませている。
そんな彼女にオーギがフォローを入れている。
「いやいや、キー坊のはちいとばかし言い過ぎなところがあるぜ?」
オーギは事務所の後輩であるトゥーイが作成した、魔法の簡易レンジを指先でコツコツとつついている。
「よっぽどの下手くそでもなけりゃ、まあ……二個ぐらい魔法陣を併用しても体調には問題ねェはずだから」
後輩魔法使いの過剰表現を訂正しつつ、しかして、オーギは少女の言葉の全てを否定しようともしなかった。
「ンでも、確かに熱源を二種類併用はなかなかできる事じゃねえけどもな」
「なんだ」
オーギの言葉にメイがホッと胸をなでおろしている。
「ちゃんと、トゥはすごい魔法の技術をもっているのね。それが分かったなら、私も心地よくお料理ができそうだわ」
メイの安心の内容を知った。
「……なあ、メイ坊よ」
オーギが前々から抱いていたであろう、違和感の一つを何気なく質問文にしようとしていた。
「時々……いや、それとはなしに多めに思うんだが、お前さんってトイ坊のことを……──」
言いかけたところで、オーギの鼻腔を二つ抉る指の姿があった。
「ふぐッッッ?!!」
オーギに強力な鼻フックを食らわせているのは、トゥーイの人差し指と中指の二本であった。
「トゥーイさん?!」
突然の暴力的行為にキンシが悲鳴と非難を同時に爆発させている。
「なにをしているのですか!! なんて酷いことを!!」
恋人である魔法少女に非難をされた。
しかして、トゥーイは愛しの少女に責められるよりも、それよりも秘密にしないといけない事項を優先していた。
「あらあら、たいへんね」
暴力の現場を目の前に、メイは他所ごとのように自分の作業を優先させようとしていた。
「なかよしもいいけれど、ちゃんとお手伝いもしてよね」
メイがトゥーイに要求をしている。
「…………」
トゥーイの方は特に悪びれる訳でも無く首をコクリと縦に振る。
ただ白色の魔女の言うことを聞いている。
そんな青年に、オーギは涙目のなかで信じ難いものを見るかのような視線を差し向けていた。
「痛ッてぇー……」
「だ、だだ……大丈夫ですか? オーギ先輩……」
キンシがおろおろとオーギの様子をうかがっている。
「大丈夫なワケあるかいコンチクショー」
トゥーイ本人がすでに聞く耳を持っていない。
オーギはその事実に早々に諦めを着けていた。
「まあ、しゃあねえか……オレも不躾に他人のプライベートゾーンに踏み入ったわけだし……」
「いやいや、いや、だめですよオーギ先輩」
すかさずキンシが反論をしている。
「諦めてはだめです! 暴力には然るべき罰を与えないと」
まるで何かしらの聖書のような信念を主張している。
だがオーギの方は、すでに自分の意向を固めているようであった。
「いやあ、だってよ? これから飯作ってくれる奴の反感なんざ、毒を飲む勢いでもなけりゃ出来っこねえって」
「そんなこと言って……」
キンシがオーギを睨むように強く見ている。
魔法少女の視線の強さを身に浴びながら、しかしながらオーギは自らの安全を最優先していた。
「どっちみち、だ。オレがアイツに刃向ったところで、ボッコボコに反撃されるのがオチだっつうの」
これ以上は厄介事を増やさないスタンスを決めている。
先輩と後輩が納得と不満を重ね合せている。
そうしているあいだに、まな板の上では食材が切り刻まれようとしていた。
「まずはネギね」
メイが包丁を右手にかまえている。




