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好きなマンガや小説のアニメ化のpvで興奮しよう

こんにちは。ご覧になってくださり、ありがとうございます!

 シイニがメイに問いかけている。


「しかして、なんだってタコ丸々一匹なんて欲しがったんだい?」


 子供用自転車の姿に封印されている、人喰い怪物の一種である彼に問いかけられた。


 メイは彼の質問に答えている。


「それはもちろん、タコをつかったお料理を作りたかったからよ」


 なにも特別なことなど無い。

 単純で分かりやすい理由だけを、メイは他人であるシイニに向けて伝えている。


「でも、買えたのはパックにつめられた切り身だけね」


 メイはそう言いながら、視線を自分の手元の辺りへと落としこんでいる。

 肉のすくない、うすい腹のあたりに手を添えている。

 メイの両手の上には、先ほど購入したばかりの商品……。

 パックに詰められたタコの切り身が、ひんやりと保存されている。


「へ……へ……っ」オーギが魔法の薬箱の上で体を屈折させている。


「ぶえっっっくしょいッ!!!」


「んにょあああ?!」


 先輩である魔法使いが盛大にくしゃみをしている.

 それにキンシがびっくりしてしまっている。


「ちょっとオーギさ……! じゃなくて、オーギ先輩! いきなり大きな音たてないでくださいよ!」


 キンシが非難めいた視線をオーギに向けている。


「仕方ねェだろ」後輩である魔法使いに、オーギが気だるげに言い開きをしている。


「スーパーの肉コーナーの冷房が寒くてよお、鼻水が出てくるんだっての」


 オーギはそう言いながら、地面から十センチほど浮遊している魔法の薬箱の上で鼻をすすっている。


 先輩魔法使いの鼻水の音を聞きながら、メイがすこしばかり呆れるような視線で彼の事を見上げていた。


「そんな、オジサンみたいなこといっちゃって」


 メイはそう言いながら、購入したばかりのタコの切り身が詰められたパックを手持ちぶさたにしている。

 

 理想を語るのならば、メイも周辺の人々のように何かしらの収納グッズに購入した商品を仕舞いこみたかった。


 しかしメイの手元には鞄の一つさえなかった。

 なんといってもいきなり出かける用事が出来てしまった、そのために準備らしい準備もすることができなかったのである。


「こまったわね」


 メイは図書館で起きた出来事、主にトゥーイに下着を見られまくったことを簡単に思い返している。


「お困りならば!」キンシがメイにすかさず提案をしてきている。


「こちらの鞄をお使いなさいませ」


 キンシは白色の羽毛を生やした魔女によく見えるよう、左手をサッと空間の中にかざしている。


 ……ざわざわ!

 ……どよどよ!


 周辺の人々に少しのどよめきが生まれ、さざ波のように広がっていく。


 彼らが驚いているのはキンシの左手に刻まれているもの。

 「呪い」と呼ばれる魔力の暴走、過多によって焼かれた肉体。

 火傷痕はいま、黒水晶(モリオン)のように黒々としている。


 魔法使いが()()使()()と呼ばれる存在である要因。

 ある種、自分がどの様な人間であるか、どのくらいの危険性を持った人間であるかの指標となり得るもの。


 呪いの火傷痕がかすかに光を放つ。

 緑色に透き通る、光は魔法使いの少女が魔法を使った証でもあった。


 簡単な転移魔法を使った。

 キンシの手元には、一個のショルダーバッグが現れていた。


 茶色をした革製のバッグは底が深く横幅は広く、堅表紙(ハードカバー)の本ならば六冊以上は詰め込められそうである。


「どーぞっ!」


 キンシがメイに向けてまっすぐ鞄を手渡している。

 その様子からは、周囲の人々の好奇の目に対する萎縮はほとんど感じられそうになかった。


「あ、ありがとう、キンシちゃん」


 注目を浴びていることを自覚しているメイは、気まずさを誤魔化しきれないままで、あいまいな笑顔だけをキンシに向けている。


 鞄を受け取ったメイが、その内部に購入した商品を仕舞いこんでいる。


「ところで」


 白色の魔女の動作をジッと見ていた。

 キンシがなにげない様子で魔女に問いかけている。


「どうして、タコ丸々一匹なんて欲しがったんです?」


 シイニと同じような質問をしている。


 だがメイは、子供用自転車の姿に封印された彼の時とは異なり、素直な心持ちで質問文に答えることができていた。 


「それはもちろん、キンシちゃんに……──」


 だが白色の魔女が、子猫のような魔法少女に目的を教えようとした。

 それよりも前に。


「きゃーあああああああああ ああああ あああああ ああああああーーーッッッ??!!」


 突然として、とてつもない悲鳴がスーパーマーケットの内部に響き渡っていた。


「んぬにゃっ?!」


 悲鳴にキンシが驚いている。


「んな、なななっ?! なんですかっ?!」


 キンシは頭の毛髪をブワワ! と膨らませている。

 

 後輩魔法使いが喫驚している。

 そのあいだにオーギは魔法の薬箱を、悲鳴の元へと真っ直ぐ推進させようとしていた。


「なんでもいい、厄介事が起きたなら、駆けつけるのが魔法使いの矜持(きょうじ)ってもんよ!」


 そう言いながら、オーギは店のなかを空飛ぶ魔法の薬箱に乗っかって、悲鳴を頼りに問題が起きたであろう場所へと向かっている。


「あ! 待ってくださいよー!」


 先輩魔法使いの後を追いかけるために、キンシも大きく身を動かそうとしていた。

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