つながった想い
そこには
「卒業する年の3月
君を待つ。」と書かれていた。
「これって、洋祐が書いたの?いつ?」
驚いて洋祐をみる。
「あの日、夏々が俺の前から居なくなって、すぐここを引き払ったんだ。
その時に書いてドアに挟んだ…」そう言うと上着のポケットからタバコを取り出し火をつける。
薄明かりのなかでぼわっと見えた洋祐の顔はとても色っぽく見えた。
そして懐かしい煙の匂いがした。
「そうだったんだ。仕事忙しそうだったもんね。洋祐の曲。よく流れてた。
でもなんで手紙なんて書いたの?
それに… 」私がしゃべろうとすると洋祐が
急にうわぁ~と言って頭を掻いた。
「夏々。質問禁止なっ❗」そう言うと。床でタバコを消すと、体ごと私の方を向きもう一度私を抱き締めた。
懐かしい洋祐の匂いがした。
抱き締めたまま洋祐がしゃべり始めた。
「最後の夜さ、俺の話し最後まで聞かなかったの覚えてる?」
一日たりとも忘れる訳がない。
また嫌な予感がして少し体を離そうとすると抱き締める力を強めた。
「今度は最後まで聞いて欲しい。」
私はコクりとうなづいた。
「俺は夏々を子供扱いした事は1度もない
バカだと思った事もない。
ただ特別扱いはしてる。って言ったの覚えて
る?」
ドキドキしながら頷く。
「あの日、夏々が俺の事好きって言ってくれて嬉しかったよ。
本当は俺も同じ気持ちだった。」
洋祐の心臓の音か私の音か分からないくらいバクバク聞こえる。衝撃の告白だ。
「男女の関係になるのは簡単だけど、夏々は特別なんだ。
もし、その一線を越えると夏々が壊れそうで怖かった。」抱き締める腕に力が入る。
「俺は結婚してたし、芸能の仕事をしている以上何かあれば叩か
れるのは夏々お前だ。
どうしてもそれだけは避けたかったんだ。」そう言って私を見つめた。
涙がこぼれた。なんで最後まで聞かなかったんだろう。そんな風に私の事を思ってくれてたなんて、思いもつかなかった。
私は泣きながら何度もごめんなさい。と謝った。
私の涙を親指でそっと拭いとると私の頬にそっとキスをした。
そして、そのまま、私達は出会って3年で初めてのキスを交わした。