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どうしようもなくわがままになりたい

こんにちは。ご覧になってくださり、ありがとうございます。

 メイはレシピの内容を確かめている。


「ふむふむ? なるほど、なるほど」


 幼い見た目の魔女は、トゥーイの手元にあるレシピ本……。

 もとい、学校給食についての調査報告書を読み込もうとしている。


「うーん? 写真をみたかんじだと、味をつけたごはんにタコをきざんで、まぜまぜしたものみたいね」


 写真のみの情報(データ)から、メイはおおよそ正解と言えるであろう予測を順序よく立てている。


「味つけごはんをいまから用意するとして、タコは? どこから仕入れればいいのかしら?」


 テクテクと、メイとトゥーイは地下に広がる秘密の図書館のなかを歩いている。

 歩く、といっても、幼女のような魔女と、魔女と同じ髪の色を持つ青年魔法使いの足元には、確固たる足場というものがまるで存在していなかった。


 そこにあるのは透明な足場。

 不純物がほとんど含まれていない氷のような、透明な仮初(かりそめ)の床だけが広がっている。


 灰笛(はいふえ)という名前の土地から望める、果ての見えない海原。

 海岸線の側面。

 小さく開けられた、今はもうほとんど使用されていない排水管の奥。


 そこに魔法使いの、()()()()()()()という名前を持つ魔法使いの、秘密の図書館が隠されているのであった。


 蜂の巣のような形状に整えられた本棚の群れ群れ。

 上も下も、右も左も果てしなく、ところ狭しと本棚が詰め込まれている。


 まるでウイスキーの貯蔵庫のようである。

 と、いった感想はメイの個人的見解のよるものであった。


「うんん……」


 しかしメイはこの表現方法を、まだ他の誰かに伝えたことはない。

 特に大した理由はない。

 ただ、自分のこの小さな、あまりにも小さな肉体に、大人にだけ許された嗜好品に類する表現方法は相応しくないような気がしてならないのだ。


「とりあえず、まずはタコを用意しなくちゃいけないわね」

 

 秘密を抱えたままで、メイはもっか果たすべき材料調達についてを考える。


「どうしましょう? いまからお買いものにいこうかしら?」


「…………」

 

 メイから提案をされた。

 トゥーイは少しだけ考える。


 三秒ほど経過。

 その後に。


「…………」


 トゥーイはコクリ、と首を縦に振っていた。


 魔法使いの青年の同意を受け取った。


 メイはさっそく行動を起こそうとした。


「ああ、でも」


 だが、そのところで、メイは図書館の途中にて足をとめている。

 幼い見た目の、白色の羽毛を生やした魔女の動きにあわせて、彼女の身に着けている白色の清潔なワンピースのすそがふんわり、と揺らめいている。


「ここから、この図書館のお外まで歩いていくのは、時間がかかりそうだし、なにより、めんどうね」


 メイは視線をくるりと、図書館の内部にめぐらせている。


 白色の柔らかい羽毛生やした魔女の、(あか)い瞳が見つめている。


 蜂の巣がどこまでも広がる、書架は八角形の(へん)それぞれに本をぎっしりと溜めこんでいる。

 書架のそれぞれには「水」と呼ばれる、魔力の在り方のひとつがたっぷりと満たされている。


 本を守るための魔術式が、この図書館にとっての存在意義の大きな一因となっているのである。


 とにかく広い。

 それこそ灰笛(はいふえ)に潮風を届かせる、海の水平線のように果てが見えなかった。


「それにしても、ここにはいったいどれだけの本があるのかしら?」


 図書館の内部を見ながら、メイは足元のおぼつかなさに不安感を覚えている。


 もしもこの足場が失われてしまったとしたら?

 どうすればいいのだろうか。


「私なんかは、まだこの図書館の使いかたをぜんぜん分かっていないのよ」


 考えたところで、メイの左肩にそっと触れる手があった。


「…………」


 振り返れば、そこにはメイの左肩に触れるトゥーイの腕が存在していた。


 唇をジッと閉じたままで、トゥーイはメイの瞳を見つめている。


 瞳を凝視されている。

 メイはトゥーイの、紫水晶(アメジスト)のような虹彩を見返している。


「なにかしら、なにを言いたいのかしら?」


 メイが疑問に思っている。


 と、その所でトゥーイはいきなりメイのワンピースのすそを掴み、布を上にめくっていた。


 あらわにされたメイの下半身。


 ワンピースの下にはパンティーしか身に着けていない。

 比較的温暖で湿度の高い灰笛(はいふえ)で暮らすには、そのぐらいの薄着でも問題はなんらない。


 ……と、メイは気候について考えることによって、トゥーイの奇行の衝撃を和らげようとしていた。


「なにを、しているのかしら?」


 メイはトゥーイに問いかけている。


 質問をされた。

 

「…………」


 トゥーイは、相も変わらず沈黙だけを唇に許していた。


 紫水晶の瞳が、メイのワンピースの下にある下半身、パンティーの姿をしっかりと視認している。


 メイの真珠のように艶やかな肌。

 余分な肉がほとんど感じられないのは、いくらか栄養素が足りていないような気がする。


 必要最低限に膨らんでいる、腹部には胎生の生命体である証のへそがひとつ、小さくかすかな暗闇を白色の肌の上に描き出していた。


 トゥーイはワンピースのすそを右手でめくり上げたままで、左の指をス……と、メイのへその中身へと沈み込ませていた。

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