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あとで美味しくいただくとしよう

こんにちは。ご覧になってくださり、ありがとうございます!

「うええええ?!」


 予想外の落第点にキンシが愕然としている。


「な、何でなんですか?! オーギさん!」


「オーギ「先輩」だ、このたわけ」


 ひどく憤慨しているキンシに、オーギは冷徹なるチョップを彼女の脳天に押し込んでいる。


「何でもかんでも、何も()ェよ。こんな小っせえ「水」で、いったいどうしろってんだよ」


 オーギは自然な動作にて、後輩であるキンシの左手からゴム鞠サイズの魔力の塊を奪取している。


 魔力の塊、魔法使いたちのあいだで「水」と呼称される減少。

 まるで本物の水のように透き通る、魔力の価値をオーギは目測で簡単に判断している。


「あー……まあ、あれだ、ちゃんとクライアントの要望を伝えなかったオレにも責はあるんだろうな」


 オーギはため息交じりに事情を説明する。


「せめてこの繭……転移用魔術式を頭からケツまですっぽり覆えるくらいの檻が欲しかったんだけどな」


 先輩である彼からの要求に、キンシは目を剥いて反論をしている。


「そ、そそ、そんな大きな魔法、僕にはとてもじゃないですが無理のムリムリですって」


 キンシが自信ありげに宣言のようなものをしている。


 後輩である魔法少女の、ネガティブ方向の自信満々さにオーギが憂いの気配をさらに濃いものにしている。


「さて、どうしたものか」


 オーギが次の展開をどうするべきか、頭を悩ませている。


 先輩である若き魔法使いが困窮(こんきゅう)していると、そこへトゥーイがキンシの作った「水」の檻に手をかざしていた。


「…………」


 トゥーイは唇をジッと閉じたままで、鼻孔で呼吸をしつつ魔力を活動させている。


 アメジスト色に透き通る魔力の気配が集合し、瞬く間にオーギの手の中にあった魔法の塊がその姿を増幅させていった。


「おおっと」


 大きくなり重くなる「水」の檻を、オーギは器用に手の平から虚空の中へと移動させている。


「おおおー」キンシがトゥーイに賞賛の感情を贈っている。


「さすがトゥーイさん、あっというまに大きな檻が出来上がりましたよ」


 キンシはパチパチと拍手をしている。


「感動しとる場合かよ」魔法少女の明るい表情にオーギは憂いを抱いている。


「お前はな、もう少し魔法使いとしての向上心ってモンをだな」


「オーギセンパイ、お叱りもいいけれど」オーギの言葉をさえぎってメイが提案をしている。


「魔法をつかいたいなら、はやくしないと、いろいろとダメになっちゃうわよ?」


 メイが勧めているとおり、作り上げられた「水」の檻はあまり長くは持続しなさそうであった。


「ちがうひとの魔力をムリヤリかためたから、なんだかすごく、不安定そう」


 メイは白色の羽毛を不安のなかでブワワ……! と膨らませている。


「はよ使わんといかんな」メイからの指摘に合わせて、オーギが魔法の続きを作ろうとしている。


「この有りあわせの魔法に、オレの素敵な素敵な香水を一滴垂らす」


「ふむふむ?」メイが相づちのようなものを打っている。


 幼い見た目の魔女が見上げている。

 視線の先にて、オーギはどこからともなく……ではなく、まぎれもなく魔法の薬箱から取り出したもの。


 スポイトのようなものに注入されている。

 青色の気配が強い青紫色の液体が、キンシとトゥーイの作った魔法の塊に一滴、垂らされていた。


 透明な「水」のような要素が、たった一滴の香水の色に影響を受け、その全体をタンザナイトのような色に染め上げている。


「そして!」


「そして?」メイはオーギの動作をゆったりと追いかけている。


「これを! こう!」


 オーギが全力、全身全霊、パワー全開の一投にて魔力の塊を繭のような形状の転移魔術式に投げつけていた。


 タンザナイトの塊のようなもの、「水」のように柔らかい魔力の塊が転移魔術式を飲み込む。


 あるいは、繭のような転移魔術式の方こそが、魔法使いの手によってこしらえられた「水」の塊をその身に受けた、とも言えるのだろう。


 いずれにせよ、人喰い怪物を殺すための要素を含んだ魔力が、転移魔術式に巣食う黒カビのような怪物の一種を殺害していく。

 その事実は変わり様が無かった。


「   

  ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?

  ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

  ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!


 怪物の悲鳴がスーパーマーケット内にいる人間たちの鼓膜を震動させる。


 ある人は驚き、別の他人は怯え、関係のないはずの一般市民が一時に人喰い怪物の末路について考えている。


「まあ、すごい」


 メイが思わず感心をして、パチ……パチ……と、小さく拍手をしている。


「だいたんな殺しかたね」


 幼女のような見た目の魔女が殺害の現場に感動をしている。

 

 オーギは魔女の評価にあまり喜びを抱いていないようであった。


「これだと、後に獲物を回収することができへんのが、悩ましいところなんやけどなあ」


 ただ殺すことに、オーギははななだしく不満を抱いているようであった。

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