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かの日常は常に異常であった

こんにちは。ご覧になってくださり、ありがとうございます。

 メイのへその中にトゥーイの左指が沈んでいく。

 柔らかな肉をかき分けて、青年の指先が幼女の肉体の少し内側に侵入してきていた。


「やめて、トゥ」


 メイは直立不動のままで、ただ唇だけを静かに動かしていた。


「くすぐったいわ」


 拒絶の意、否定的な意見を口にしている。

 しかしながら、メイは直接的にトゥーイの行動を否定しようとはしなかった。


 ワンピースを無遠慮にめくられ、下半身をあらわにされている。

 だというのに、どうしてなのだろうか?

 メイは不思議と、トゥーイに対する拒絶の意味を上手く作成することができないでいた。


「…………」


 トゥーイは沈黙のままで、メイのへその内側で左の人差し指をクニクニと動かしている。


 柔らかい、瑞々しい、肉の感触がメイの内側を刺激する。


「う……」


 内側をまさぐられている。

 メイは抵抗をしないままに、ただ感じたままの感触を言葉にしようとしていた。


「そこ、押されると、おしっこしたくなっちゃう」


 ただ感想だけを伝えている。

 メイは、どうしてか青年の指を拒絶することができないでいた。

 

 いや、むしろ拒否する理由さえも見つけられないでいる。


 どうしてだろう。

 あからさまにこの状況は異常だというのに、メイはトゥーイに嫌悪感を抱けないでいる。


 嫌がる理由すらも存在していない。

 むしろ、嗚呼、どうしてなのだろう? メイはトゥーイにたいして愛しさのようなものを覚え始めていた。


「いや、やめて、やめなさい、ぐりぐりしちゃだめ」


 まるで幼子のいたずらを優しくいさめるようにしている。

 激しく怒ることができない、メイはその原因をさぐろうとしている。


「…………」


 その間に、トゥーイはメイの下半身を見つめ続けている。


 ワンピースの他にはパンティーを一枚だけ身に着けている。

 パンティーは白色で、股の分かれ目がギリギリ隠れるほどに浅いラインを描いている。

 レースがふんだんに縫われている。

 生地はストッキングのように薄く、内側の皮膚をうっすらと透かしている。


 衣服としてどうなのだろうか?

 メイの下着の機能性について、トゥーイは常々思っていた。


 トゥーイから見て左側、パンティーのラインに意味をほとんど感じさせないリボンが縫い付けられている。


 それを見ていた。


「似合っていない、って思っているのかしら?」


 トゥーイの視線から、メイはいったんへそを弄くる手への注意を止めている。


「そうね、あなたはお洗濯もしているから、あたしの下着なんて見なれているはずよね」


 メイはそう言いながら、トゥーイの言わんとしている内容を先取りしようとしている。


「でも、こうしてジッサイに着けているところをみると、印象も変わる……──」


 言いかけたところで、メイは本来いうべき内容をすぐに思い出している。


「──……うん、そうね、そうよね。いまはこんなことをいっている場合じゃないわ」


 メイはまぶたをすっ……と細めている。


「トゥ、あなた、いったいいつまで私のおへそとパンティーを好き放題するつもりなのかしら?」


 メイは精一杯睨みを効かせようとしていた。

 その実、魔女の視線の効果は、今回は無事に成功したといえた。


 紅色の瞳が、まるで肉食獣に喰いちぎられた獣の肉片のように、ギラギラとした生命力を放っている。


「…………」


 魔女の睨みを身に受けた。

 トゥーイはおふざけの終わりを悟っていた。


 本来の目的を再確認するように、トゥーイは左の指をメイのへそから外している。


 そのまま腹を撫でて、トゥーイはメイの腰のあたりに触れていた。


 骨が浮かび上がりそうな、ほっそりとした腰のあたりに指を這わせる。

  

「トゥ?」


 青年の行動から、メイはできるだけ早く、多くの情報を集める必要性に駆られていた。


「腰のあたり……そこなら、魔力をつかって翼を……」


 言いかけたところで、メイはハッと思いをいたらせている。


「もしかして、私に、上へと、飛んでほしいの?」


 メイが解答をしている。


「…………!」


 トゥーイがコクン、と首を縦に振っている。


「飛んで、どうするのよ?」


 メイが疑問に思っている。

 だがトゥーイの方は、それ以上深くものを語ろうとはしなかった。


 いや、元よりこの青年はこの世界における正しい文法を有してなどいなかった。


「翼がほしいのね。うん、分かったわよ」


 メイはまるで幼子の要求に折れる母親のように、トゥーイの言うことを聞き入れていた。


「すぅ、はぁ」


 息を吸って、吐いて。

 呼吸を一回、循環させる。


 トゥーイの手元に熱が生まれ、光が灯る。


 水晶のように透き通ったきらめきが、またたく間に骨格を形成させていた。


 水のように滑らかな、魔力の流れがトゥーイの左指を通過していく。


「……」


 メイは少し身を屈める。

 そうすることで、空間のなかに翼を大きく展開させようとしていた。


 太陽の光が燦々(さんさん)と降り注ぐ雪原、それにとてもよく類似した色彩を持つ翼がメイの腰のあたりから、背中側に発現していた。


「とぶわよ」

 

 メイは翼を大きく広げて、トゥーイの体と共に図書館の天井めがけて飛びあがった。

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